0
あなたをもっと求めて
何度もスマホを確認して、玄関でソワソワと立ったり座ったりを繰り返す。
身だしなみはどうだろうと何度も髪を撫でたり、化粧は落ちていないかと玄関の鏡を入念に見つめて、一人で頷き納得する。
それでも落ち着かなくて、外から車の音がする度に窓を確認しては肩を落とした。
時折鏡に映り込む私の姿は実にだらしない程、嬉しそうに緩んでいた。
自分がどれほど、楽しみにしているかが明白に分かって、無性に恥ずかしさが込み上がり、真っ赤に染まる頬を両手で包んだ。
早く会いたくて、何度も化粧を確認しながら玄関で忙しなく往復していると、車が家の前に止まる音が聞こえた。
ベンツの車が家の前に止まり、急に緊張感が湧き上がり、手に汗が滲み出す。
最終確認として、もう一度鏡と睨めっこしながら緩んでしまう頬を抑えた。
ガチャンと扉の開く音と共に入ってきた人物に、私は目を輝かせて抱き着いた。
優しく私の体を抱き締めてくれた温もり。
首筋に顔を埋めて、スリっと鼻を寄せて頬に軽いキスをされる。
「遅くなってすみません…出張が長引いてしまって…」
「いいの…いいのよ…だって会えたんだから…」
一ヶ月ぶりの彼の温もりが嬉しくて、彼の背中に縋るように腕を回して胸板に頬を寄せた。
逞しい体と、ほんのりと彼の好きなタバコの香り。
それに急いできたのか、香水に混じって汗の匂いも鼻を掠める。
久しぶりの彼の匂いに包まれて、キュンと下腹部が疼く。
彼と会うまでは一人ですることも、旦那からの行為も全て断ってこの時を待っていたのだ。
「ずっと会いたかった…あなたがいないと私…」
「俺もです…ずっとあなたと会えることを楽しみに仕事頑張ったんですから…今旦那さんはどこに…?」
彼は私を見下ろす形で見つめてきて、小さく首を傾げて不思議そうに家の奥を見ていた。
「今日は仕事なの。上司に呼び出されたみたい。だけど…都合が良いんじゃない?だってあなたといつもよりも長く一緒にいれるんだから」
私の言葉に嬉しそうに笑みを浮かべて、きゅっと腰に手を回してきて、軽いキスを唇にされた。
薄い唇が薄らと私の口紅の色に染まった。
それが妙に色っぽくて、彼の唇に手を伸ばしてゆっくりと撫でた。
ねっとりと引き伸ばされた口紅が、彼の唇全体に広がり真っ赤に染めた。
彼が好きな赤いルージュは彼から誕生日に貰ったプレゼントだ。
私の好きなブランドで、最新色が出たと喜びながら彼に伝えた誕生日当日に、彼から渡されたのだ。
発色の良い口紅が、彼の形の良い唇を縁どっており、何とも色っぽくて艶やかだった。
整った顔立ちをしている彼にとても似合っていた。
メイクをした女性のような色っぽさを感じ、思わず吸い寄せられるように、唇を重ねた。
「…んッ…ねえ、ベッドで…したい…あなたをもっと感じたいの」
私の言葉に彼は目を細めてうっとりと見つめて、真っ赤に染まった唇の口角を上げた。
コクッと喉仏が上下したかと思えば、軽々と横に抱かれ、額にキスをされた。
長身の彼に姫抱きされる感覚は、未だに慣れることはない。
高さもそれなりにあり、自分の体が落ちてしまいそうで、縋るように彼の首に腕を回した。
それさえも彼は楽しげに笑みを浮かべてしょうがないなと、言葉を零しながら足取りは寝室へと向かう。
今朝彼がやって来るのを見込んでしっかりと布団もいつも以上に手入れをして、少し香りの良いお香も予め焚いておいたのだ。
前に彼とデートした時に立ち寄ったお香ショップで、彼が良い匂いだと言った物。
それを通販サイトで購入して、彼が家にやってくる前に必ずそれを焚くのが私の楽しみになった。
旦那もそれなりにあの香りを気に入っているようで、お香を焚いた寝室の時は決まって体を求められた。
きっと今日も求められるかもしれない。
そう思うと体力が持つかどうか定かじゃない。
開けっ放しの寝室のドアを潜った途端に、彼はすぐに私をベッドへと押し倒した。
「すみません…もう我慢できなくて…早くあなたが欲しいんです…」
