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戯れ~叔父と過ごした濃密七日間
「ん……」
気怠い身体をなんとか起こし翼はカーテンの隙間から差し込む朝日をぼんやり眺めた。
「目が覚めたかい?」
背中から聞こえるその声にパッと振り返ると、部屋の入口にトレーを手に持った男が立っているのが見えた。
「うん。おはよう、おじさん」
翼がはにかみながらそう答えると、男もまた優しく微笑みながらベッドへと近づいてくる。
「エルダーフラワーのシロップを入れたソーダ水だ。喉にいいから飲むといい」
ベッドサイドに腰かける、翼の叔父。高槻功は優しく彼の肩を抱いた。
ハラリと落ちたシーツの下からは翼の露わな肌とあちこちに散らされた紅い印が現れた。
「ありがと」
翼が差し出されたグラスを手に取ろうとすると功は徐にそれを彼から遠ざける。
「いや、私が飲ませてあげよう」
そう言って功はソーダ水を一口口に含むと、そのまま翼に深く口づけ中のものを口移しで飲ませる。
「んぅ……」
口の端から僅かに零れるしずくが翼の首筋を伝って鎖骨に落ちる。それを追うように功は器用に舌先でそれを辿る。
「っぁ……お、じさ…」
「ふふ、なんだ翼。もうほしいのか?」
功は器用にグラスをベッドサイドに置きながら、空いた手でシーツの上から翼の下半身を優しく撫で上げる。
「んぁ、だって……おじさんのキス…」
「キスじゃないだろう?せっかく飲ませてあげようと思ったのに……」
そう言いながらも功は手の動きを止めず器用に翼の身体に愛撫を施す。
「んっ、あっ……」
敏感になった翼の身体は刺激に素直に反応をしめし、ビクビクと震えだす。
「可愛いね、そんなにほしい?」
「っ……だって、あと、ちょっとしか二人っきりで……いられな、あっ!!」
翼の言葉を塞ぐように功は深く口づけるとそのままベッドの上に翼を押し付ける。
「そうだね、翼。でも今それは言わない約束だよ」
そして優しくそう囁くとまた愛撫を再開した。
***
「こんにちはー」
ジーウジーウと大音量のセミの合唱を背中に、翼は年季の入った門の前でもう一度持っていたボストンバッグを抱えなおす。
「こーんにーち……」
「あぁ、ごめん。菜園の方にいて聞こえなかったよ」
何度目かになる挨拶をいいかけると、後ろから声をかけられた。
「あ、ごめんなさい。お久しぶりですおじさん。今日から一週間お世話になります」
勢いよく振り返り翼は夏の日差しの中にいる叔父に目を細める。
記憶の中と寸分違わぬ優しい叔父の笑顔に翼もまた口元をほころばせ、一度深く頭を下げた。
「よく来たね。本当に何年振りかな?兄さんから連絡もらった時はびっくりしたよ。まさか翼が古典を専攻するなんてね」
あんなゲーム三昧だった君がねぇーと言いながら功はゆっくり翼の隣に立つと玄関の引き戸をゆっくりと開けた。
「まぁー色々と。心境の変化ってやつかなぁー?」
「なるほどね。それで今回は僕の家の蔵書が見たいって?」
玄関に乱雑に並べられた靴の隙間をぬって功はまた脱ぎ捨てるように履いていた長靴を脱ぐとそのまま廊下をスタスタ歩いていく。
幼い頃、父に連れられてきた記憶が僅かに残る室内をぐるりと見渡し、翼も功にならって靴を脱ぐと彼の後を追った。
「そう、おじさんこの前ウチの大学に寄稿してたでしょ?あれ、ゼミで凄い評判でさー」
「あー君、宮内くんとこのゼミなのか?」
功は苦笑気味に笑いながら翼を振り返る。
「うん、聞いたよ。おじさん大学時代『窓際の君』って凄い人気だったんでしょ?」
「やめてくれ。もう何十年も前の話だ」
