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BL

ぼくはじめてです

「今、なんて?」

ユウキの手が僕の乳首を掠めた時、やっと言わなきゃいけないことを、口から出すことができた。聞き返され、もう一度同じ言葉を繰り返す。

「ぼく、はじめてです。」

「はじめて?」

ユウキの低く落ち着いた声が、一言発するたび、頭がじんじんする。
もう指の動きにも、声にも、全てに溶かされてしまっているのだ。

25歳になる今まで、誰とも付き合ったことがなかった。
気になっていた人もいたし、告白されたこともある。
だけど、自分から告白する勇気はなかったし、どの人に対しても「何か違う」という気持ちが拭えずにいた。

社内で4つ年上の先輩であるユウキをひと目見た時、この人だと思ったのだ。
深めの茶色い髪が似合う優しい目をした先輩は、いつのまにか僕にとって、大切な恋人になっていた。
付き合い始めてからは、うきうきするような出来事ばかりだったが、それでもひとつだけ、問題があった。
ぼくは付き合ったことはおろか、誰ともセックスしたことがない。

とりあえず「男同士、セックス、準備」と検索をかけ、出てきた記事を見ながら、少しずつ指で後孔を慣らすことから始め、やっと2本の指が入るようになってすぐくらいに、旅行に誘われたのだ。
なんというタイミング…。

付き合い始めて3ヶ月記念日の今日、初めてのお泊まり、初めての夜。
今から、ずっと夢見ていた時間が始まるんだ…。

「リョウ、おまたせ。」

先に大浴場に行き、ホテルの部屋のソファーでぼーっとしていると、ユウキが戻ってきた。
日中はワックスで固めている前髪が、はらりと落ちていて、見慣れない髪型。
なんだか知らない人みたい。

「気持ちよかったね、大浴場。」

「ですね。」

できるだけ、焦ってなんかいませんよ!みたいな顔をしながら答えると、ぼくの隣にどかっと座ってきた
169cmのぼくよりも15cmほど高いユウキは、隣にいるだけで安心感を与えてくれる。

「なーリョウ。」

「なんですか?」

「そろそろ敬語やめて、呼び名以外も気軽に話してくれよ。」

そう言われても、会社の先輩と後輩の立場だ。
なんとかして呼び捨てはできるようにはなったが、まだまだ敬語は抜けそうにない。

「そんな……先輩だし。」

「そうか。」

ユウキは少しの間だけ黙り、それから優しく、背中に手を回してきた。

「じゃあ、タメで話してくれないなら、何にもせず寝ようかな。」

「……っ!」

ユウキの発言にびっくりして、思わず大きめの唾を飲む音を、立ててしまったのだ。
そんな、ユウキとえっちなことしたいの、バレてるなんて。
ここまで時間をかけて、ひとりで黙々と準備してきた。
今日、絶対、ユウキとやらしいことをして、抱き合って眠りたい。
そのために旅行に来たわけじゃないけど、期待していたことが起こらないのは寂しすぎる。

「どうする?」

余裕そうににやにやしているのを見て、頭に靄がかかりそうになるのを、頭を振って阻止する。
タメ、気軽に話す、話せないと何もない……なら言わなきゃ。
覚悟を決めてゆっくり息を吸い、横を向いて目を見て口を開く。

「ユウキ……したい。今からシよ?」

声が震えそうになるのを抑えながら、なんとか口を動かすと、その逞しい腕で潰れるんじゃないかと思うくらいの強さで抱きしめられた。

2人でベッドに移動し、何度も舌を絡ませた。
細かな歯並びも、唾液の味も、自分だけしか知らないと思うと、飛び上がって喜びたくなるほどだ。
舌を繰り返し吸われ、頭がぽわぽわになったところで、慣れた手つきで服を脱がされた。
何も纏っていない身体は、バランス良く鍛えられていて、思わず小さなため息が出てしまう。
ユウキの股間のあたりを見ると、既に緩く勃起していた。
ぼくの身体でこうなっていると思うと、ちょっとだけ誇らしくなった。

