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悦楽の中で
「ほら、後ろからだと気持ちいいでしょ?」
ぱちゅん、ぱちゅん、と普段では聞き馴染みのない水音が響く。
私は今、後背位で犯されている。しかも、まったくの初対面の人に。
というのも、私にはお金がなく。だからといって、普通の仕事が出来るような立派な人間でもない。
今まで何度も真っ当に生きようと頑張ってきたけど、無理だった。
フルタイムで疲労だけを蓄積して労働なんて、向いてなかったんだ。
だから、こういう身体を使う仕事を選んだ。
こっちなら、相手に触れたり舐めたりを我慢すれば、あとは向こうから互いに気持ちいいことを望んでくる。
そうすれば、もうこちらは身を任せればいいだけの話だから。
道徳的には否定されるのかもしれないけど、誰もが真っ当に生きられるなんて、ただの綺麗事だ。
どこかで汚れなければ、私は生活なんてできない。
「ほら。次は、おっぱい鷲掴みにしてあげるからね」
ぐいっとHカップの私の胸が下から力任せに揉まれ、掴まれる。
こんなに乱雑なのに、身体はしっかりと感じている。
「……っあぁ」
高めの声で漏れるように喘いでみれば、男は嬉しそうな表情を浮かべる。
可愛いね、とキスをしては、首筋に向かって這うように吸い付かれる。
正直、気分は良くない。けど、これも生活費を稼ぐため。そう思えばこの程度、どうってこともない。
私は恋人という恋人はいたことがない。だから、好きという感情がわからない。
身体だけの快楽を求めるだけなら、今の仕事でも十分に得られる。心なんて二の次、三の次だ。
男は何の反応も示さなくなっていた私が不満だったのか、奥まで何度も突いてきた。
さすがの私もこれには、
「はあっ、あっ、あぁんっ」
喘がずにはいられなかった。
その嬌声が気に入ったのか、男は秘部から男根を抜くと、私の脚をM字にさせては漁るかのように秘部を舐め回しはじめた。
「ひぁっ、だ、だめ……きもちぃ、よ……」
中でイくのも嫌いじゃないが、外でイくのも好きだ。
秘部の蕾に触れられれば、感度が異常に増して一気に異性による快楽が欲しくなる。
「そろそろ……中に、欲しいな……?」
そう上目遣いで言ってみれば、相手も待ってましたと言わんばかりに嬉々とした表情を浮かべた。
「君は寡黙だけど、すっごくえっちだよねぇ」
男はうまく解釈してくれたらしい。私はただセックスしながら考え事をするのが癖なだけなんだけど。
男は騎乗位がいい、と提案してきたので私はそれに乗じる。そそり立つ男根を握って、自分の中に少しずつ挿れていく。
「っう、ぅん……」
触れると、膣壁がきゅうきゅうと締めつける感覚がする。そのたびに眼前の男は嬉しそうな声をあげている。
「はぁ……君って、本当にえっちだよぉ」
白い鼻息が見えそうなくらいに呼吸は荒く、興奮している様子の男。
こちらはそれに対してはえらく思考は冷ややかだなと感じる。
身体ではもちろん感じているワケだから、お腹あたりはきゅんきゅんと疼いている。
欲しい、けど……。ここで求めすぎると、相手が逆に引いてしまうかもしれないと、勘繰ってしまう。
なので、喘ぎ声も最低限に留める。
「ふぁ、……あぁ、お兄さんの、すごく奥まで入ってきてるよぉ」
なんて、言葉にしてみれば男はさらに男根を大きくした。
「じゃあ、このままフィニッシュしちゃおう?」
言うと、男の男根がさらに奥へと入ってくる。
あぁ、この瞬間がたまらなく好き。本気を出した男が奥まで突いてくる、この感覚。
生活維持が第一な私だけど、この騎乗位で下から突かれる感覚には負けてしまう。
もっと、もっと身体を揺らして。もっと、もっと突いてほしい。
さらに腰なんか掴まれてしまうと、感度が増してしまう。
気持ちよすぎて、視界が真っ白になりそうで。思わず、天を仰いだ。
これこそが人間の本能で、抗えないものなんだと痛感してしまうのだった。
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