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僕の彼氏は俺様イケメン
「あッあっあっ……んっやぁあ……あぁあぁぁッ……」
後ろから腰を掴まれて、激しく突かれ、前立腺を掻かれる快楽とともに思わず鳴いてしまう。
葉(よう)を悦ばせるのは、黎央(れお)の巧みな腰遣いだけではない。
黎央と身体の関係を持ちはじめてから数年間弄られつづけた乳首。
一般男子の平均サイズより肥大し、後孔の快楽に呼応して、ビンビンに屹立してしまっているのだ。
その乳首がシーツに擦れるたびに甘い刺激を感じる。そして、葉の勃起しきったペニスからは、とろとろと透明な先走りの蜜がこぼれていく……まるで粘膜のように。
潤んだシーツに糸を引くペニスが、突かれる振動に合わせて、ブルンブルンと揺れ乱れるさまは、とてもいやらしい。
不意に、乱暴なほどに、打ちこみのスピードが速くなる。抜き差しのリズムに合わせて、葉の鳴きかたも変わってくる。
「……あァアんぁんあんァんあぁんぁんあんん!」
黎央は、葉の派手な喘ぎを愉しんでいるようだ。ふっと鼻で笑った。
「そんなに気持ちいいのかよ、お前すげーよな、ケツだけで感じまくって。」
「だって……黎央っ……くんが……、僕を、こういうカラダに……」
したくせに──と責めたいのに、気持ち良すぎて呼吸が乱れてしまい、ちゃんと喋れない。唾液を飲み込むことすらできず、葉の口許から伝う涎。
そんな葉を翻弄するように、黎央は、腰つきをスローに変える。ねっとりと蠢く抽送。
葉にとっては、高速で揺らされるピストンで、目の前がスパークしそうな快楽を覚える。けれど、ゆっくりと抉られるような腰づかいも、たまらなかった。シーツをギュッと握って、弓なりに背中を反らす。
「あ……あぁぁ──ンん……っ……!!!」
あまりの悦びに視界がかすんでくる。薄明かりの自分の寝室の光景が、ぼんやりと映る。
大きな声で鳴いていたら、お隣さんに知られちゃうかも……とは思うものの、喘ぎをコントロールできるわけがない。黎央の暮らしている高級デザイナーズの最上階のほうが、しっかりした防音だから、交わるのは黎央の家だけにすればいいのに…。黎央はそんなことは気にせず、ふつうの大学生のひとり暮らしのマンションである、葉の部屋でも抱きまくるのだった。
黎央はスローな抜き差しのペースのまま、ある瞬間、結合が解けてしまいそうなほど、抜けてしまいそうなほどに腰を引いた。そして一気に最奥まで突き戻し、葉はさらにシーツを握りしめて、衝撃に全身をわななかせる。
「やァぁああぁああン……!!!」
竿の全てを挿れたまま、腰をぐにぐにと動かされて、葉はもう目を開けていられないほどの興奮を感じていたのだ。黎央の揺らしつけに合わせて、葉も腰を揺らす。
「やだぁ……きもちいいの止まらないよぉ……助け、て──……」
「ヤってると元気になるんだな、お前。」
なんていいつつ、黎央はちょっと呆れたように笑った。
「最近なんか元気ねーけどさ。」
「……っ、うぅ……」
「今日迎えに行ったときも沈んだ顔してたけど、なぁ、なんかあったのかよ?」
シーツに爪を立てる葉の右手に、黎央が右手を重ねてきた。
葉のバイト先であるパティスリーに黎央が迎えにきてくれることは時々あって、それからどちらかの家に帰ってお泊まりする。今日もそんな、よくある日常のパターンだった。
葉は瞼を閉じる。
「……別に、何も、ないよ……」
「──嘘つくな」
葉から抜けていく、充溢した黎央のペニス。
引き抜かれると同時に、葉は腕を掴まれて、強引に仰向けに変えられる。色白で華奢な葉と違い、黎央はそれなりに筋肉質な身体つきだから、葉を持ち上げたりひっくり返すことなんて、容易だった。
