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マッチングアプリ

マッチングアプリの相手が片思いしてる兄の友達だった話

「ただいまぁ」

部活から帰ってきた玄関でその靴を見つけた。

あ、湊さん来てるんだ。

すぐにわかる。

私は、笹川静(ささがわしず)。

高校二年生だ。

実家暮らしの兄・歩(あゆむ)の友達である湊武久(みなとむく)さんに絶賛片思い中。

出会いは兄の高校入学のころ。

同じバスケ部の高校生たちがお兄ちゃんの部屋に遊びに来た時だった。

何人かいる友達の中で断トツ主役級に輝いて見えた。

でも当時まだ中学校に入ったばかりの私に湊さんが恋愛感情など持つはずもなく、ずっと片思いをつづけたままでいる。

先輩のために少しでも大人っぽくなりたくて髪型もワンサイドアップにしたり服装も落ち着いたものを選ぶようにしていた。

高校生になってからはナチュラルメイクでアピールもしている。

幸か不幸か体の発育はよく、身長の割にメリハリのある体に仕上がってしまった。

歳より大人っぽく見られることも多くて、湊さん以外のお兄ちゃんの友達に声をかけられることも少なくなかった。

でも違うのに…。

私は湊さんに振り向いてほしい。

着替えるために二階に上がり部屋に向かう。

お兄ちゃんの部屋の前を通り、向かいにある自分の部屋のドアに手をかける。

ガチャ。とお兄ちゃんの部屋のドアが開く。

「あ、静ちゃんおかえり」

満面の笑顔の湊さんが出てきた。

「あ、湊さんいらっしゃい」

なるべく平静を装って笑顔を返す。

「部活お疲れ様」

そんなまっすぐに見つめられると恥ずかしくなる。

曖昧に笑って部屋に入る。

心臓はバクバク。

胸に手を当てて座り込んでさっきの湊さんの笑顔を思い出す。

はぁ。

ちょっとは意識してほしいなぁ。

部屋着に着替えて居間に降りる。

コーヒーを入れてテレビを見ていると階段を降りる音がした。

廊下の方に目をやるとお兄ちゃんと湊さんが見えた。

「ちょっと出かけてくるよ」

お兄ちゃんがこちらに向かってそう告げる。

「はーい」

湊さんと目が合った気がしてちょこんと頭を下げる。

湊さんも軽く手を振り返してくれる。

もう、なんて思わせぶりなんだろう。

そう思って切なくなる。

「はぁ」

週明けの学校。

「溺れそうなほど深いため息だね」

「もしかして湊さん?」

友だちの桜と芳(よし)と昼休みに弁当を囲んで話す。

「大学でも結構もててるみたいなんだよね」

「へぇ、静には悪いけどなんか普通だよね」

「確かに」

そう言って二人は笑いあう。

「その普通さがいいんだよ」

確かに湊さんは身長も172cm(兄にリサーチ済み)と平均的だし、マッシュボブの黒髪に細マッチョなごくごくアベレージな20歳(はたち)だと思う。

でも私には輝いて見えている。

周りの男子はしょせんモブって思えるほどに好き。

「私なんか相手にされてないのかも…」

「いやいや。静って大人っぽいし私服なら湊さんと十分お似合いだと思うけど…。」

「コクんないの?」

それな。

私だって告白したい。

でもお兄ちゃんの友達だよ?

気まずいじゃん…。

「まぁ失敗したら気まずいよね」

桜が私の気持ちを代弁してくれるのでこくこくとうなずいて同意する。

「クリスマス近いしなぁ。二人は彼氏と過ごすんでしょ?」

「まぁね」

「来年は受験だし今年のクリスマスくらいは楽しみたいしね」

そう、二人とも同級生の彼氏がいる。

つまり私はクリぼっちだ。

「そう言えばこないだ登録したマッチングアプリは?」

あぁ。

湊さんが合コンに行ったと知ってやけくそで登録したマッチングアプリ。

結局湊さんと似てる人を探してしまって、結局見つからなくてそのままになってた。

言われて思い出して開いてみる。

「お、DM来てんじゃん」

私のスマホを二人がのぞき込む。

「どれどれ」

芳が勝手にタップしてスクロールしてみる。

「あぁ、プロフ写真微妙じゃない?」

「でもなんか髪型とか湊さんぽいね。静好きそう」

そう言われて私もスマホをよく見る。

確かに…。

湊さんに似てるかも…。

いやいや好きすぎてそう見えちゃうだけかな?

