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グリップしても良いですか!?
「で、ラムは昨日渡した仕事は終わってるのか?」
「もちろんです!これですよね?」
きちんと仕事をこなした証を見せたが、エイジ先輩は相変わらずにこりともせずにそれを受け取った。綺麗に切りそろえられた短い黒髪がよく似合っている。俺はなんかしっくりこなくてすぐに髪を明るめに染めちゃうから、黒髪が似合う人って憧れる。それに身長も高くてスタイルがいいから、モデルだって言っても通用しそう。
「ありがとう。もう戻っていいから」
「はい!」
元気よく返事をし自分のデスクに戻ると、隣の同僚であるイトがとんとんと肩を叩いてきた。
「エイジ先輩つれないよな~ラムがこんなにアピールしてんのに」
「まあああいう人なのは知ってるから。てかアピールってなんだよ別にしてないし」
ばしっと肩を叩き返すと、イトは長めのため息をつき、それからごそごそと引き出しを漁り俺の好きな高カカオチョコレートを渡してきた。
「ありがと」
「お前さあ、バレてないとでも思ってんの?」
「何が?」
急にイトが小声になる。耳を傾けながらも、封を切ってチョコを口に放り込む。口の中にじんわりとした苦味が広がっていくこの感じ、たまんないんだよな。
「好きなんだろ、エイジ先輩のこと」
「はああ?」
「見てりゃわかるって。しかもお前、バイク好きのエイジ先輩に憧れて普通二輪の免許を取ったんだろ」
「なんでその噂広まってんだよ……」
「先輩が言ってた」
小さめのクッキーを口に運びながらイトがさらりと口にした。先輩が言ってた?どういうことだ?それって先輩にその話が伝わってるってこと?大量の疑問が一気に頭の中を駆け巡る。
「なんで先輩がそのこと知ってんだよ……」
食べ終えたチョコの袋をぐしゃと潰しても、勝手に手の中で広がってしまう。どうにもうまくいかない。袋を手の中で小さくすることも、先輩にアプローチすることも。
先輩をタンデムに誘いたいと思い始めてからもうすぐ3ヶ月が経とうとしていた。もうそろそろ誘ってみてもいいとは思っているが、誘えない理由はなかなか勇気が出ないから、というだけではない。先輩は、驚くほど鈍感なのだ。誘った時にただバイク仲間になりたいアピールなだけだと思われてしまいそうだが、俺は本気で先輩のことが好きだ。もちろん独身なことだって調査済み。あとはどうアプローチをかけるかだ。
「噂広まるスピードってバイクみたいに速いよな」
「怖すぎる」
今度は俺がはああーと長めのため息をはきだす番。腕を上げて伸びをすると、んんーと小さめの声が漏れる。とりあえず午後からも仕事頑張るか。
ー
7歳下の後輩であるラムは、昔飼っていた犬に似ている。上から注意されるギリギリの明るい茶色の髪とか、声が大きいところとか、動きが速いところとか、どこからどう見ても犬にしか見えない。
家に帰ろうとエレベーターに乗り込もうとした時、ラムがわたわたと走って乗り込んできた。
「先輩そういえば来週の飲み会の店予約しておきました!」
今日もかなり大きい声で俺に報告をしてくる。ふたりきりだったからよかったが、それにしても妙に距離が近い。中身まで犬なのか、きっと誰にでもこういった距離なんだと思う。この癖は昔からなのだろう。
「いつもありがとな」
「いえいえ!あ、あと……」
「どうした?」
いつもはきはきと話しているラムが口をもごもごさせ始めた。あまりにも珍しくてしばらく顔を眺めていると、突然顔を赤らめ始めた。
「ラム、熱でもあるのか?」
手をおでこに当てようとした時、エレベーターの扉が開いた。
「……歩きながら話してもいいですか?」
「もちろん」
「あの……もし、よかったらなんですけど……」
俯きながら歩いている。そんなに地面ばかり見ていたら転んでしまいそうだ。上を向かせるために腕をぐっと引っ張ると、さっきよりも鋭い目つきで見上げ、それからゆっくりと口を開いた。
「先輩、俺のバイク見てくれませんか?」
「今から?」
「明日何も予定ないですよね」
「ないけど……」
「じゃあ決まりですね!」
さっきの顔の赤らみは治まり、近くのタクシーをとめ、俺を押し込んだ。
「いつも電車じゃないのか?」
「早く帰りたいですから」
ラムは早口で運転手に住所を伝え、車は走り始める。ラムは俺を強引に押し込んだくせに、そわそわと落ち着かない様子で手を動かしている。やっぱりなんだか様子がおかしい。熱がないといいけど。10分もかからないうちにタクシーはマンションの前に停まった。
ー
「いきなりかっこいいの買ったなあ」
「いやー奮発しました!毎朝毎晩見ては元気もらってます!」
マンションの下に置いてあったラムのバイクを見せてもらいすぐに帰るつもりだったが、料理作るし着替え貸しますと強めに言われ、そのまま流されて部屋に上がることになった。
料理を作ってる間にシャワーを借りることにした。早めに浴びて出てくると、美味しそうなパスタができていた。
「そういえば先輩ってどんなバイク持ってるんですか?」
「YAMAHAのネイキッドタイプの黒」
「うわー実物見てみたすぎる!」
「今度見せてあげるよ」
