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色白の可愛い系男子がイケメン上司の毒牙にかかる
(あああまずいまずいまずい……)
その日も有住長閑は刻々と迫る定時に恐れおののきながらパソコンを必死に打っていた。
(おかしい、どうしていつも終わらないんだ……)
毎朝スケジュール確認する際は定時に余裕をもって終われる業務内容のはずなのに、いざ始業してみると
「アリスー、ちょっとこれコピーしておいて」
「ありす!先方への手土産今すぐ買ってきて!予算3000円!」
「あーりーすー!プレゼン資料の校正代わりにおねがーい!」
とあちらこちらからとんでもない雑務が降りかかり断り切れずに引き受けた結果……
「あー終わった……無理だ」
定時5分前。まだ半分も終わっていない報告書に情けない声をあげたまま天井を仰いだ。
「何が無理なんだい?」
ボーッと蛍光灯を見つめていると突如視界に現れた顔に、長閑は驚いて顔をあげる。
「わわ、荒巻課長!すみません、ボーッとしちゃって」
見れば目の前に社内随一のイケメンと噂される荒巻庸一が優しい笑みをたたえながらこちらを覗き込んでいた。
「別に。気にすることじゃないよ。気分転換は誰にでも必要だし。それよりも有住の部署、お前以外みんな帰ってるけどどうしたの?」
「あ、いや……その」
鋭い指摘に視線をあちこちに投げる。そりゃ今日は花の金曜日だ。みんな各々予定があって、だからこそ自分に雑用を投げてきたのだろう。
「ちょっと……その、すみません。僕が仕事遅くて」
「違うだろう?」
「え?」
うつむきがちに言い訳を述べるようとすると即座に遮られ、長閑はぽかんと口をあけたまま荒巻を見上げる。
「君がみんなの雑用を買って出ていたのは知ってるよ」
「あ……その」
「有住の優しさはとっても大切なものだけど、使い方を間違えると自分が損をしてしまうよ。気をつけなさい」
「……すみません」
ポンと優しく肩を叩かれ長閑は余計に萎縮してしまう。
「あとどれぐらいなんだ?」
「あ、あと……企画書の仕上げが半分と取引先に提出するプレゼン資料の校正が……」
「企画書は君のものだろう?」
「はい、そうです」
「わかった、じゃあ資料の校正を僕がやろう」
「へ?え、いや、大丈夫です課長!帰ってください!せっかくの金曜日ですし!」
「大事な部下を残して帰るわけにはいかないよ」
そういいながら荒巻は長閑の隣の席に腰掛ける。
「ここ、坂下の席か?なんだこのゴテゴテしたマウスは……」
そう言いながら見事にラインストーンで縁どられたケバケバしいマウスを腫物にでも触れるようにもちあげる荒巻の様子に思わず長閑が吹き出す。
「それ先輩の力作らしいです」
「まったく、こんなことしてないで校正の一つや二つさっさと終わらせろよなー」
そういいながら荒巻は長閑の方をみて優しく笑う。
「すみません、僕がもう少し手早くできていれば先輩の足をひっぱることもなかったんですけど」
「そんなことない。有住はよくやっているよ」
自信を持ちなさい。そう続けられ長閑は思わずほほを赤くして俯く。
「あ、ありがとう。ございます」
「ほら、お前も早く手を動かせ。いつまでも残業してるとまた警備員に怒られるぞ」
気づけば荒巻は既にパソコンを立ち上げ、資料の校正にとりかかっている。
「は、はい!」
長閑も慌てて椅子に腰掛けると勢いよくキーを叩き始めた。
「あーーーー!なんとか間に合った……」
日付も変わろうとする頃。ようやく仕事の区切りがついた長閑は椅子に背中を預け大きく伸びをする。
「お疲れさん。なんとか間に合ってよかったな」
コトンと長閑の額に冷たい缶コーヒーを載せながら荒巻が優しく声をかけた。
「あ!すみません、お金払います」
「いいって、缶コーヒーぐらい」
そう言いながら荒巻も自分の分のコーヒーのプルタブをあけながら隣に腰かける。
「ありがとうございます、ごちそうさまです」
長閑は恐縮しながら幾度も頭を下げると荒巻にならってプルタブをあけ、中身を一口飲んだ。甘ったるいコーヒーの味が疲れた身体に染み渡る。
