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純愛

夢で見たいかがわしい王子様

 

顔は暗くて見えないが、黒い肌で筋肉質な肉体の男性と体を重ねている夢を見た。
繋がっている部分は痛さを感じず、押し寄せる快楽が妙にリアルで。
目を覚ました時にはぐっしょりとパンツが濡れていた。

――まだ、家を出るまでに一時間はある。

時計を確認し、自分の下半部をパンツ越しから触れる。粘り気があり、触れるとどんどん湿っていくのが分かった。
ついに耐えきれなくなり、パンツをずらし足を広げた。
夢で得た快感を思い出しながら、愛液をいっぱいつけた指を、クリトリスという名の陰核にこすりつける。

「ーーあっ、あっ、ああっ!」

敏感なところをこねくり回し、数分たらずで頭が真っ白になり、腰と足がガクガクと痙攣してぐったりと寝そべった。
学生の頃から親に隠れて自慰行為を夜な夜な繰り返し、社会人になって人の目を気にしなくていい今は、夜でも朝でもやりたい放題だ。
ーーけれど、まだ他人と体を重ねたことはない。
私にはもう春は来ないんだと、ずっとそう思っていた。
けれど私の転機は突如、入社して三年目で突然訪れた。

「席が隣になってからよく話すじゃん」

明日使う会議の企画書を残ってまとめていると、私、北条唯(ほうじょうゆい)の元に、先に上がったはずの隼田くんがコンビニの袋を片手に戻ってきた。
突然のことでポカンと固まる私を見て、コンビニの袋からオレンジジュースの紙パックのジュースを取り出し差し出してきた。

「あ……ありがとう」

このオフィス内はごくたまに気分転換にという理由で席替えがある。
その、ごくたまにの席替えで今回、隼田祥吾(はやたしょうご)くんの隣の席へなったところだ。
隣になってからというもの、以前より話すようにはなったと思う。だが、それはもっぱら仕事の話で、プライベートの話など全然したことがなかった。
誰もいない静かさばかりがオフィス内に私は何故か息が詰まるほど緊張していた。

「俺、北条が好きなんだよね。付き合ってくれる?」

突然の隼田くんからの「好き」という言葉に唖然とし、脳みそがハテナだらけになった。

隼田くんの顔が赤い。緊張しているのが伝わってきて私まで体が硬直した。
隣になったからといって特別意識したことはなかった。けれど、今こうして告白をされて意識してしまっている。

「――うん、よろしくお願いします」

私がそう返事を返すと隼田くんは「やった!」と嬉しそうに笑みを浮かべた。

「北条、キスしよ」
「……え、でも」
「俺達しかいないんだしさ、大丈夫だよ」
「……でも、私さっき返事したばっかりで、私達まだ恋人らしいことなにもしてない……」
「――だからさ。今からするんじゃん、恋人らしいこと」

――今からって。まだ私心の準備が……

そんな私の考えとは反対に、隼田くんの熱を帯びた顔は冷めることなく私に向けられる。
じりじりと後ずさっていた足も、机があることによって自ずと引き下がれなくなってしまった。

隼田くんは私の頬に手を触れ、顔を近づける。
ちゅうっと優しい口づけが唇に伝った。

恋愛経験がゼロの私は、隼田くんがくれるキスに夢中になって答えた。
最初は優しい口づけだったのが、いつのまにか唾液をこすりつけあうような深いキスに変わっていた。答えるのに必死で、隼田くんの舌の動きに合わせるのがやっとで「気持ちがいい」なんて考える余裕がなかった。

オフィス内に近づく足音に気づき、夢中でキスをする隼田くんの肩をポンポンと叩く。
すると、隼田くんは恥ずかしそうに私を見つめた。先ほどの色っぽい欲情した顔つきとは違い、今度は青年のようなテレた表情を見せる隼田くん。その一つ一つの仕草にドキッとしていると、