もはや全部湊さんに結び付けたいという願望か?

「ねぇちょっと会ってみたら?」

「会うだけ」

「えぇ」

ちょっと抵抗あるなぁ。

しかもこのアプリ、登録するときに2つ歳盛ってるし大学生って嘘ついてるし…。

「いい人かもよ」

「う~ん」

この後散々押されて『会うだけね』という結論になった。

DMで待ち合わせをしていよいよ当日。

桜と芳は彼氏とデートだという。

あんなに私を持ち上げといてついてきてくれないのかよ!と思ったけどデートなら仕方ない。

待ち合わせ場所につく前にショップのガラスに映る自分をちょっとチェックする。

大学生に見えるかな?

安易だけどモノトーンのオフショルに短いジャケットを羽織って、同じく黒にラメの入ったニットのロングタイト。

スリットもざっくり入ったタイトスカートで色気もばっちり出ているだろうか?

不安を抱えながら待ち合わせの場所に近づく。

そこで目を疑う。

え?湊さん?なんでこんなとこに?

最悪なんだけど!

アプリの待ち合わせかち合うなんて!

バレたくない。

でも待って?

少し離れたところから湊さんをもう一度確認。

チノパンに黒セーター。ななめ掛けのベージュのバック。

これって…。

周りを見渡して他に同じような服装の人がいないことを確認した。

間違いない。

DMのメッセージにあった待ち合わせの時の服装…。

もしかしてこのアプリの人って—。

湊さん!

どうしよう?会うべき?それとも。

「あれ?静ちゃん?」

しまった。

考え事してたら隠れるの忘れてた。

「…ってその服装…」

湊さんも私の服装みて『はっ!』としたようだった。

「あ、あのこれにはちょっと事情があって…」

焦っている私とは裏腹に、湊さんは『まいったなぁ』と冷静にいろいろ考えているみたい。

「あの、ごめんなさい私…か、帰りますんで湊さんはお気になさらず…」

「いや、でも…」

「あ、あの兄にも言わないんで、湊さんも黙っていていただけたらありがたいです」

それだけ言って

「じゃ」

と湊さんに背中を向けた。

あぁハズイ。ヤバイ。

そう思いながら2.3歩歩いたら。

がしっ!