シッシと片手で払うような真似をしながら功はまた苦笑すると、玄関から続くキッチンへと入りグラスを二つ取り出した。出窓においてある幾つかの鉢植えの中から適当に何かをむしり取るとそのままグラスへと放り氷を足すと幾度かそれを押しつぶし、炭酸を加えたものを翼に差し出した。
「飲むか?ミントのソーダ水だ」
「ありがとう、頂きます」
受け取ったグラスの中身を翼は一気に半分ほど飲み干す。
「君の部屋は二階に用意してあるよ。書庫は離れだから荷物を置いたら案内しよう」
二階と言われ翼は一瞬ドキリとする。
「あーうん、わかった。じゃ早速荷物おいてこようかな」
近くのテーブルに飲みかけのグラスを置くと、翼はボストンバッグを持ち直す。
「場所、わかるだろ?」
「うん、昔おじさんが使ってた部屋だよね?」
「あぁ、そうだ。よく覚えてるな」
何事もなかったように返事を返す功に翼はまぁね。とだけ返事を返すと、そのままキッチンを後にした。
トントントンとテンポよく階段を登っていくと幼い頃、この家に遊びに来ていた日のことを昨日のことのように思い出す。
時に厳しい両親と違い、無条件に甘やかしてくれる叔父である功にすっかり懐いていた翼はその日も一人で功の家に遊びにきていた。いつもなら玄関をあける音を聞いてすぐに駆けてきてくれる功が、その日に限って現れず不思議に思いながらも当たり前のように上がり込みそのまま功の自室を目指したのを覚えている。そしてそこで……
「あぁっ、おねがい、いさお…さんっ、も、ぼく……」
半開きになった扉から聞こえる知らない男の声が妙に色っぽい声で叔父の名を呼んでいる状況に咄嗟に怒られる!と感じその場を離れようとした際、扉の隙間から見えたベッドの上で絡み合う叔父と知らぬ男の姿が目に焼き付き、ことあるごとに翼の脳内を刺激した。
「うわーあの時とまんまだわ」
大きな窓にかけられたレースのカーテンとその下に置かれたキングサイズのベッド。翼はベッドの上に荷物を放るとそのまま大の字に寝ころんだ。
「別におじさんとどうとかこうとかとかないんだけど……」
自分がマイノリティであることを認識したのはもう随分前のことだ。あの情事を垣間見たのがきっかけかと言われれば答えに詰まるがそれも一因かもしれない。
「責任とれよな!俺の初恋だぞ!」
グッと天井に向けてこぶしを突き出してみるが、そんな勢いはすぐにしぼんでしまう。
「おーい、翼!書庫行くけどどうするー?」
「あ、すぐ行くー!」
ピョンとベッドから飛び起きると翼はまたパタパタと階段を駆け下りていった。
「何を考えているんだ?」
まだ涼しい朝の風が時折吹き抜ける中、功に優しく頬を撫でられ翼は視線をすぐ目の前の彼に向ける。
「ここに来た日のこと」
「どうして?」
激しく求めあう情事ではなく、穏やかに与えられる快楽を全身で受け止めながら翼は優しく微笑む。
「あの日、思い切ってここに来なかったらおじさんとこうやって触れ合うこともなかったんだよなぁって。父さんにお願いしてよかった」
そう言って翼は緩く功の唇に自分のそれを重ねる。
「ふふ、翼の情熱には負けたよ。私の中にもまだこんなに欲が眠っていたんだなと驚いている」
功は優しく翼の頭を撫でながら彼の首筋に跡を重ねていく。
「んっ、あっ……うっん…」
胸から腹へとどんどん功の唇は下へと降りていき、そのまま翼自身の先端へとキスを落とした。
「ひあっ!」
「ふふ、キスしただけなのに君のいやらしい液があふれてきた」
舌先で零れ落ちる翼の愛液を器用に舐めとりそのまま功は翼の陰茎を口に含む。
「ふああっ!!おじさ…きたなっ」
「ここずっと僕しか触れてないだろう?」
事実だが酷く恥ずかしいことを言われたような気がして翼は枕を引き寄せそれに顔を埋める。もう幾度となく口淫されその度に功の口腔内に吐精しているというのにいつまでも慣れない。