「……おまえら、なにしてんの?」

私達の前に姿を見せたのは、同期の池宮優成(いけみやゆうせい)くん。
彼は営業部で私達の部署、企画部には普段は顔を見せない。
池宮くんは隼田くんとは違い、どちらかというと肉食系のような外見をしている。目は一重で鋭く、高校の部活が陸上部だったということもあって肌が焼けていて、黒髪の短髪だ。

池宮くんは私とすれ違うといつも声を掛けてくれるけれど、私は池宮くんが苦手でいつも彼を目の前にするとビクビクと震えてしまう。今も無意識に手が震えてしまっている。

「ああ、池宮。いや、ちょっとな。じゃあ用済んだし北条、帰ろうか」
「ーーう、うん!」

隼田くんから呼ばれ私も急いで出る準備をする。

池宮くんとすれ違い、オフィス内を出て行こうとした時、
「ちょっとまって。俺、北条に話あんだわ」
池宮くんが私の腕を掴んで呼び止めた。

「池宮くんと話すことなんてなにも……」
「今受け持ってるクライアントが女の人でよ。いつもは上手くいくのに女の人相手だからか今回上手くいかなくて。北条悪いんだけど練習相手になってくれないか?」

とても困ったような表情で私を見る池宮くん。
震えるほど池宮くんのことが苦手なのに、何故か断れなくて力になりたいと思ってしまった。

「隼田くんごめん、私残るね」
「……分かった。あまり遅くならないようにね」

隼田くんはひらひらと私に手を振り、オフィス内から出て行った。コツコツと遠ざかる足音。次第にその足音は聞こえなくなったタイミングで池宮くんの方へと振り返る。

「あ……えっと、練習相手だっけ? 私、なにも知らないんだけど力になれるかな?」
「……なあ、アイツとどういう関係?」

池宮くんは手に持っていた資料を隼田くんの席へ置き、私に尋ねた。

「あっ、えっと……」

隼田くんからは付き合っていることは内緒にしようなどとは言われていないし、池宮くんも部署が違う私達のことを人様にベラベラと話したりしないだろうと思い素直に答える。

「隼田くんからさっき告白されて……」
「へぇ、それでここでエロいことでもしてたんだ?」

全部分かっているとでも言いたげな目で私の目をジッと見る池宮くん。恥ずかしくてすぐに顔が熱くなったのが分かった。

「……そこまではしてない」
「じゃあどこまでしてたの」
「えっと……その、キス……だけ……」
「キス……ねぇ。どうだった? アイツとのキス」
「そ……それは……って、なんでそんなこと池宮くんに言わなきゃいけないの?」
「――なんでって、興味あるから。北条、アイツと付き合うのはやめた方がいいよ。アイツ、他の部署の女とも付き合ってるよ。この会社だけで三人くらい彼女いるって噂だし」
「……へ、な、なんで池宮くんがそんなこと……」

池宮くんは不敵な笑みを浮かべた。

「俺、営業部だから。顔広いんでね。ねぇ、俺彼女いないよ。北条、俺と付き合ってよ」

付き合う? な、何を言ってるの。隼田くんと付き合ってるって話したばかりなのに。それに、池宮くんは私をなんとも思っていないはず。からかっているだけ? それとも私と隼田くんを別れさせるため?

そもそも隼田くんが何股もしているなんて、そんな噂話少なくとも私は聞いたことないし、池宮くんが作り上げた作り話に違いない。

「ーー無理。私は隼田くんを信じてる」
「じゃあさ、試してみようか」

池宮くんは楽しそうにズボンのポケットからスマホを取り出し電話を掛け始めた。耳を澄まさなくても電話口から聞こえる女の人の声は丸聞こえだった。

「ーーあ、俺、池宮。おまえさ、まだ隼田と付き合ってんの?」
『付き合ってるよ? 来週の日曜日は有名な神社に遠出する予定だから、彼女なしの池宮に彼女ができるお守り買ってきてあげるー』