「すみません、僕のせいでせっかくの週末なのに……課長、予定ありましたよね」
ちらりとフロアの時計を見上げながら長閑は申し訳なさそうに頭をかく。
「いや、別に週末だからって特別予定はないよ」
しかし、荒巻はおかしそうに笑いながら緩く首をふると長閑の方へチロと視線を投げる。
「そういう有住こそ良かったのか?デートだったんじゃないのか?」
「い、いえ!僕そんな彼女とかいないですし!」
「本当に?」
長閑の言葉にズイと荒巻が近寄る。イケメンにプライベートゾーンぎりぎりまで近寄られ無駄に心臓が早鐘を打つ。
「ほ、本当です!か、課長こそ、予定ないって……か、彼女とかいるでしょう?」
社内でもめちゃくちゃ人気ですし、と続けると、荒巻は興味なさそうに唇を尖らせる。
「ふーん……そうなの?俺良くわかんないけど」
「そ、そうですよ!よく女子社員とか噂してますよ!」
「有住は?」
「へ?」
突然わからない返しをされ、長閑はぽかんと荒巻の方を見る。しかし、荒巻はいたって真面目な顔つきで長閑を見つめ返していた。
「有住はどうなの?」
「ぼ、僕ですか?僕は全然!こうやってみんなにアリスってからかわれて……」
そう自虐気味に返すと突然荒巻が長閑の肩を掴み背もたれに押し付けた。
「そのアリスって呼び名、一番最初に呼んだの俺だよな?」
いつもの柔和なイメージからは一転し鋭い目つきのまま自分を見下ろす荒巻に長閑は口をパクパクしてみせる。
「え、か、かちょ……」
「本当は俺だけがそう呼ぼうと思ってたのに、いつの間にかお前を見下す輩に定着して……」
「あ、あの……」
長閑の声が届いていないのか、ぐいぐい長閑の肩を押し付けながら恨み節を続ける荒巻をなんとかなだめようとその腕を掴もうとする。
「ねぇ、どうなの?アリス」
皆から呼ばれる渾名で名を呼ばれ長閑はドキっとする。
「ど、どうって……」
「アリスは俺のことどう思ってるの?」
そう言いながら色っぽい目つきで荒巻に顎を掬われ長閑は口の中がカピカピに乾いていくのを感じた。
「え……あ、あの…」
言葉にならない声を上げ続けていると、突然荒巻が長閑の唇にかみついた。
「ふぐっ!」
中途半端に開いたままだった唇からすぐに荒巻の舌が侵入し、あっけなく長閑の口腔内は侵されその舌は優しく絡めとられる。
「ふっ……ん」
鼻から抜ける甘い声に長閑は羞恥のあまりギュッと瞳を閉じた。
「力抜いて」
こわばる長閑の身体に荒巻が唇を軽く離し、そう囁く。その言葉に少しだけ脱力した途端、足を割られスーツのパンツの上から優しく手で弄られた。
「あっ、か、かちょ……」
「アリス、ちょっと勃ってる?」
クスクスと口元で笑われ息が顎にかかりぞわぞわと刺激が走る。
「そ、それ……は、課長が…さわるから」
「ふーん、俺のせいなの?」
荒巻はそういうとグイッとシャツのネクタイを緩め、今度は自身の膝を長閑の足の間に割り入れた。そのまま器用に膝で長閑自身を刺激しながら荒巻はまた意地悪く笑って見せる。
「でも、反応してるのはアリスだよね?気持ちいいんだ?」
「あっ……そ、…れは、……んっ!」
ぐりぐりと弱いところを刺激され考えるよりも先に身体が反応する。
「俺ならアリスのこと凄く気持ちよくしてあげられるんだけど」
そういいながらまた荒巻は無防備な長閑の唇に深く口づける。
「んっ…ぁ……かちょ…ぉ…」
感じたことのない快楽に長閑は目をとろんと蕩けさせ荒い呼吸を繰り返す。
「大丈夫、俺に全部任せて」
優しくそう囁かれ、長閑は考える間もなく静かにうなずいた。
「んっ……あっ、あんっ!……ひぅっ!」
気付けば器用にシャツの前を開けられスーツと下着は膝まで下ろされたまま長閑は荒巻の腕の中で淫らな声を上げ続けていた。
「アリス、君って本当はすごくエッチだったんだね、さっきから何回出してもすぐに復活するよ……可愛いね」
秘部とペニスを同時に刺激されどこから生まれた快楽なのか判断もつかぬままぼんやりと恍惚の表情を浮かべながら長閑は荒巻の形のよい横顔を見つめた。
「あっ…んぁっ!か、ちょ…僕、もう……」
しどろもどろになりながら限界を訴えるもすぐにそれは深い口づけで打ち消されてしまう。
