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その痛みは俺様への服従。
「エリオット様!聖都から戻られたのですね!」
「お戻り心待ちにしておりました!」
あちこちから白い聖衣をまとった弟子たちが駆け寄ってくる様子にエリオットは足を止めて優しく微笑んだ。
「みんな、ありがとう。留守中問題なかったかい?」
それぞれの額に一度ずつ手を翳し、加護を授ける。
「はい!それよりも長旅お疲れかと思いましてみんなでエリオット様をおもてなししようと準備してたんです」
「おや、本当に?」
そう言ってもう一度柔らかく微笑むエリオットの姿に弟子たちは皆頬を紅潮させ我さきにと口を開く。
「ミカエルが中心になって用意をしたんです!」
「僕はエリオット様がお好きだと言っていたお花を!」
「私は聖なる頂きに出向いて雪解け水を集めてきました!」
「まあまあみんな落ち着き給え。エリオット様がお困りだろう?」
エリオットを取り巻く弟子たちの後ろから優雅に伸びる声が聞こえ、彼に群がっていた者たちが一斉にその道をあける。
「やあミカ。留守中色々と世話になったようだね」
「いえ、わが師。礼には及びません」
エリオットにミカと呼ばれた男は仰々しく跪くとエリオットの手を静かにとり唇を寄せた……ところでエリオットを黒い渦が取り巻いた。
「おや、今日はずいぶんと遅いじゃあないか」
パッとミカエルの手を離すとその渦に向かってエリオットは嬉しそうな声をあげる。
「チッ、片翼だ」
「なんであいつが……間違った到着時刻を教えたのに……」
弟子たちは口々にそう罵るとその渦から一定の距離を取るようにじりじりと後ずさった。
「誰かさんが俺にお前の到着時間は今日の昼過ぎだと教えたんだよ」
渦はみるみるうちに人の形をとり、白い聖衣をまとったエリオットとは正反対の黒衣に身を包んだ男が現れた。
「ふーん。そうなんだ。まぁどうでもいいや、さぁ帰ろうカリタス」
ギロリと弟子たちを睨みつけるカリタスと呼ばれた男はエリオットに帰ろうと促されしぶしぶ彼を自分のマントの内側に招き入れる。
「ちょ、ちょっと待ちたまえ!」
その様子にミカエルが声を震わせながら制止した。
「なんだ?」
「いい加減にしてもらおうか。わが師エリオットは貴様のような悪魔と契約した人間と関わることは本来あり得ない高貴なお方なのだぞ」
「口が過ぎるよミカ」
カリタスのマントの中からエリオットの冷たい声が聞こえる。
「し、しかし……!」
「君にカリタスの何がわかるんだい?君こそ軽率な発言は控えるべきだ」
「ですが!」
「ミカ。君には本当に感謝しているんだ」
普段からは想像もできないエリオットの態度にミカエルは更に食い下がろうとするが、ピシャリと言い放ったエリオットの一言に仕方なく深く一礼したあとその場を下がった。
その様にカリタスは一度嘆息し、エリオットを抱きかかえる。すぐさまもう一度黒い渦が巻き起こりそのまま二人を包み込むと収束し瞬く間に二人ともどこかへ消え失せてしまった。
「……クソッ、戻るぞ!」
二人がいた場所を忌々しく見つめたのち、ミカエルはそう言い捨てると踵を返し大股で歩き出した。
「あーー疲れた!ねぇたまにはさあ立場交換してもいいんじゃない?」
黒い渦とともに消えた後、二人はカリタスが居を構える屋敷へと戻りエリオットはそのまま駆け足で寝室へ飛び込むとカリタスのベッドにダイブした。
「師匠が決めた役割だ。そう簡単には変えられねぇし、お前には荷が重すぎる」
「……わかってるよ。でもさぁ、カリタスの方が魔力も上だったんだから」
「それは言わない約束だろ。それに俺にはエリオットのように愛想振りまくとか無理だからな。丁度いい」