女の人から告げられた「付き合ってる」の言葉が心に深く刺さった。

「はあ? いらねぇし。じゃあな。お幸せにー」

池宮くんは電話の相手にそう告げるなり、すぐに電話を切った。そして、「ああ、今のは法人部のヤツねー」と言い、また違う人に電話をし始めた。

次に電話を掛けた人も女の人で池宮くんが言った通り隼田くんと付き合っていると口にした。確認が終わると池宮くんはすぐに電話を切り、また違う女性に電話をしようとしていた。そんな池宮くんの腕を掴んで止める。

「ーーまって、もういい。もう、やめて」
「分かってくれた? じゃあ、最後に隼田に確認取るから北条は黙っててよ」

池宮くんは隼田くんに電話を掛け何股もしていることを問いただした。

「隼田、法人部の子とCS部の子と同時に付き合ってるだろ。噂では経理部の子とも付き合ってるって聞くけど、何股すれば気すむんだよ」

苛立っている口調の池宮くん。
隼田くんは『えっと……』と言葉を詰まらせていた。その詰まらせ具合が「ああ、本当に何股もしているんだな」と確信に変わってしまった。

『今近くに北条は?』
私のことを聞いたということは、私に事実を隠したいのだろう。池宮くんは「いない」と隼田くんに伝えると、隼田くんは自分のことを話し始めた。
『法人部の子と経理部の子は同じ時期に付き合い始めて。でも、北条は二人と違って胸もあるし、尻もむちむちで体もすごくエロいし。実は前からいいなって思ってたんだよね』
「へぇ……だってさ、北条。体の関係持つ前でよかったな」
電話口から隼田くんの『え!? えっ!?』と焦る声が聞こえているなか、
「俺、前から北条のこと好きだったんだわ。もちろんその間、彼女もできてないし、北条は俺が貰う」
池宮くんは一方的に隼田くんとの電話を切ってしまった。

「北条、クライアントがどうとか嘘だから。今回の営業も上手くいったし、でも、俺北条が側にいてくれるならもっと頑張れそうな気がする」

大きくて温かい手で私の頬を撫でる池宮くん。
いつもは恐怖心が勝つのに今は嫌な気持ちが一切ない。むしろ、私のことを本気で想ってくれている池宮くんに甘えたくなった。
池宮くんに抱き着くと、池宮くんは私の頭に手を回しゆっくりと顔を近づけてきた。

……あ、夢。この光景覚えがある。
今朝見た夢は池宮くんだったんだ……

「――っ、ふっ……」
隼田くんとは違い、池宮くんのキスは荒々しいキスだった。まるで、ずっとこうしたかったのように、夢中で私を求めてくるようなキスに酔いしれる。
「……んっ、北条……シャツ、脱がせるから。俺にそのエロい胸見せて」
「私も……その、池宮くんの……見たい」
「いいよ、見て。営業から帰ってきたばっかりだから汗だくだけど」

池宮くんは私のシャツを脱がせた後に自分のネクタイに手を掛けシャツを脱いだ。日に焼けた筋肉質の健康的な体が私の視界に入る。腹筋に手を伸ばすと、私の手をお腹の下の股の反り立った部分に当てた。

「あ……」

大きく膨らんでいるのが分かる。

「上半身だけじゃなくて、俺、ここにも自信あるからさ。北条の美貌に負けない自信あるよ」

池宮くんは流れるように私の首にキスを落とした。と同時に今からそういうことをするんだということを察した。
くすぐったい池宮くんの舌遣いに体が小刻みに痙攣する。
自分の口から小さい声が漏れているのが分かった。

池宮くんは慣れた様子で私の胸に手を添え、腕を後ろに回した後器用に右手でブラジャーのホックを外した。池宮くんの間の前で私の胸が露になる。

「大きいし、形も良いし、色もピンク色で綺麗だな。今までこの胸を何人の人に揉まれた?」

ツンと、指先で胸の突起を突く池宮くん。

「……っ、んんっ」
「痛かった?」
「……痛くはない……けど、くすぐったくて……」
「初々しい反応するんだな。――で、今まで何人の人に揉まれてきたの? ここも、何人の人に突っ込まれてきた?」
「――わ、私そんな淫乱に見られてるの? こういう風に触られるのなんて初めてだよ……」
「ははっ、こんないやらしい体しといて嘘が下手だな」