まだまだ幼い顔で私を見下ろす彼に回した腕を強く引き寄せて、貪るようなキスをする。
は、と息を吐いたのも束の間で、すぐに彼の咥内に吸い込まれた吐息は、徐々に熱いものへと変わっていく。
お互いの口から溢れ出す熱い吐息と、徐々に響き出すいやらしい水音。
分厚い舌がまるで何かの生き物のように、私の咥内を動き回り、歯列をなぞってから、喉奥へと引っ込んでしまった舌を簡単に絡め取られた。
「あ、ッ…んぶッ…うぅッ…んぅ…ッ」
上手く息を吸おうと鼻で呼吸をしようとするが、慣れていないせいもあってか、鼻から抜けていくのは甘ったるい声だった。
舌の根元から先に掛けてぢゅるるっと強めに吸い上げられてしまえば、体は徐々に熱を帯びていく。
いつの間にか酔いしれるように閉じていた目をゆっくりと開けてみると、顔を顰めて夢中になって私の舌を弄ぶ彼の顔が目の前に広がった。
それがやけに色っぽく見えて、キュンっと下腹部が疼き、背筋に甘い痺れが走っていく。
はふ、とお互い唇が離れて目が合うとすぐにまた深いキスを繰り返す。
彼の唇は真っ赤な紅が滲み、口端などに滲んでしまっていた。
先程よりかは軽く舌を絡めるだけの軽いものになり、少し物足りなさを感じたものの、彼の真っ白な肌に映える口紅を見つめて、指で拭ってあげた。
「…ふふ、似合ってる…可愛いわ」
「本当?色白いから赤って目立つんです…なんだか恥ずかしいな…」
「そう?可愛い顔してるわよ?赤いのが余計に色っぽく見えて…私は好きよ。今度一緒にメイクしてみる?」
やめてください、と照れ臭そうに笑う彼に、私はうっとりと彼を見つめた。
この何気ない一時が堪らなく好きだった。
勿論旦那のことは嫌いではない。
けれど、私の要望に応えてくれないのが不満だったのだ。
結婚して8年が経つのに、夜の行為は彼がした時しか求めてくれなくて、私がしたいと伝えても簡単に断ってくる。
それに周囲からの子供を早く産めと言う言葉は私にとって重く伸し掛かった。
まだまだ一緒にいたいのに、彼と結婚してからずっと早く子供を産めと急かされ、いつしか彼との行為もそういう目的で見てしまうようになったのだ。
楽しくもない、気持ち良さもないセックスをした所で、彼が生でするのが好きではないのだからできるはずがなかった。
子供を催促されるのは私ばかりで、彼に求められるのも今の内だと周囲から言われる始末。
そんな時に出会ってしまったのだ。
彼を真っ直ぐに見つめて、彼の胸板をトントンと軽く叩いて、私の上から降りて行く彼を見て上体を起こした。
ワンピースのチャックを下ろして、スルスルと全てを剥ぎ取っていく。
彼には少しみすぼらしい体付きに見えているだろう。
彼との年齢差を考えるとやはり、私の体も歳を取っているし、お腹の肉も中々落ちなくなってきている。
そのことを気にしながら、ブラとショーツ姿で彼と向き合うと、嬉しそうに笑みを浮かべて私を抱き締めた。
「ごめんなさい…やっぱり我慢できません…先生…」
突然呼ばれた先生呼びに、ふと高校時代の頃を思い出し、恥ずかしくなった。
彼が高校を卒業した年に、私は仕事を退職したのだ。
結婚の約束をしていたこともあって、旦那の転勤に合わせて私も教師を辞めた。
それから数年間はスーパーなどで働いて、ひっそりとした仕事をしていたのだ。
それがまさか目の前の彼と出会うなんて。
私を強く抱き締める彼がプチッとブラのホックを外してきては、そのまま下に手が伸びていった。
背筋を走っていく指先に、ピクンピクンと体が快感を感じ取って僅かに震えてしまう。
ショーツの中に指が滑り込み、ぐにっとわざと乱暴に揉んでいるようだ。
その度にクニクニと左右に膣も収縮してしまい、早く早くと彼を求めるようにヒクつき始める。
彼が触れやすいように腰を少し浮かせて、彼の肩に額を押し付けると、臀部を撫でていた手がしっかりと膣の割れ目に触れた。
「ひぅんッ…も…濡れてるからッ…ねえ、おねがい…ッ我慢できない…ッ」
「可愛いですね…だけど、もう少し中を楽しみたいなって…」