ジュブジュブと卑猥な音をたて、柔らかい功の舌であちこち刺激され翼はあっけなくまた精を吐き出す。
「やっぱり若いから回復も早いね」
クスクス笑いながら功は翼が吐き出したものを手のひらに出すとそのまま翼の秘部にこすりつける。
「不思議だな。もう反応しないと思っていたのに君を前にすると私も昔のように限界を感じないよ」
そういいながら功は自身のいきり立った陰茎を翼の秘部にこすりつけた。
「んっ、あ……」
「知ってるか?翼。朝イチのセックスは寿命を伸ばすらしいぞ」
「んあっ……そ、んなっ、毎日……してたら、よすぎて……ひぅっ!しんじゃ…」
浅い呼吸を繰り返しながらそう呟く翼に功はなるほどな。と呟くとそのまま翼のトロトロなナカへと侵入していった。
「っつ……あぁ、さすがに昨晩から時間が経ってないから……うっ、柔らかくて堪らないな」
「あぅ、あっ……んぁっ!ぁ……や、あああっ!!」
功の固いペニスにナカをかき混ぜられ、翼はだらしなく嬌声をあげながら、次々に生まれる快楽をやり過ごそうとシーツを握りしめ大きく首を振る。
「はっ……くっ、翼、もう少し力を抜きなさい」
「やぁ……む、り…」
翼の返事に功はニヤリと笑むと、そのまま彼の胸の突起にしゃぶりついた。
「あああっ!!」
功の頭を搔き抱くようにその頭にしがみつくと翼は身体をしならせ新しい快楽をやり過ごす。そのすきを逃さず、功は自身を最奥へと突き進めた。
「ひあっ、ああっ!!や、なに……ふかっ…」
瞳の奥でチカチカと星が瞬く。ゾワゾワと熱いのに鳥肌が経つ奇妙な感覚に翼はまた呼吸を荒くする。
「今度は一番深いところでイってごらん。君ならできるよ」
「あああっ、や……おじさ、怖い…」
「大丈夫。私がついている。翼なら出来るよ」
そういいながら功は緩く抽挿を繰り返し、翼の最奥を刺激する。その刺激が与えられる度に翼の腰部あたりにあまったるい快楽が溜まり自然と声が零れる。
「あっあっ、んんっ!ああっ!!」
だらしなく開かれた唇から零れる嬌声を拾うように功は深くその唇に口づける。
「ふぐっ、んっ、うっ……んんんっ、あっ、あっ、おじさ…いっちゃ、いっちゃう!凄いあああっ!」
「あぁ、そうだよ翼。いい子だね。イッてごらん」
抽挿のリズムは変えずに穿つ強さを徐々に強めながら功はあやすように翼の額に口づける。
「んあっ、おじさ、すきっ…イく、ああああっ!!!!」
ひと際高く嬌声をあげると翼は奥にいる功の熱を感じながらそのまま達し、意識を手放した。
「………」
自分の下で全てを許しきった寝顔を見せる甥っ子を功は切なそうな眼差しで見つめる。
「……私は悪いおじさんだな。どうやったら君を返さないですむかそればかり考えている」
そして静かにそう呟くと翼の形の良い頭を一撫でしそのまま彼に貸している部屋を後にした。
***
「やべっ!今何時!?」
また産まれたままの姿でベッドから飛び起きた翼はとりあえずあちこちに脱ぎ散らかしてある下着やらなにやらを身に着け階段を駆け下りた。
ひとけのない一階を駆け抜け、離れの書庫へ向かう。
ギーッと軋む木戸を開けるとフワッと夏の香りと古書の香りが同時に翼の鼻腔をくすぐった。書庫の奥で蔵書を捲る功が翼に気付いて軽く手を上げた。
「重役出勤だなぁ翼」
「ごめん、だって……」
「だって、なんだ?」
仕事用の眼鏡をかけた功がこちらをいたずらっぽい眼差しで見つめる。
「いや、別になんでもない」
不貞腐れながら翼はゆっくりと功の元へ向かう。あと彼の傍に居られるのは……
この時間が一生続けばいいのに。
そう祈りながら翼は功の隣に立ち同じように蔵書に手を伸ばした。
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