私のスカートを捲り上げる池宮くん。
胸に顔を埋め、ちろちろと舌で先端を舐めながらパンツの上から股を軽く指で摩った。体全体に電気が痺れるようにビクンビクンと痙攣してしまう。

「ほんと美味いな、北条の胸は。ここも、気持ちよさそうな汁がどんどん溢れてきて、もうパンツぐちょぐちょじゃん」

「ほら」と、私の愛液でびちょびちょに浸った指を見せてきた。それを自分の口の中に入れ舐める池宮くん。

「なにしてるの、汚いよ!」
「なにって、もっと凄いこと今からしようと思ってるんだけど……?」
「だからって、舐めなくても……」
「ここも今から舐めるよ」

池宮くんは私のパンツを降ろして脱がせ、足を広げて私の股に顔を埋めた。

「――ま、まって……なんかぬるぬるして……なに?」

恥ずかしくて池宮くんの頭を離しながら質問をすると、池宮くんは私の股から顔を離した。

「なにって……俺の舌だけど」
「やめて、なんかへんな感じがする」
「もしかして舐められたことない?」

さっきから何度も『初めてだ』と言っているのにまるで信じてくれない池宮くんに、もう一度、

「――っ、キス以外、池宮くんが初めてだから……」

そう伝えると池宮くんは「ふうん」と言いながらもさっきより激しく舌で責め始めた。控えめに私の股をちろちろと舐めていたさきほどとは違い、じゅるるっと大きな音を立てて勢いよく私の蜜を吸う池宮くん。

「――あ……っ、んんっ」

陰核と膣内を責められ、全身にこれまで経験したことがないような快感が私を包む。どれくらい激しく吸われていたのだろう、いつの間にか意識を失っていたようで、股の入り口からお腹の中が何か大きい物を出し入れされているような、激しい快感の波が押し寄せていた。

「――っ、やっと気づいたか……ああ、北条の中、さいっこう……」

蕩けそうな池宮くんの声。すぐに私の中に入っているものが池宮くんのソレだと認識するまでに時間はかからなかった。
池宮くんは一心不乱に腰を打ち付けていて、その快感の波が突かれる度に押し寄せる。

初めて男性と交わるときはとても痛いと聞いていた。
けれど、私の中は池宮くんに馴染んでいて、初めてなのになんでこんなに気持ちがいいのと困惑するばかりだった。

「……なんで、っ、わたし……はじめてなのに……っ」

奥をぐりぐりっと体重全体で押され、また、意識が飛びそうになり視界がチカチカと光った。
脳、痺れる……
自分でしたことないわけではない。けれど、自分でする行為とは違い、気持ちよさを足のつま先から頭のてっぺんまで感じている。

「おまえが意識飛ばして結構時間経つからな……馴染んだんだろ」
「――へ……ん、んんっ……」
「それと俺達の体の相性がバッチリなんだろ……っ、ああ……もう出すから。中に、出す……ちゃんと受け止めろよ……」

その言葉と共に、池宮くんの肉棒は私の奥に定着させるように、ぐりぐりっと押しつぶした。池宮くんの熱い子種が私の中で跳ねているのを感じる。

「俺、もう北条なしじゃ生きてけねぇよ……」

ぎゅうっと抱きしめられ、池宮くんが急にかわいく思えてしまった。

「……私、入社してからずっと池宮くんのこと怖い人だと思ってたの……でも、体を重ねて分かったの。本当は怖い人なんかじゃないんじゃないかって……」
「……はっ、北条が俺にビビってんのは分かってたよ。でも、俺そんな怖くねぇし、セックスも……次はちゃんと優しくする」
「……うん、池宮くん、私でいいの?」

そう聞くと、私の中に入っていた池宮くんの肉棒が、またむくむくと反り立って、私のお腹の中をいっぱいにした。

 

 

END

 

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