肩に手を置かれたまま耳たぶに唇を押し付けられ、それから落ち着いた声で囁かれた。

「全部俺に任せて。気持ち良くなることだけ考えてて。」

ぎゅっと目を瞑り小さく頷くと、肩にあった手がゆっくりと、降りていくのを感じた。
そのまま鎖骨を通り、乳輪を指でくるくるとなぞられる。
なんだか変な感じだけど、だんだんとその指が、乳首を掠めていく。
最初はむずむずとくすぐったいだけだったのに、次第に硬く熱を持っていき、しまいには軽く突起に触れられるだけで、腰を揺らしてしまうほどだった。

「ぁ……あ……ッ」

「だんだん良くなってきた?」

「ん……なんかっ、さっきより……っ」

目がぼやぼやとしてきて、涙の膜が張っていることに気が付いた。唇を薄く開き、はあはあと荒い息を漏らすと、また低い声で囁かれた。

「さっきより気持ちいいね?」

「ひぅっ」

涙がつーっと溢れたと思うと、次々とダムが決壊したかのように溢れてとまらなくなっていく。

「リョウ、どうした? どっか痛いか?」

指を乳首から離され、おろおろしながらユウキが抱きしめてきた。違う、痛くない、もっと……。

「ちがう……ユウキの声、気持ち良くて。」

「声? 指じゃなくて?」

「指もだけど、声……大好きだから。」

「……そうか、ありがとう。」

痛がっていないことがわかり安心したのか、再びユウキの指が乳首に触れた、その瞬間。

「ぼく、はじめてです」

ユウキの指が乳首の上でぴたり、と止まった。

「今、なんて?」

「ぼく、はじめてなんです。」

「はじめて?」

勢い余って敬語になってしまったけれど、今はそんなことは、関係ない。
自分に経験がないことを、大好きなユウキに、ちゃんと伝えておかないと。

「誰とも、したことない?」

「ない……ユウキがはじめて。」

「まじ、か……」

ああ、困らせてしまった。
ユウキは、服の脱がせ方とか全てが手慣れてて、見るからに経験豊富そうだもん。
未経験の恋人とイチからって、すごくめんどうだろうに…。
もう、このまま中断されてしまっても仕方ないかもしれない。

「そうか……」

「や、だ?」

「なんでそうなる。」

「ぁぎゃっ!」

止まっていた指が、ぎゅっと乳首を摘んだ。情けない声が漏れてしまい、口を塞ごうとしたのに、片方の手で、抑え込まれてしまう。

「誰が嫌だって?」

「だって、まじか、って。」

「まじかってそんなの、嬉しい方のまじかに決まってる。」

 そう言ってにやっとしたユウキは、今までで見たことないくらい、一番悪い顔をしていて、思わず身体が震えてしまった。

「そそるよ。好きなヤツのこと、俺色に染められるなんて。」

「ぁ……あっ……ッ」

「まさか後ろ自分でほぐして、準備してたとはねえ。」

「あっ、こそ、きもち……いッ」

「ここだな? リョウの好きな場所は。」

「やぁん……っ、はず、かしっ」

ユウキが持ってきた潤滑ゼリーを指に垂らし、ぼくの後孔に挿入し、中をゼリーが泡立ちそうなくらいの勢いで刺激してくる。
ほぐすというより気持ち良くするような動きで、全ての刺激に身体が大げさなくらい、震えてしまうのだ。

「ほんとに初めてか? こんなに感度いいと、突っ込んだら意識飛んじゃうかもなあ。」

意地悪い口調でそう言われ、ふっ、と耳に息を吹きかけられるだけで気持ち良くて、中を小刻みに締めて細かな快感まで拾い集めてしまう。

ユウキがこんなにもサディスティックだっただなんて。
見た目は穏やかで無害そうな大型犬なのに、中身はどす黒い悪魔みたい。そのギャップにもくらくらしてしまう。
ねちねちと前立腺を攻めてきて、そのたびに腰が、がくがくと震えてしまう。

