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不倫

サウナでの密かな逢瀬

 夫が、自宅の近くの銭湯にあるサウナに誘ってきた。「最近流行っているから」という理由だけで。私は、元々汗をかくことがあまり好きではなかったので、断ろうとしたが「せっかくの機会だから。明日から出張で一ヶ月顔が見れないから。」と、珍しく食い下がる夫に絆され、銭湯に向かうことにした。

 近所の銭湯は、トラブル防止のために混浴を禁止したようで、夫は心底残念そうに、男湯の暖簾をくぐっていった。

 夫とは高校生の頃からの付き合いで、大学生になってから本格的に付き合うようになった。お互いこの地元から一度も離れることなく、籍を入れている。この狭い田舎町では噂話もすぐに広まるから窮屈ではあるけど、元々浮気なんてするつもりもないし、私にとって、浮気などとは無縁の生活を送っていたはず。だった……この暖簾をくぐるまでは。

 学生の頃から何度かお世話になっていた銭湯の女湯は、リノベーションしたばかりなのか、あの頃の記憶よりは綺麗になっていて、ある意味オシャレにも見えるサウナ室まで出来ていた。今回の目的のサウナに入るためにも、まずは軽く身体を清めてから入ろうと思い、持ってきていたボディーソープにシャンプー、コンディショナーで軽く身体を洗う。

 結婚してからというものの、家事や仕事の両立が難しく、なかなか自分の時間を作れずにいた。そのため、伸ばしっぱなしとなっていた髪の毛は、枝毛や切れ毛が多く、自分でもびっくりするくらい髪の毛が指に絡まる…。

(もう少し仕事が落ち着いて、夫も家事を手伝ってくれれば、すこしでも自分の時間が作れて髪や肌のケアができるのに…)

 そう思いながら、絡まる髪の毛に無理やりコンディショナーを馴染ませて洗い流し、サウナ室へと向かう。

 むわりとした熱気に独特のにおい、そこには数人の女性が、サウナ室に備え付けられている椅子に座って、汗を流していた。そこにいる女性たちは、私よりもはるかに年下に見えて、少しだけ恥ずかしくなった。こんなおばさんの、たるんだ身体をじろじろと見られないかと不安にもなったが、そんな気持ちに蓋をして、一番端の席に座った。
 
 初心者のサウナの適正時間は五分程度らしく、早く五分経たないかと、チラっと時計を確認したが、まだ一分しか経ってないと絶望した。

(こんなに肌つやのいい娘たちに囲まれて、日々の生活に疲れきったおばさんは、いたたまれなくなるに決まってる…!!)

 すると、真横に、今時珍しい烏の濡れ羽色の髪色をしたロングヘアの女性が座ってきた。私の隣に座らなくてもいいくらい、他にも席は空いているのに、一体どうしたのだろうか…。

「あの、お姉さん……このサウナに来るの初めてですよね?」

「お姉さんって……私、そんな歳じゃないわよ?」

 大学生くらいに見える女性の言葉は、お世辞にしてもやりすぎだ…私はもうすぐ四十に両足を踏み込む年齢だというのに。

「年齢は関係ないですよ。」

「……そう、ねぇ……この銭湯に来ること自体が久しぶりね。昔はよく来ていたのだけど。」

「私、よくここに来るんです、でも貴女みたいに綺麗な人、初めて見るからどきどきしちゃって。」

 日々の疲れでくたびれた共働きの主婦に言うには、お世辞にも程がある。

「お世辞じゃないです!」

「……声が大きいわっ。」
 
 はっとした表情で頬を赤く染める彼女。私は、彼女くらいの年齢で、夫は結婚した。今思えば早すぎる結婚だったと思うし、もっと遊んでおけば良かったと思ったが、それはもう仕方のないことだ。別に、今の夫に不満があるわけではない。ただもう少し違う選択をしていたら、人生変わっていたかもしれない、と思うだけだ。

「ご、めんなさい……その…あの…」

「何か用?そろそろ出たいのだけど。」

「あの、また、ここに来ますか?」

「……さぁ?夫の気分次第かしらね、彼が行こうって言うなら、多分来るわ。」

「…待ってますから!明日の十九時に、また来てくださいね。」

(不思議な子、こんなおばさんを捕まえて何をしようと言うのかしら)
 
(……面白そうだから明日その時間に行ってみようかしら)

 なんて思ってしまったのが、この関係の始まりだ。
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 無理難題を言う上司に押し付けられた仕事を片付けた私は、自宅に帰宅する経路にある銭湯の前を通りがかる。

(そういえば昨日、彼女と約束をしたんだっけ…)

 軽く汗を流してからサウナに入ると、そこには、昨日話した、烏の濡れ羽色の髪の女しかいなかった。彼女は扉の開く音でこちらを振り返ると、ぱあっと顔を輝かせ、犬のようにこちらに向かって走ってきた。

「お姉さん!来てくれたんですね!」

「……お姉さんじゃなくて、悦子って呼んでくれないかしら。」

 お姉さんって歳じゃないから落ち着かないわ、と付け足すと、嬉しそうに顔を綻ばせて「悦子さん」と呼んできた。そんな彼女の名は「詩織」。現役の女子大生で、悩み事を抱えており、サウナで気分転換しようとしたら、たまたま私が入ってきたらしい。

 私には、詩織さんが何を悩んでいるのかわからない。けれど、少しでも気が晴れるなら聞いてあげたい。

 だからこうやって偶然を装い、ほぼ毎日、好きでもない銭湯のサウナに通っては、詩織さんの話を聞いている。

 その話によると、彼女は近所のコンビニエンスストアで、アルバイトをしているそうだ。こっちに引っ越してきたものの、周りには大学生が暇つぶしに使えそうな施設がなにもないから、気晴らしに、とサウナ通いを始めたのだそう。そんなある日、偶然サウナ室の隅で居心地悪そうにしている私を見かけて、声をかけたらしい。