「そういうもんかなぁー」
ごろんとベッドの上で寝がえりを打ちながらエリオットが唇を尖らせる。
「そういうもんだ。それにこんなふうに誰も立ち入れない屋敷も手に入ったし意外に快適に過ごせてるんだ」
そう言いながらカリタスもまたベッドへ近づくとエリオットをまたぐ形で膝立ちになる。
「それより、なんだあれは?」
「あれって?」
「お前の弟子達だ」
エリオットの顎を掬いながらカリタスは忌々しそうにそう吐き捨てるとそのまま彼の形の良い唇に深く口づける。
「んっ…僕の弟子ってミカのこと?」
「名前も聞きたくない」
「フフッ……ん、ごめんね……あの子達は僕らのこと知らないから」
「知られてたまるかよ」
ムスッとした声のままカリタスは更に口づけを深くする。
「んっ……ふ…ぁ」
拒むことなくエリオットは緩く唇を開くとカリタスの舌を柔らかく受け入れ甘い声を漏らした。
「あ……ぁ、ん…」
ひとしきり口腔内を弄ぶとカリタスはそのまま舌先でエリオットの首筋を丁寧になぞる。
そして鎖骨あたりまでたどり着くとそのままジュッと音をたててエリオットの陶器のように白い肌に吸い付いた。
「っ!……ねぇ、いつも言ってるけどもう少しやさ……」
「うるさい」
柔らかな笑顔を湛えたまま、やんわりと強請るエリオットをぴしゃりと切り捨てるとカリタスはさらにあちこちに吸い付いた。
「ぁ、あっ……んっ!だ、だから…カリ…ああっ!!」
乱暴にエリオットの服をはぎとりその胸の突起に齧りつく。
「ひうっ……ぁ、あっ!……んぁ」
痛みと快楽が入り乱れエリオットは無意識に足を閉じながら身をよじらせた。
「だから、足を閉じるなといつも言ってるだろ」
しかし、すぐにカリタスに足を開かれ彼の膝で陰部を刺激されまたエリオットは甘い声を漏らす。
「もう半勃ちじゃねぇか……あっちでは抜かなかったのか?」
「わ……っぁ、わ、かりきったこと何度も、聞くなよ……んあっ!」
目の端をほのかに紅く染め恨めしそうに呟くエリオットにカリタスは満足そうに微笑むとそのまま片方の手で器用にエリオットのペニスを掴むと優しく刺激を与え始めた。
「あっ…あ、んっ……カ…タス、ああっ!!」
エリオットが甘い声をあげながらビクンと弓なりに身体を反らせる度に、カリタスの手中で徐々にそのふくらみを増すエリオットのペニスを、カリタスは弄びながら同時に彼の胸の突起を吸い上げ刺激を送る。
「んあっ…ひぅ…んんっ!」
張り詰めたエリオットのペニスからは徐々に愛液が溢れ出し、カリタスの手のひらをいやらしく濡らす。
「おい、また漏れてるぞ」
含み笑いのままカリタスはわざと水音を立てるように手を上下に動かしてみせる。
「んっ……あっ、あっ、だ…だから……んああっ!」
抵抗にならない抵抗を見せながらエリオットは甘い声を上げ続ける。
「久しぶりなら一回先に出しとけ」
いつもより多くあふれる愛液にカリタスは満足そうに微笑むとそのまま手の動きを速める。
「ひあっ、や、そんな……早く、した……ら、すぐいっちゃ…や、ああっ、あっ、んあああっ!!」
幾度か手の動きを激しくしただけで、エリオットはあっけなく達しガクンと脱力すると大きく肩で息をしながらカリタスを熱を帯びた目で見つめる。
「…チッ」
その様に劣情を煽られ、カリタスは低く舌打ちをするとそのまままたエリオットの唇に噛みついた。
「ふぐっ…ん」
もう一度深く舌を絡ませ唇を離すとカリタスは自身の衣服を脱ぎ捨てながらエリオットの耳元に唇を寄せ低く囁く。
「いいか、お前は俺のものだ。何があっても」
その言葉にエリオットは一瞬目を瞠るが直後、幸せそうに眼を細める。
「……そんな今更。最初からそうだって決まってるじゃないか」
「……わかってればいいんだ」