「ぁ……っもう、もう……ッ、いい、からぁッ」

「なにがいいんだ?」

「もう……っ、ゆびっ、やら、って」

「指やなの?」

嫌だと言えば言うほど、意地悪するかの様に、強く前立腺を押してきて、中がが離したくないと言わんばかりの動きをしてしまうのが恥ずかしい。

「や、らっ……も、やっ」

「じゃあちょっとだけ舐めてくれる?」

「……っ、そんなっしたこと、な、」

「したことないからこそいいんだろ。」

指をじゅぶ、と抜かれ、後孔がひくひくするのを感じながら、ベッドの上で膝立ちになったユウキの前にいく。既に血管が浮き出まくっているちんぽの先端を舌で軽く舐めてみると、それはぶるりと震えた。

「ん……ん……ぅ」

少しだけ口に含み、ぴちゃぴちゃと舌で舐めると、さらに硬くなっていく。時折ユウキのくぐもった色気のある声が漏れて、ユウキも感じているということを教えてくれる。

「ん……む……っ」

舌で舐めたり、軽く吸ったりを繰り返していると、両手で頭を掴まれた。

「もういいよリョウ、ありがとう。」

「よくなかった……?」

「興奮して出そうになったから。」

そういうと、早急にぼくの口からちんぽを抜き、勢いよくぼくを押し倒して、ちんぽにゴムを付け始めたのだ。
余裕のないその動きに、本当に限界が近いことを知らされ、ゆっくり呼吸をして、自分を落ち着かせていく。

「リョウ……入れていい?」

ぼくの太ももを掴み、ぐりぐりとちんぽを押し付けてくるユウキの目を見て頷くと、ゆっくりと中に入ってきた。

「んんっ……」

「痛くない? 太いところあとちょっとだから。」

さっきよりも優しい声に、また涙が出そうになりながら首を振る。さらに奥まで入ってきて、太いところがにゅるりと、全て入ったのがわかった。
ふーふーと息をはいているうちに根元まで入り、温かい手に抱きしめられる。

「大丈夫か?」

「ん……ね、ユウキ。」

「何?」

「いま……ぼく、しあわせ。」

それを言った時の僕の口元はきっと、だらしないくらい緩んでいたと思う。
それでも、幸せだって言葉で伝えたい。ちゃんと伝えられてよかった。

「俺もだよリョウ。愛してる。」

唇に軽く音を立ててキスされ、ゆっくりと中のものが動き始めた。

「ぅあっ……ああっ……!」

さっきまで指でぐりぐりと押されていた部分に、ユウキの硬いちんぽが当たってくる。そして、甘ったるい声が漏れてしまう。
ぼくが声を漏らせば漏らすほど、ユウキの動きは速くなっていく。
自分の声、そんなに好きじゃなかったけど、ユウキのことを興奮させられるのなら、少しだけ自信が持てそうだ。
 
太ももを掴んでいた手がいつのまにか肩に移動していて、覆いかぶさるような姿勢で腰を打ちつけられているのがわかる。
首の後ろに回した僕の手が、ユウキの汗でびちょびちょになっていく。

「はあ……っ、はあ……っ、あっ、もっ……さわ、って」

「いいよ、一緒に出そっか、リョウ。」

上半身を起こしたリョウが腰を動かしたまま、一度も触っていないのにがちがちになっている、ぼくのちんぽをゆるゆると触り始める。
すごく緩い動きなのに、もう出ちゃいそう。

「あっあ……っも、がまんっむりいっでるッ!」

「俺もっ、出すよ、リョウ……っ」

ぶちゅ、と数回に分けてユウキの手を、白濁の液で汚していく。それとほぼ同時に、リョウのちんぽが中で震え、次第に腰の動きがゆっくりになっていった。
中からちんぽを抜き、ゴムの口を結んだユウキに、横から強く抱きしめられる。

「やっと、繋がれたなリョウ。ありがとう。」

こんなに心地いい温もりを知ったのも、はじめて。もう絶対に離れられない。
ぼくの大好きな、ユウキ。
ユウキの背中に手を回し、同じくらいの強さで、ぼくも抱きしめ返す。

「こちらこそありがとう……ずっと一緒にいて、ユウキ。」

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エロガタリー事務局

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