腕を掴まれた。

振り向くと—。

「静ちゃん待って」

湊さんが私の腕をつかんでいた。

「せっかくだしデートしようよ」

「へ?」

「はは…。なんていうか…来てくれたのが静ちゃんで…よかった。」

そうやっていつもの笑顔を見せてくれる湊さんを私はじっと見つめてしまった。

「ごちそうさまです」

結局湊さんと映画を見てお昼をごちそうになった。

「いえいえ」

「あの…ごめんなさい」

「え?」

「嘘ついてごめんなさい」

「あ、あぁ、別にいいよ」

「あの、別に私いつもこういうことやってるわけじゃなくて…その…」

「わかってるよ。静ちゃんは見た目よりちゃんとしてるしね」

誤解されたくなかったけど、わかってはくれてるみたいで安心する。

「俺だってこんなアプリ使って彼女さがしてたわけだし…」

そう言って自嘲する湊さん。

「でも不思議だな。静ちゃんならその…学校でもてるでしょ?何もこんな出会いしなくても…。あ、もしかしてパパ活…」

「ち!違います!」

思わず両手を使って大きく否定してしまう。

「…ごめんごめん、だよね。そんなことするわけないか」

心底おかしそうに笑う。

「み、湊さんこそ、大学でもてるってお兄ちゃんが言ってましたよ」

「あぁ、…理想が高すぎるのかな」

ハハっと笑った。

「そう、なんですね」

やばい希望がすり減っていく。

「いやいや冗談だよ。歩がどういってるのかわからないけどモテないし、第一俺ヘタレだから好きな人に告白もできないし」

「そんな」

そんなことない…。

「私は湊さんに告白されたらうれしいですよ!」

感情が高ぶって思わず口走ってしまってハッとする。

「…静ちゃん」

湊さんも驚いて目を見開いている。

「あ、え、っと」

「ありがとううれしいよ」

しまった。あしらわれた。

「静ちゃんはどうしてこんなアプリなんか…」

「私は…。クリスマスにあせちゃったっていうか…」

「へぇ、クリスマス一緒に過ごしてくれる人いないの?意外」

「いや、好きな人はいるんですけど…。私も告白する勇気なくて」

「それでアプリに逃げてきたの?」

コクっとうなずく。

「ふふ…素直でよろしい」

頭をポンポンされてドキッとする。

「さ、じゃ帰ろっか?」

お店を出て少し歩く。
「…」

「今日はありがとうね」

「い、いえ」

沈黙が切ない。

私の中で湊さんへの想いが大きくなっているのがわかる。

これが恋人どうしでほんとのデートだったら…。

そう思うのにあと一歩が踏み出せない。

でもこれはチャンスなのかもしれない。

これを逃したらまた“お兄ちゃんの友達”のまま…。

「あの‼湊さん!」

そう思ったら彼の服の裾を掴んでいた。

「あの…湊さんのうちにいったらダメ…ですか…」

勢いを失った言葉が地面に落ちる。

「今日だけ…。今日だけもう少し湊さんの恋人候補っていうか…あの」

こらえた涙で声もにじむ…。

何か言ってほしいのに…。

「ごめn…」

「静ちゃんバカだな…」

ごめんなさいという言葉を遮って湊さんがぽつりとつぶやく。

「そんな誘うような恰好してそんなこと言って…」

「あ、…えと」

「マッチングアプリって怖い大人もいっぱいいるんだよ」

「…ごめん…なさい」

背伸びしすぎたJKの末路。

悲しくてあふれた思いが地面にシミを作る。

「それにね。いくら兄貴の友達だって言っても…俺だって普通に健全な20歳の男子だから」

そう言いながら手を引かれて驚く。

「いくよ」

低い声でそうポツリと言って湊さんは私の手を引いて歩き出した。

引っ張られるように歩いてふと見上げると—湊さんのアパート?

一軒のアパートについた。

鍵を開けて

「どうぞ」

と言われて

「…お邪魔します」

と中に入る。

後ろでカギが閉まる音がする。

「ねぇ静ちゃん。これがどういうことかわかるよね?」

その言葉にゴクっと息をのんでしまう。

そのまま手を引かれてベッドまで行って押し倒される。

「…み、湊さん」

見たことのないほど強いまなざしで見つめられる。

「俺常識ある方だからさ、ちゃんと我慢してたんだよ」

「え?」

「あった時はまだ中学生だったしほんと友だちの妹としか思ってなかったけど、どんどん大人になって色っぽくなって俺が家にいったら無防備すぎる姿を見せてさ、今日だって見てよこの服装」

そう言って上から下まで舐めまわすように見つめられる。

「胸も足もおしりもみんな強調されて…好きな女のそんな格好に耐えられるほど俺も大人じゃないんだよ!」

吐き捨てるように言われて心拍数があがる。

『好きな女』…。そう言った?

「友だちの妹、しかも高校生に手ぇ出すなんてやばいと思ってずっと我慢してたのに…」

湊さんの言葉に体はどんどん熱くなって心臓の音はどんどんうるさくなる。

「静ちゃんは…なんで俺を煽るの…」

切なそうにそう言って私をじっと見つめる。

「でもここまで来たんだから『いい』ってことだよね?静ちゃんもう高校生だからわかるよね?」

まるで自分を正当化しようと必死になっているように見えた。

可愛い。

年上の素敵なお兄さんだと思っていた湊さんのことをかわいいと思った。

無意識に湊さんの頭を私の胸に抱えるように抱きしめた。

「…」

胸の中で湊さんの呼吸が荒くなるのがわかる。

そのまま私の胸に湊さんがかみついた。

「あっ!…」

そのあまがみに全身がしびれる。

「いいね?」

もう一度確認するようにそうささやかれて私は静かにうなずく。

それを合図に湊さんが私を抱きしめた。

そして肩に、首にそして唇にキスをおとす。

「…んん」

「怖い?優しくするからね。大丈夫だよ力抜いて」

そう言って私のトップスの裾をめくって一枚ずつ丁寧に脱がせていく。

「やっと…静ちゃんとこういうことできる」

それは幸せそうな声だった。

全部の服をはぎ取られた後恥ずかしくて顔をそむける。

「服の上から見るよりスタイルいいね」

「あ。あの私初めてで…」

「マジ?うれしいな」

「あ、えと」

「大丈夫。怖いこともいたいこともしないから、いやならとめていいよ」

そう言って私の体に舌を這わせる。

「おっぱいきれいだね」

優しく触られてむずがゆい。

「あぁ、ここもう濡れてる」

確かにそこから水音がする。

言葉にされるととても恥ずかしい。

しかも大好きな人に…。

「そう言えば…静ちゃん好きな人いるって言ってたのに俺と初めてをしちゃっていいの?」

この人は…。本気で言ってるんだろうか?