エリオットの言葉にカリタスもまた少しだけ表情を崩すと、ぶっきらぼうにそう言い捨てすっかり勃ち上がった自身をエリオットの秘部にあてがう。
「ん…」
これから訪れる圧迫感を予測し、エリオットが短く息を漏らす。
「呼吸、深くしてろよ」
「うん」
ズプ……と最初の抵抗だけ超えたあとスルスルと飲み込むように吸い込んでいくエリオットのナカにカリタスは自身を深く埋めると、そのままエリオットのあちこちにキスを落としていく。
「んっ……あっ、あぁ…ふか……んあっ、あっ!」
グチュグチュと徐々に早まる律動に自然とエリオットの声も高まりを見せる。
「あっ、んあっ、だ、オクだめ……あああっ!!」
ガクガクと身体を揺さぶられながらも最奥に生まれる快楽に色を帯びた声が室内に響く。
「ダメじゃねぇだろ、ここまで食い込んで」
グッと見せつけるようにカリタスが腰を押し込むとエリオットはまた淫らに声を上げた。
「ああっ!だ、だめ…またいっちゃ…」
気付けばあっという間に復活していたエリオットのペニスからはだらしなく愛液と精液の混ざりあったものが滴っている。
「もう少し我慢しろ」
そう言いながらカリタスはエリオットのペニスの根本を指で軽く抑えた。
「いやっ、あっ……やめ、離して……」
「お前がそんなすぐにイッたらつまんねーだろ」
「や、あぁ……んんっ!!」
きつい拘束ではないのにエリオットは懇願するようにカリタスの腕を掴んで首をふる。
「おねが…気持ちいから気持ちいいからぁあっ!」
「あぁ、知ってる」
腰の動きは止めずにカリタスは上半身をかがめるとエリオットの額にキスを落とした。
その瞬間、手の触れる位置がずれてエリオットの先端がグッと押さえつけられた。
「や、あ…触ったら…もっと……あっ、あっ、ああああっ!!!」
二人の身体に挟まれたエリオットのペニスはあっけなく達し、ナカにいたカリタスのペニスをきつく締めあげる。
「くっ……だから、お前がイくと……クソッ」
もっていかれそうになるのを必死で抑え、カリタスはそのままエリオットの太ももに手をかけ彼の足を思い切り上げた。
「出すぞ」
「ん、んぅ……」
「……ッ!」
ゆるく縦に首を振る仕草にグッと腰を打ち付け、そのままエリオットの中に吐精する。
脱力しながらカリタスはエリオットをつぶさないように静かに彼の上に重なる。
「カリタス……」
「なんだ?」
目を閉じたまま荒い呼吸を繰り返していたエリオットが静かにその名を呼びカリタスの頬に手を添えた。
「ううん、ありがとう」
「フン、意味がわからん」
そういいながらもカリタスは優しくエリオットを自分の腕の中に抱きすくめるとそのまま静かに寝息を立て始めた。
「……」
すぐさま寝落ちした恋人の寝顔をエリオットは幸せそうに見つめる。
「僕より君の方が疲れてたんじゃないか。どうせあの子達にまかせず僕の分も仕事をこなしていたんだろう?」
そう独り言をつぶやきながら優しくカリタスの頭を撫でる。
「っ……」
腕を伸ばした際に鎖骨に鋭い痛みが走る。視線を落とせばカリタスのつけた歯型からわずかに血がにじんでいた。
「ふふ」
エリオットはその傷口に手をあて幸せそうに微笑む。こんな傷、エリオットにかかれば一瞬で治せるはずだが、彼はそうしなかった。
「……エリオット」
「!!」
突然寝言で名を呼ばれ、エリオットはビクッと肩を震わせる。
「……おかえ、り」
そして続いたカリタスの寝言にエリオットは満面の笑顔を見せるとそのままポスンと彼の胸の中に納まった。
「ただいま」
そして幾度かの深い呼吸のあとエリオットも静かに寝息を立て始めた。
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