 見られていたのは恥ずかしいけれど、それがきっかけで知人が増えたことは嬉しいことだ。最近まではずっと、家と職場の往復だけで、遊ぶ時間もなかったのだ。ひたすら上司に頭を下げ、家事を手伝わない夫に内心腹を立てながら、家事をして寝て…と単調で、ストレスの溜まる生活を送っていた。だから、今となっては、このサウナで詩織さんと会うのは、私の唯一の癒しになっているのだ。
 
 あと一週間で夫が帰ってくる。そんなある日、詩織さんから、とある話をもちかけられた。
  
 後から思えば、これが私と彼女の関係の分岐点だったのだけど…この時の私は、なんだろうと思いつつ、彼女の話を聞いて、頷いてしまった……

「三日間だけでいいから、恋人になってほしい」というお願いに。

 なぜ三日間なのか、同性でもいいのか、と聞きたいことは山ほどあったのに。それを聞くこともなく、なぜ頷いてしまったのだろうか。

 一日目は手を繋ぐだけ、二日目は抱きしめるだけ、そして三日目は優しく、胸を揉まれた。

 それだけならよかったのに…。

 長い間、夫との性的な触れ合いはなかった。さらには、激務に追われ、性的な事を忘れて過ごしていたのもあってか、それだけの触れ合いで、私の身体は「待ってました」と言わんばかりに過敏に反応してしまったのだ。次の刺激を強請るように、全身に甘い痺れが走る。

「悦子さん、感じてます?」

 誰がいつ入ってくるかもわからないサウナの一室で、戯れのような接触に性的興奮をしていることを、年下の彼女にからかわれているような口ぶりに、顔が熱くなった。

「……ここから出て、私の住んでるアパートに行きませんか?」

**

 大学から近い方がいいから、と親を説き伏せて引っ越してきた街には、なにもなかった。学友から、大学近くの銭湯にサウナが出来たらしい、と聞いて初めて行ってみたら、サウナ室の隅に、ほどよい肉付きの熟れ頃の女性が、居心地悪そうに座っていた。

 正直に言うと、かなりタイプ。

 少しだけ筋肉のついたふくらはぎに、むちっとした太もも。お腹の肉もうっすらついていて、かつ、少したるんだ胸と谷間にある、色素の薄いほくろ。そして、やわらかそうな二の腕にすらっとした指……と視線をたどらせていると、左手の薬指に指輪を付けているのを見つけた。既婚者だと思うと、余計に興奮してしまって、気がついたら声をかけていた。

 そんな女性との会話から、夫が出張に行っていることを知る。きっと性生活は、上手くいっていないのだと踏んで、わざと愛撫するように胸を揉んだら〝びくんっ〟と今時のアダルトビデオでもそんな反応をする女優はいない、と言いたくなるくらい過剰反応していて、とても可愛く思ってしまった。

「んん…あぁっ!や…、やめっ……」

「やめます?ここ……すごい濡れてますけど。」

「ひっ…そこっ…あああんっっ」

 夫がいるはずなのに、まだ綺麗な桃色をした割れ目を指で開いて、ぷっくり赤くなった豆を優しく撫でると、簡単に愛液が漏れ出てくる。可愛い反応に嬉しくなって、溢れた愛液をすくいとった。ねとねとと糸を引く様子を、この体液を出した本人でもある悦子さんに見せつける。

「な…!それ、やめてっ……!」

「……ねぇ悦子さん、我慢しなくていいんですよ?」

 私は、付き合うなら女性でも男性でも構わない。しかも、この前セックスまでした彼女にフラれたばかりだった。その彼女に使っていたペニスバンドを取り出して、身につける。

「これ、本物とは違うんでしょうけど……欲しいんでしょう?」

「あ……」

 サウナにいた時よりも顔を赤くして、それでも欲が隠しきれていない表情のまま、ペニスバンドを見つめる悦子さんは、蚊の鳴くような声で「欲しい」と、一言だけつぶやいた。

「あああんっだ…だめええええ!!」

 熟れきった果実に、指を無理やり押し付けて、薄皮を破いた時のような音と共に、悦子さんの歓喜の悲鳴が部屋に響き渡る。薄皮の下にある、ぐずぐずになって溢れる、果実の果肉をかき分けるように、偽物の男根を無理のないように、ゆっくりと押し込んでいく。

 男根は根元まで、ずっぷりと悦子さんに埋め込まれてしまった。

 ぱくぱくと打ち上げられた魚のように、口を開閉する悦子さんの唾液で、艶の出た唇を奪って腰を引く。すると悦子さんは、むっちりとした足を私の腰に回して、離れないようにとホールドしてくるのだ。
 
 欲に素直な年上の女性は、正直私の好みだ。多分こうしてほしいのだろうと予想を立て、一気に腰を打ち付ける。もちろん届く範囲の最奥を狙って…。

「〜~~っ!!」

 目を潤ませ、もっと!と強請る人妻を良がらせるのは、気分もいい。多分きっと、彼女の夫もそういう気持ちを持っていただろうに。なぜ熟れて食べ頃の彼女を放ったらかして、長期の出張になんて行けるのだろうか。不安になったりしないのかな。

「ねぇ悦子さん、貴女がよければまたこうやってセックスしませんか?」
 
 お互いセックスしたくなった時は、サウナに行って、相手を見つけたらこう言えばいい。

「この後お茶でも飲みませんか」と。

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エロガタリー事務局

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