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見返りはきみでおねがい
「おい、だいじょうぶか?」
向こう側から声を掛けてくれた上司の声に、彼は静かに笑みを零した。
「ええ、大丈夫です。もう少ししたらそちらに戻りますので」
「そうか?なら、無理するなって伝えといてくれるか」
彼は何食わぬ顔で穏やかに返事を返しつつ、腰をパチュッと強く打ち付けてきた。
「んぁッ、んぶッ…」
まだ上司がいるかもしれない状況だというのに、私の足を抱えながら最奥を突き上げてくる陰茎に腰を震わせた。
声を押し殺しながら、彼の首に腕を回し必死にしがみつく。
いつも澄ました顔で、仕事を難なくこなすこの男が気に入らなくて、毛嫌いしていたはずなのに。
どうして激しく中を突き上げられる度に、膣内は畝り、彼のモノを強く締め付けてしまうのだろう。
便器の中へと滴り落ちる愛液か、精液かも分からない体液がビチャビチャと水音を立てる。
そんな些細な音さえも恥ずかしさを感じて、片手で口元を抑えて、声を押し殺す。
ちゅ、ちゅっと愛おしげに額にキスをされ、嫌悪感を滲ませる。
何が悲しくてこの男とこんな公然の場で欲に溺れなくてはいけないのか。
額を拭うように手で擦ると、困ったような表情で、私を見つめる彼と視線が交わる。
「そこまで嫌がらなくても良いだろ?もう受け入れてるんだから覚悟してよ。それに忘れた訳じゃないだろ?」
「んひッ…んんッ、!うるさッ…」
口端を上げてさも楽しげに笑う彼に、唇を噛み締める。
皮肉や文句を彼に冷たく言い放っても、言葉を遮るように深い所から浅い所まで一気に引き抜かれ、バチュンッと強く突き上げられる。
甘い快感から強い衝撃に代わり、情けなくも甲高い喘ぎ声が鼻から抜けて、彼を楽しませてしまっていた。
狭いトイレの中では、激しく腰を振ることができないせいか、奥ばかりを執拗に突き上げられて、何度も喉を仰け反らせる。
熱い息を吐き出しても快感を逃がすことができなくて、執拗に最奥ばかりを突き上げられれば、何度も絶頂を迎えてしまう。
屈辱だった。
悔しさで唇を噛み締めても、彼が私の唇を何度も労るように舐めていた。
「ほら、そんな怖い顔するなって。もっとリラックスしてさ。中だってこんなにキツく締め付けちゃって苦しくないの?」
「だ、まってッ…!これはただの…しゃ、れいなんだからッ、んんぅッ!」
「はいはい、謝礼ね。ホント強がっちゃって。別にもっとよがっても良いのに」
残念そうな顔で私の顔を覗き込む彼に、小さく舌打ちをした。
あの時のミスは確かに私のせいだったが、それを彼も一緒に被る必要はなかったはずだ。
それをなんであの時、上司に怒られる私を庇ったのか。
営業成績はいつもトップで、女性からも絶大な人気を誇っていて、将来を有望視されたような出来た男に庇われたのが気に入らなかった。
澄ました顔で、簡単に甘い言葉で女性達を虜にする彼が、私は大嫌いだったのに。
こんなことならあの時、お礼なんて聞かなきゃ良かった。
後悔ばかりが頭をぐるぐると駆け巡る。
それでも気なんて紛れることはなく、子宮口の手前を激しく突き上げて来る彼に、唇を噛み締める。
強い眼差しに気づいたのか、彼は熱い息を吐きながらゴリッと少し強めに子宮口を突き上げてきた。
「ひぐ、ッんぅ!?」
「そんな怒った顔するなって。もう少しで終わるからさ。安心しなって」
そう言って何度中に吐き出されたことだろう。
確かにお酒を飲んでいたが、それが体に合わなかったのか酔いが回るのが早くて、トイレに駆け込んだのは本当だ。
けれど、トイレから出ようとしてまた中に押し込まれるなんて誰が予想できただろうか。