「何年一緒にいると思ってんだ、葉の嘘なんか、すぐに分かるんだよ。」
「ん……っ……」
ちょっと雑な手つきだったけれど、黎央は葉の口許の涎を拭ってくれた。それから、親指で葉の唇をなぞってから、ディープキスを仕掛けてくる……濃密な舌の蠢きを受け入れて、うっとりと酔いしれる葉。お互いの唾液を混ぜて、分け合う快楽と興奮。幼なじみの黎央とは、思春期の頃から数えきれないほどのキスを交わしてきたけれど、こうやって両手の指を絡めながら唇でも繋がるひとときは、いまでも飽きることがなく大好きな時間で、時間が許す限り続けていたくなってしまうほどだ。
でも……葉は表情を陰らせながら、自分から舌と舌の逢瀬をやめて、顔を背けた。
「僕……黎央くんに不釣り合いだよ、似合わない気がする──」
このごろ感じている葉の懸念に、黎央は不可解そうな表情を浮かべた。
「は? 何言ってんだよ……」
「だって、黎央くんは格好良すぎるもん……」
要は苦笑する。黎央は手を伸ばし、そんな葉の頬に触れてきた。大きな手に撫でられながら、葉は胸の内を明かす。
「黎央くんはさ、僕と同い年でまだ大学生なのに。いろいろすごいんだもん……」
メンズアパレル・コスメをプロデュースして販売し、人気を博しているインフルエンサー。同年代の男子からは、ファッションアイコンとして憧れの視線を浴び、女子からは『俺様イケメン』と呼ばれて、キャーキャーと黄色い声を浴びるような存在なのである。今日だって、恵比寿にあるパティスリーからの帰り道、女子のグループとすれ違うとき「あの人、黎央じゃない?」と囁く声が聞こえた。
「僕、小学生のころからお菓子を作るのが好きで……女の子みたいって虐められてたけど、いつも黎央くんが守ってくれた。僕は黎央くんに似合わないだけじゃなくって、ずっと迷惑かけっぱなしで。」
だから、本当に黎央のことを想うなら、大好きだからこそ、離れたほうがいいのかもしれない。キラキラと煌びやかな黎央に相応しい相手は、自分じゃない気がする…。と心の中で思っていた。
哀しく苦笑する葉を、黎央は真剣な表情で包み込むように抱きしめてきた。
「……何言ってんだよ、どれだけお前に救われてきたと思ってんだ──絶対に俺から離れんな。」
はっきりとそう言いきった黎央は、再び葉の唇を奪った。先程のキスよりも力まかせで強引で、熱情を押しつけてくるような舌の抉りだ。激しく口腔を蹂躙されて、葉もしがみつくように黎央を抱きしめ返す。やっとキスが途切れると、唾液の糸を引きながら顔を離していく黎央は、優しく微笑んだ。
「ていうか、離さねぇし。迷惑なんてかかってねぇ。葉は一生俺のそばにいないと駄目なんだ。」
「黎央……くん……」
そう断言されて、嬉しかった。ずっと黎央のそばに居たい…思わずこぼれる本音。
「僕も、だよ……離れたくない……」
「じゃあ、俺に似合わないとか、言うのやめろよ?」
「…………」
それでも、そばに居てもいいのだろうか、と迷う葉がいた。激しく舌を絡めたせいで、充溢を強めるお互いの性器。黎央は葉の両腿に触れて割り開き、ローションを足すと、正常位で繋がる。一時離れた熱い楔が、また戻ってきた嬉しさに抗いきれず、葉は目を細める。ペニスも乳首も勃起させた姿で、頬を染めて悦んでしまう。
「あぁぁあんン──……すごいよぉ……!! 気持ち……い……ッ……!」
「ほら……おまえだって、俺なしで生きられんのかよ、カラダの相性だって、こんなにいいじゃねーか、絶対手放さねえからな──」
「やッ、あっ、あぁあっ、黎央く……ん……」