この流れからしたらだいたいわかりそうなもんなのに。

「私の好きな人は…湊さんです」

そう言った瞬間彼の股間がグインと質量を増して私の内ももに押し当てられた。

「ごめん」

恥ずかしそうにそういう湊さん。

でも私はうれしいです。
湊さんは張り詰めたソコが苦しいのかズボンと下着を脱いだ。

細く引き締まった体の中心に太くそそり立つモノに息をのむ。

ずっと憧れていた湊さんとのセックス。

確かにちょっと夢を見ていたというのもあるけどそれにしても現実はちょっとグロイ。

「大丈夫?やめる?」

不安が顔に出てしまっていたのかも。

湊さんがそんなことを聞いてくる。

いや確かに怖いよ。

でもここでやめるなんて湊さんに申し訳ない。

「だ、大丈夫です」

そういうと湊さんはしっかり抱きしめてくれた。

始めは固くなっていた私の体も湊さんの香りに包まれて少しずつ緊張が解けていく。

器用にゴムをつける姿をぼーっと眺める。

湊さんはゆっくりと私の蜜口を自身のモノで撫でるように濡らしてくれる。

ようやく準備が整ったようで、

「じゃ、ほんとに挿入(い)れるよ」

と言われた。

「ゆっくり息を吐いてね…」

ふぅぅぅ。

私が息を吐くのと同時に湊さんのがゆっくりと私の中に挿入(はい)って来る。

「う、…うん…」

「ごめんきつい?」

「だ、だいじょぶ …」

そう言ったけどやっぱりキツい。

湊さんは浅いところで挿入を繰り返した。

「どう?これくらいなら気持ちいい?」

「はい…」

しばらく出し入れを繰り返すうちにわずかだけど少しずつ深くなっていく。

いたい…。

でももっと欲しい。

痛みがくせになる。

そんな感覚でしっかりと湊さんにしがみつく。

「静ちゃん…。もう少しだからね」

苦し気にそう言葉を発するとグラインドするようにゆっくりと私の中に腰を沈めていく。

「あっ!…あ、んんっ!」

ミシミシと音がしそうなほど強く私の中に湊さんのが割り入ってくる。

「静ちゃん、全部挿入(はい)ったよ」

下腹部も気持ちもじわっと暖かくなる。

つながっちゃった。

湊さんと…。

幸せでいっぱいになる。

「ご、ごめんいたい?」

焦る湊さんを見て自分が泣いていることに気付く。

「ううん。嬉しくて…。」

「そっか…」

湊さんが優しく髪をなでてくれる。

そのまましばらく抱き合っていた。

「静ちゃん、ちょっと動いていい?」

「あ、うん」

いつの間にか私のソコはならされていたようで、湊さんのモノはスムーズに動き出す。

あぁ、想像してたより痛くないかも。

それでもやっぱりその痛みは仕方ない。

そんなことより愛しさのほうが勝ってしまう。

「あぁ、やばい。超締まるじゃん。もって行かれそう」

苦しそうだけど気持ちいいんだってわかると嬉しくなる。

「ごめん静ちゃん。俺イッちゃうかも」

「うん。いいよ」

そういうと湊さんの律動は早くなる。

私としっかり視線を合わせて微笑みかけてからもう一度私の体のそこかしこに唇を這わせてしるしを付けて行く。

湊さんて意外と独占欲強いのかも…。

それさえ幸せだけど。

何度も出し入れされるうちに痛みが何となく快感に変わっていく気がした。

「静…出すよ」

私がうなずくと湊さんは激しく腰を打ち付けて—果てた。

欲望のつまったゴムはゴミ箱に捨てられる。

「あぁ俺何やってんだろ」

私の横に寝転がって湊さんはなんだか嬉しそうに言う。

「後悔してますか?」

「いや」

にやりと笑う。

「マッチングアプリであっただけなら『大学生だと思った』って言えるかもだけど」

そう言ってから私に腕枕をして

「友だちの妹、しかも高校生を犯すなんて…」

言ってることと裏腹になんか嬉しそうにしている。

「マッチングアプリで会った子に騙されたってことにしとけば?」

「そっか」

そう言って二人で笑いあった。

「大事にするよ静」

そう言った湊さんの胸にそっと顔をうずめて幸せをかみしめた。

それにしても—

「お兄ちゃんに—」

「歩に—」

「「なんて言おう?」」

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ichigomilk

つたない文章ですが、みなさんの心に届きますように!どうぞよろしくお願いします!

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