押し込められた個室の中で、こんな破廉恥な行為を要求されて、呆気なく中イキされて公開処刑のような気分だった。
は、と荒い吐息を吐いて、腰を更に深く進めてくる感触に、情けない声が漏れそうになって、強く唇を噛み締める。
「ここ…気持ち良かったんだな。ならもっと突いてやるからさ、そんな唇噛み締めるなって…痣になったらどうするんだ」
「うそ、ッつ…きぃッ、んぅぅッ!も、出、るってッ…んん!言った癖にッ…!!」
「悪い悪い、早く終わりたいんだけどこんなに可愛く締め付けられたらさ…止められないでしょ?」
嘘つきと、声を張り上げたくても、喉から出てくるのは甘い喘ぎ声だけだった。
誰かがトイレの前を通れば一溜りもない。
歯を食いしばりながら、中を激しく突き上げてくる彼の陰茎を締め付けないように意識する。
しかし奥をゴリッと強く抉られてしまえば、喉からは上擦った甘い声が零れて、更に強く陰茎を締め付けた。
「ッ、ひぅぅッ…うそ、つ、ッきぃ、ぃッ!い、じわる、しない、でぇッ、んひぃッ!!」
「ほらほら、声出ちゃってるからさ。俺が口で塞いであげようか?それとも今中で埋まってるやつで塞いであげようか?」
下品極まりない言葉に、快楽に耐えながら「最低」と呟いた。
まるでその言葉がご褒美のように、腰を突き上げる速度が上がる。
張り詰めた息を深く吐き出すように、ググッと腰を突き出して、深々と陰茎を膣内に埋めてくる感触に、首を反らし声を押し殺す。
ビクンッと大きく脈打った陰茎が、中で激しく揺れて、下腹部に振動が伝わってくる。
肉壁に陰茎で叩かれているような振動に耐えきれずに、歯を食いしばり絶頂した。
もう終わりだ、これで終わりだと言われて何度出されたか数え切れていない。
「は、ぁッ、はぁッ…なんだよやっぱり気持ち良いんじゃんか。こ、んなに、ん…ッ、締め付けてさ…」
「ひ、ッ、ぐッ…ぅぅッ…うるさッ、う、ぅ、るさぃッ…!」
「そんな怒るなって。少しからかっただけだろ?」
中を突き上げられる度に、体が快感を拾って震えてしまうことに、腹が立って仕方なかった。
悔しいはずなのに、子宮口を突き上げられる度に愛液がポタポタと便器の中に落ちていくのが、どうしようもない恥ずかしさに駆られる。
唇を噛み締めて、痙攣してしまう腰を止められなくて自然と目には涙が浮かび始めた。
ぼやける視界の中に広がる、彼の目がうっとりと細められていることに気付く。
どうして自分にそんな表情を向けるのだろう。
外面の良い彼の心情など分かるはずもなかった。
今まではただの同僚というだけの関係だったのに。
こんな淫らな行為をするなんて。
ボロボロと溢れ出てくる涙に、流石の彼も焦りを見せた。
「お、おい…何泣いてるんだよ。泣くなって」
「あん、たがぁッ、しつ、こぃッ、からでしょ…ッ、んぁッ」
激しく中を突き上げていた速度が落ちて、涙で濡れる頬を優しく撫でてくれた。
その表情はやはりどことなく、不安そうでいつものからかうような言葉や表情とは、全く別に見える。
焦りを見せた彼がどこか可愛く思えて、ふと笑みが零れてしまう。
あれ程嫌がっていたはずの、彼を可愛いと思えてしまうなんて。
その時だった。
キュンと下腹部に甘い痺れが走り、先程とは比べ物にならない快楽が押し寄せてきた。
頭を撫でてくれたり、なんとかあやそうとする彼の手さえも、敏感になった体は快感を拾い始める。
「や、めてッ…そ、んなことし、なぃ、でッ…!」
「は、ッ?なにが、だよ…ッどうかした…ぐッ…おま、きゅうに、締め付けんな…って…」
「して、ッな…そ、なッ、こと…しらなッ…んあ、んんッ…!!」
意識し始めるともう止まらなかった。
ガクガクと震える腰に、便座も悲鳴をあげるように軋み出す。
深々と挿入されたままの陰茎を強く締め付けて、離すまいと畝ねるように蠢き出す。