激しい律動の中で、葉は黎央を見つめる。腰の動きで、黎央は真摯な想いを伝えてくれるのだ。
「俺の家は……おまえも知ってるだろ……家族みんな忙しくて、家に帰ってもいつもひとりだったし、飯は金渡されて外で食ってた。外食とか給食以外で、初めて食べた誰かの作ったものって、葉の作ったクッキーだった。」
「……すごくよろこんでくれ、て……嬉しかった……」
「子どもの頃から、今まで、葉にはすげぇ癒されてきたんだ。」
黎央は葉の乳首をつまんだり、指の腹で撫でたり、弾いたり、ギュッとつまんできたり──様々なバリエーションで悶えさせてくれる。乳輪をなぞられて焦らされるのは、葉の好きな弄ばれ方のひとつ。性癖なんて、知られ尽くしてしまっているくらいだ。
「や……あぁ、あ、あァ……!」
歓喜で喘ぎ、身をよじらせる葉の素肌をすべり降りていく黎央の指先。陰毛を撫でたその手は、選り分けるように両手で玉袋を弄んできた。たまらない快楽とともに生まれるもどかしさ。
「おちん……ちんも……触ってぇ……」
欲求を素直に訴えると、苦笑された。
「はは、触る必要なんてねぇじゃん、今日一度も触ってねぇのにこんなに勃起してんだから。」
「やぁ……ら……!」
黎央の言う通りで、今宵のセックスが始まってから握られたり、自分で握ることもしていない。直接何の刺激も得ていないのに、葉のペニスは勃起を維持し、先走りを分泌し続けている。後孔を愛される悦びや、興奮だけで屹立を維持できてしまっているのだ。
見かねたように、黎央は葉の勃起に触れて、扱いてくれた。犯されるテンポと扱かれるリズムが混じりあって、とんでもなく心地よい至福に包まれていく葉は、咽び、表情を歪める。
「あぁあァん……すごいよぉお……黎……央くんっ……!」
「ずっと俺のそばに居ろよ……葉──……」
腰つきと巧みな淫指で、快楽の極みに追い込まれ、絶頂への階段を昇っていく。夢心地になりながら、黎央の想いを聞いていた。
「俺が頑張れるのも、笑顔になれるのも、隣に居るのがお前だから。」
透明な蜜に濡れそぼるペニスから、手を離される。
「大好きだ──葉」
「……! 僕、も……!!」
2人で揺れながら、何度目か分からないほどにキスを交わす。与え合う唾液。自分は黎央に似合わないから身を引いたほうがいいかもしれない……そんなことを憂うのはもうやめよう、と葉は心に決めた。そして、キスが途切れ、決意を伝えた。
「僕も大好き……だから……っ……黎央君に似合う、立派な人になれるように努力するから──」
「お前はお前のままで良いんだって。素のお前に癒されるんだから。」
強く抱き合いながら、ふたりで同時に辿りつく高み。思いきりぶちまける白濁の滾り。
「あぁぁあァァぁあ──い、いく、イくぅ──……!! あ、いしてる……!」
とてつもない歓喜を味わって、気を失いそうな意識のなかで「不安にさせてごめんな」と謝罪の言葉を耳にした。そして、抱き合ったまま、約束してくれる。
「明日、ペアリングを買いに行こうぜ。それで俺は人前でも絶対外さないから──」
本当に……?と尋ねたかったけれど、朦朧としてしまい、そんな余裕はなかった。唇を震わせるだけで終わってしまう。鼻先が触れそうなほどの至近距離で、そんな葉を見つめていた黎央が、幸せそうに微笑んだ。
葉はわずかな間、夢を見た。今よりも大人になった自分が営むパティスリーと、黎央の営むブティックが隣同士の店舗で営業している、お洒落な街の一角。素敵な未来を眺め、潤んだシーツに横たわる葉も、唇をゆるめるのだった。
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