「そろそろ…俺のも入るんじゃないかな?」
そういいながら荒巻はそそり立った自身のペニスを長閑の秘部に押し当てた。
「ほら、入口がひくひくして俺のを咥えようとしてる」
「あっ…やめ……んっ…ぅ」
「あぁこのまま飲み込まれそうだ……」
鈍い圧迫感に長閑が息を飲もうとすると
「すいませーん。見回りですが大丈夫ですかー」
フロアの奥から見知らぬ人の声が聞こえた。
「!!!」
ビクッと身体を震わせ縮こまる長閑を優しく抱きしめながら荒巻が大きな声を出す。
「あーーすみません。納期前でちょっと残業してまして…ここのフロアは僕が施錠しますから大丈夫です!」
「あ!課長でしたか!それは失礼しました!ではよろしくお願いしまーす!」
荒巻の声に安心したのか、声の主はそれだけ言うとすぐにフロアから立ち去っていった。
「……」
「……行ったみたいだね」
縮こまったままの長閑の背中をあやすようにさすりながら荒巻がそういうと優しく彼の上体を起こさせた。
「あー可哀そうに。小さくなっちゃったね」
「かちょ……」
さっきまでダラダラと愛液をこぼしながら立派に主張していた長閑のペニスはへたんと萎れてしまっている。
「ごめんね、僕がもっと早く気持ちよくしてあげていればよかったね」
そういうと荒巻はヒョイと長閑を抱きかかえ、そのままデスクに浅く腰かけさせた。
「大丈夫。すぐに元気にしてあげるよ」
そういうと長閑の足の間にしゃがみ、優しく彼の小さなペニスを咥えた。
「ひあああっ!!か、かちょ……やめ、きたな……あああっ!」
ジュブジュブといやらしい水音をたてながら器用に陰茎を舐め上げられあっという間に長閑のペニスは元気を取り戻す。それでも舐め足りないのか、荒巻は幾度か激しく口淫を繰り返し、長閑を追い詰めた。
「あっ……あっ、だめ…かちょ、でちゃ……」
腰のあたりがまた重怠くなり絶頂が近くなり自然と腰が動く。その様に荒巻はニヤリと笑うとそのまま口を離し、長閑をデスクにうつ伏せにさせた。
「やっぱり一度は僕のでイッてもらわないとね」
そう言いながら、荒巻は自身を長閑の秘部に押し当てるとそのままグッと腰を押し込んだ。
「ひあっ!」
感じたことのない圧迫感に長閑はひと際高い声をあげる。
「クッ……締まる」
荒巻は低く一度そう呟くとそのままゆっくりと律動を始めた。ゆるい抽挿を繰り返し徐々にその動きを速める。
「あっ、んっ!……あっ、あっかちょ…きもちぃ…」
「あぁ、アリス。可愛いね。ずっとこうしていたいよ」
「あんっ…ひぁ…あ、あ……あ、また、イきそ…」
長閑の言葉に荒巻はクルッと長閑を自分の方へ向かせ、そのまま抱き寄せるとドカッと椅子に腰かけた。
「ああっ!!ふかぁ……」
騎乗位になり、より深いところまで入り、長閑はそのまま上体を弓なりに反らせる。
「長閑、僕でイってみせて」
下から突き上げられる衝動にガクガクと身体を揺さぶられながら長閑は荒巻にしがみつく。
「あっ、んあっ……かちょ、い、いっちゃ…イく…ああああっ!!」
そして荒巻にしがみついたまま吐精するとそのまま荒巻の上で脱力した。
「……ん」
「気付いた?」
どれぐらいの時間がたったのか。気付くと応接室の立派なソファに、荒巻に膝枕をされたまま長閑は横になっていた。
「わ、わ、わ!すみません!」
そういいながら起き上がると腰に酷い違和感を感じドシンとしりもちをついた。
「こらこら、暴れるんじゃない」
そう言いながら荒巻は優しく長閑をお姫様だっこで抱き上げる。
「さ、帰ろうか。長閑」
「あ、あ……は、い…」
いつの間にか名前を呼ばれるようになり、長閑は反応に困り微妙な返事を返してしまう。
「あぁそうだ。これから二人きりの時は和正さんって呼びなさい。課長は禁止だ」
「うぇ…」
二足も三足も飛び越えた展開に頭がついていかず、頓狂な声をあげる。
しかし、あまりに嬉しそうな荒巻の姿に反論する気も起きず長閑もまた静かに笑う。
イケメンな上司の毒牙にいつのまにかかかっていたとはつゆ知らずに……
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