困ったように笑って、額にキスをしてくれた彼の言葉に、顔に熱がこもる。
彼と私の間で既にズボンを押し上げている股間に視線を向けた。
カリ首の張った陰茎が、膣の入口を引っ掛けながら行ったり来たりすることを想像しただけで、キュンキュンと下腹部が強く疼いた。
あの感触がたまらなく好きで、ジワジワと膣内から溢れ出てくる愛液。
彼が膣の割れ目をなぞった瞬間に、ふと指の動きが止まる。
「…ッ…やっぱり、もう我慢できない…ッ…」
ゴリュッと中に挿入された2本の指に、一気に快感が体を駆け抜ける。
「ひぐッ、うんッ!あ、ぁッ!な、にッ…どして急にッ…!」
カリカリと腟内の上を引っ掻かれてしまえば、すぐに良い所を掠めて、堪えきれずに彼の肩に強く額を押し付けた。
久しぶりの強い快感は体に今まで感じたことのない衝撃を走らせる。
たった2本の指を畝ねるように締め付けてしまい、恥ずかしさが込み上がる。
荒い息を何度も吐いても、落ち着かない呼吸に恐怖心を覚えて、彼の肩に額を擦り付けるように体をビクビクと跳ねさせた。
「んぐッ、ひゃうッ、ん、んあぁッ、ぁぁッ!」
「…本当にいつもよりびっしょりですね。これなら奥まですんなり入りそうですね、先生」
耳元で囁かれれば、それだけのことでも敏感な体は簡単に快感を拾ってビクンと大きく体を跳ねさせる。
は、と熱い吐息を吐いたのが聞こえた瞬間、下腹部からチャックを開けるような音が聞こえ、視線を下に向けると、タラタラと先走りを垂れ流す陰茎が目に入った。
ビクビクと震えながら天を仰ぎ、血管でさえも脈打つように動いて見えた。
若々しい陰茎が透明な先走りを先端から垂れ流している光景に、喉を鳴らさずにはいられなかった。
そのまま腰を浮かせた状態で、私の膣の入口にぴったりと押し当てられた。
「久しぶりで…堪えきれなくて…すみません」
囁くように聞こえた言葉に、意識を取られた瞬間に、ゴリッとあっけなく奥をその太い陰茎で貫かれたのだ。
「ひぐッ、うぅ、んあぁッ!」
堪えきれない喘ぎ声が喉から溢れて、早急に最奥をゴリゴリと突き上げられた。
肉壁を押し広げながら、突き上げられる感覚に首を横に振って、快感を逃がそうとした。
しかしそんなもの気休めにもならず、子宮をグニグニと押し上げてくる陰茎の感触に、背を仰け反らせて喘ぐことしかできなかった。
ビクンビクンと体を跳ねさせながら、膝立ちの状態で突き上げられれば、いつもとは違う場所を掠めていくのが堪らなかった。
「や、やあッ、!いやぁッ!そ、そこぉ、ぉんッ…だめだめぇ、ッ!きもち、いぃ、ッ!きも、ちぃ、のぉッ、んぉッ、ぁッあッ、!!」
体を反らし、よりいっそう大きく体が痙攣し絶頂を迎えた。
しかし彼の腰が止まるはずもなく、キュンキュンと強く中を締め付ける度に腰を突き上げる速度も上がる。
それが嬉しくて故意的にキュンキュンと膣内を締め付けると、「コラ」と咎めるような困ったように笑う声が聞こえてきた。
「まった、くッ…あなたって人は…ッ、は、ぁ…ッ、もう…でそう…だッ…」
ギリッと強く歯を噛み締めるような音が聞こえ、子宮を突き上げる速度も上がっていく。
ゴリゴリと子宮を強く押し上げられる感覚に、腰が痙攣し、連続して絶頂を迎えてしまった。
それでも早くなる突き上げに、舌を突き出して背を仰け反らせる。
「いやぁッ、やッ!は、やいぃッ、だめッ、ダメぇッんぐッ、あぇッ、あぅぅぅッ!!」
体を痙攣させて、より一層強く膣内を締め付けた瞬間。
陰茎が大きくビクンと脈打ち、トプトプと精液が膣内に吐き出された。
タプンッと下腹部から聞こえてくる水音に、うっとりと下腹部を撫でる。
掻き出すには勿体なくて、キュウッとまだ萎えていない陰茎を強く締め付けた。
すると、今度は体をベッドに押し倒されて、深々と挿入される陰茎にまた背を仰け反らせる。
「一ヶ月分の俺の精液…しっかりと子宮で受け止めてね…?」
嬉しそうに笑みを浮かべて、私の下腹部を愛おしげに撫でる彼の手に重ねて、期待に応えるように笑みを浮かべるのだった。
コメント