最後の一口を食べ終えたラムが、シャワールームの方に歩いていった。それにしても俺よりも小さいラムの服はぱつんぱつんだ。暑いし今すぐにでも脱いでしまいたい。でも後輩といえど人の家だ。ぐるぐると頭の中で考えていたが、結局下着以外脱いでしまうことにした。
シャワーを終えたラムと一緒にカーペットに座り、冷えた缶チューハイを飲みながら再びバイクの話をしていると、突然さっきみたいに赤い顔で、鋭い眼差しを向けてきた。
「どうした?また顔を赤くして、もう酔っ」
「先輩、俺と一緒にタンデム乗れる仲になってくれませんか?」
あまりにも突然のことで、タンデムが二人乗りバイクのことであるとすぐ判断ができなかった。それならいつでも乗れるだろう。何をお願いすることがあるのか。
「……仲、といっても、もうそういう仲だろう?同じ会社にいる時点で仲ならもう」
「そういうことじゃなくて!」
缶をローテーブルに強めに置く音が響く。
「俺と深い関係になってくれませんかって意味です!」
「深い……?」
「あああもう!好きなんですよ先輩のことが!付き合ってほしいです!」
後輩の家に上がったら突然告白をされてしまった。しばらく無言の状態が続き、気まずくてチューハイを口に含み、口を潤す。
「……それは、そういうこともするってことか?」
「セックスですか?したいです」
「素直だな……」
男と付きあったことはないが、ラムに告白された瞬間も不快な気持ちにはならなかった。ただ、性行為できるかどうかはまだわからないし、無責任にいいよとも言えない。
「俺、男とヤったことないし、」
「付き合ってくれるってことですか?」
「まあ、いいけど……でもセッ」
「心配しないでください絶対気持ちよくします!」
「ちょ、ちょっとラム……!」
そのままふかふかしたラグが敷かれた床に押し倒され、パンツを脱がされる。もうパンツしか履いてないから俺だけ全裸だ。上に乗っかってきたラムは唇に軽くキスしたかと思うと一旦俺の身体からは降り、脚の間に顔を埋めてきた。
「ちょ、ラム……」
まだ萎えているちんこを手で扱きながら上目遣いでこっちを見ている。やばい、不覚にも可愛いと思ってしまい、一気に硬さを増してしまう。
「先輩俺の上目遣い大好きですもんねえ」
「……っ、ラム、うわっ!」
「これ、グリップしていいですか?」
「えっ」
「握って気持ちよくしていいですか?」
「い、いいよ……」
ちゅ、とちんこの先端に口付けられたかと思うと、そのまま一気に咥え込まれた。ただ握られるだけじゃなくて、舐めながら握られるって意味だなんて、想像以上のことに興奮してしまっている自分がいる。
「やば……気持ちいい……」
ぬるぬるとした唾液に包まれ、じゅぶじゅぶと音を立てながら吸引されていく。突然のことに反応しないと思っていたちんこが、ラムの小さい口の中でどんどん大きくなっていき、その興奮度合いを伝えてしまっている。カリ首のあたりが弱いことを見抜かれ、そこを重点的に口の中で舐められていて、そのたびに低い声を漏らしてしまう。上の方は強く吸引され、下の方は唾液まみれの手で扱かれていて簡単に限界がきてしまいそうだ。
「ら、ラム……そろそろ……」
口から離させようと頭に手を伸ばしかけた時、ちょうどじゅぶっと音を立てて離してくれた。
「じゃあ次は入れましょうね」
「え、俺、に……?」
「まさか。ここにですよ」
そう言ってラムは大きく脚を広げ、秘部を見せてくれた。そこは簡単に指が入ってしまいそうなくらいに広がっている。
「さっき、ヤるんじゃないかと思って自分で準備してきたんです」
「ほ、ほあ……」
「ベッド、行きましょ」
腕を引っ張られて立たされ、ベッドまで歩かされる。再び仰向けにされた俺の上に乗っかったラムが手早く俺のちんこにゴムを被せ、ゆっくりと俺のちんこを自分のなかに入れ始めた。
「やっ、べ……」
今までに体験したことのない締め付けに、まだ動いてもいないのに頭がくらくらしてくる。根元まで入り切ってすぐ、ラムが上半身を倒して抱きついてきた。
「嫌じゃないですか?先輩」
「……想像以上に良くて、何が何だか」
「よかった。じゃあ動きますね」
上半身を起こしたラムがゆっくりと上下に動き始める。
「ぁあっ、あ……先輩、のっ、おっきい……ッ!」
甘ったるい声を上げながら、全部持ってかれてしまうんじゃないかと思うくらいの強さで締め付けられる。もうあっという間にラムの虜だ。身体から好きになったっていい。どうやってグリップ、つまり関係性を構築したっていいだろう。
「ぁあああッ、せんぱいっ、せんぱいっ……すきっ、」
「……っ、俺も、好きだ、ラム」
どんどん激しくなっていく動きに、息が荒くなっていく。そのまま下から軽く突き上げると、よりいい声で鳴きながら自分のちんこも弄り始めている。
「ああっ、せんぱ……っ、俺、イっちゃ……っ!」
「俺も……出るっ!」
びちゅっと俺の腹にラムの精液がかかった瞬間、俺もラムのなかで爆ぜた。ラムがゆっくりと俺の身体から降りてきて、背中に抱きついてくる。
「先輩……来週にはタンデム乗りましょうね」
「ああ……」
ふわふわとした声が耳に流れ込んでくる。それがあまりに心地よくて、俺は簡単に眠りに落ちていった。
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