その感触を彼も感じ取った様子で、私の腰を強く掴み、唇を噛み締めながら苦い顔を浮かべて私を見た。
先程までの強気な姿勢が嘘のように、身震いするように腰が痙攣し、ビュルルと勢いよく中に吐き出される。
最奥に吐き出され続けた精液が、ボタボタと重たい音を立てながら、便器に滴り落ちていく。
グルルと下腹部から音が鳴り、膣内に収まり切らなかった精液が止めどなく溢れ出てくる。
「んひぃ、ぃッ、んうぅぅッ!」
腰をガクンガクンと前後に震わせながら絶頂を迎え、強く膣内を締め付けた瞬間。
「そろそろ俺達2次会に行くんだが、お前達はどうする?」
そうトイレの扉の向こう側から上司の声が聞こえてきた。
突然の上司の声に、きゅうっと更に強く締め付けてしまい、小さく呻き声をあげて、弱々しく精液が中に吐き出されたのを感じた。
彼は扉の方に小さく舌打ちをしつつも、苦笑いを浮かべた。
「わ、かりました。少し体調がよろしくないらしいんで、家までこいつ送ります」
「おやおや、君がそこまで介抱するなんて珍しいねえ。ま、とりあえずよろしく頼むよ」
トントンと軽くノックされた扉越しに、足が遠のく音が聞こえていき、彼が肩を落とした。
恥ずかしさでどうにかなりそうだった。
締め付けたくなくても締め付けてしまう中で、萎え始めていた陰茎が、徐々にそそり立ってくるのが分かる。
席に戻らなくて良いことを知り、お互いに視線を合わせた。
顔を顰めながらさも楽しげに口端を上げて、嬉しそうに笑みを浮かべた彼の腰の動きが再開された。
「んぐッ、やだッ、…も、いけ、なッ…!」
「もう邪魔する人はいなくなったんだからさ…あともう一回ぐらいここで楽しんでさ、ホテルかどっかで休もうか。そんなトロトロの顔じゃ、一人で帰せないしさ…」
ふと、嬉しそうに笑みを見せた彼に、胸がキュンと締め付けるように跳ね上がる。
どうしてそう思ってしまったのか分からなかったが、確かにもっと彼と楽しみたいと期待している自分がいることに気づいてしまったのだ。
私の額に軽いキスをして、ググッと前傾に体重を掛けてきて、陰茎の先端を子宮口にちゅうっと押し付けてきた。
たったそれだけのことなのに、ビクビクと腰が震えてまた絶頂を迎える。
しかし彼の突き上げる速度が止まることはなく、それどころか余計に早まってきた。
激しく打ち付けられる陰茎から、粘着質な音だけが鳴り響き、トイレ前に誰かいたらなんて考える余裕は既になかった。
声を押し殺しても鼻から抜けていく甘い声を抑えることまではできそうにない。
荒い呼吸を吐き出しながら、子宮口だけを激しく突き上げてくる陰茎が、ビクンと大きく脈を打つ。
顔を顰めて、張り詰めた呼吸を吐き出した瞬間。
「でる…ッ!!」
歯を食い縛り、ググッと質量の増した陰茎からビュルルッと力のない精液が吐き出されたような気がした。
既に膣内は彼の精液で一杯一杯で、とてもこんな状態で外に出れる自信はない。
やっと引き抜かれた陰茎に、栓を失った膣内からはドポドポと白濁とした精液が噴き出すように溢れ出てきていた。
痙攣する腰に合わせて便器の中に零れていく精液を、働かない頭でぼんやりと見つめる。
膣内から止めどなく溢れ出てくる精液を指で掬い取り、見せつけるように指で引き伸ばす彼が笑みを見せた。
「ずっと前から狙っていた奴をやっと抱くことができたんだ。俺はまだまだお前と楽しみたいんだが、お前はどうだ?」
真っ直ぐと私を見つめて、甘えた声で囁かれ、ゾクゾクとした快感が背筋を駆け抜ける。
そんな声に囁かれてしまえば、後は彼の声に酔いしれる他なかった。
そのまま二人で居酒屋を抜け出し、ホテルでもう一戦始めるのは十数分後の話だ。
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