0
終電後の暗闇で
「あ、あのやめてください…」
「え?」
「あの、手が、あたってて…」
「はぁ?」
まただ。
絶対、勘違いなんかじゃないのに…。
「スイマセン…」
なんで私が謝ってるの…?
私は、綿貫実夕(わたぬきみゆ)。
ごくごく普通の、そこらへんにいるようなOLだ。
通常勤務で通勤しているので、行きと帰りは満員電車に乗ることが多い。
人と人との距離が近くなってしまうのも、荷物が当たってしまうのも、仕方ないのかもしれない。
でも、今のって、絶対触ってたよね?
はぁ。
ちょっとげんなりした気持ちで電車を降りて、改札を出る。
まだ水曜日だっていうのに、ヤな感じだなぁ。
ところが、翌日。
またもや痴漢にあってしまうのだ。
やっぱり…。
これって、触られてるよね。
お尻を円を描くように触ってきている。
覚悟を決めて少し振り向く。
嘘でしょ?
昨日と同じ人だ。
「あの、少し手が…。」
「?」
何でしょうか?みたいな顔をされる。
何か言い返そうとしたけど、周りの人が何となく迷惑そうな顔をしていたので、つい言葉を飲み込んでしまう。
確かに、この混雑の中で痴漢だって騒がれるのは、周りの人もちょっと面倒くさいというか、どうでもいいことなんだろう、と思ってしまう。
仕方なく少し体をずらして、痴漢を回避しようとする。
それが良くなかった。
次の日も、あいつと同じ電車になってしまった。
しかも、窓際に乗った私の後ろに、ぴったりくっついている。
その男が周りからの壁になってしまって、完全に追いやられてしまったのだ。
そのせいか、いつもと違って今日は、かなり大胆に触ってきている。
あ、いやだ。気持ち悪い。
「あのちょっと、ほんとに、やめてもらっていいですか?」
小さくささやく。
すると、男から返ってきたのは、意外な言葉だった。
「お前、自分がこんなことされてる女だって思われて、電車乗りづらくなるぞ。」
わかってる。
冷静になれば、悪いのは男のほうなのに。
でも、昨日の周りの冷たい視線を思い出して、なぜか、”痴漢されてるのは恥ずかしい”と思ってしまった。
じっと黙っていると、
!!!
や、この腰に当たってるのって?
少し下を見ると…。
やっぱり、男は興奮したのか、あそこが、立ち上がっている。
ズボン越しに熱くなっている男のアレが、私の腰に押し付けられていた。
あぁ、もうヤダ。
そう思った瞬間。
ガタン!と電車が揺れた。
その拍子に、隣にいた背の高い男の子が私と痴漢男の間によろけて入り込んできた。
「あ、スイマセン。」
パーカー姿の男の人は、私と痴漢男に頭を下げた。
「あ,いえ。」
助かった。
「ちっ!」
痴漢男は、小さく舌打ちをしていた。
次の駅で、私は電車を降りた。
痴漢男と助けてくれた彼を乗せたまま、電車の扉は閉まった。
発車寸前、よろけて入り込んできた彼と目が合った気がして、かるく会釈をした。
土曜日—。
せっかくの休日だったのに、午後から会社に行かなければならないことに。
同じ部署の違う班のミスが、私たちの班の仕事にも響いたとのことで、休日返上で対応した。
お詫びに、とミスをした班の人たちに夕飯をごちそうになった。
翌日日曜ということと、お酒も入って帰りは終電になってしまった。
はぁ、今日はゆっくり座って帰れるな。
しかも、対面シートがある。
ラッキー。
人目を気にせず4人掛けの対面シートに、背中を預けて深く息を吐く。
ここ何日かの心労や、休日出勤、それにお酒の力もあって、私は本気で眠ってしまったのだ。
とんとん。
肩をたたかれる。
「お客さん。」
そう呼ばれて、ハッとする。
車掌さんらしき人が、私を覗き込んで肩をたたいている。
「あ!ごめんなさい!」
ってここどこ?
「終点ですよ。」
「え?」
「終電の、終点です。」
にっこりと笑ってくれる車掌さん。
少し腰をあげて周りを見ると、ほんとに誰もいない。
「あ、あのごめんなさい。」
あわてる私に、車掌さんは、
「お疲れだったんですね。」
と言った。
「一回起こしたんですけど。」
え?
「ぐっすり眠ってらっしゃったんで…。でももうすぐ消灯になるんで。あ、でも鍵は僕が持ってるので、あわてなくて大丈夫ですよ。」
嘘?もうそんな時間?
あわててホームの時計を確認すると、
25時になろうとしている。
「あ、あのほんとにごめんなさ…」
そう言いかけた時、電車内の電気が消えた。
ホームの途中にある事務所のようなところの明かりが、ぼんやり私たちを照らしている。
「大丈夫ですよ。」
あれ?私、この声どこかで聞いたことある…。
「今日は、痴漢に合わなくてよかったですね。」
「あ!」
昨日私を助けてくれた、あのパーカーの人。
「昨日は休みで、たまたま電車乗ってたんですよ。」
私の疑問に答えるように、そういう車掌さん。
「あ、あの、昨日も今日も、ほんとにありがとうございました。」
「いいんです。それより…」
薄暗い車内…。
彼の声が少し近くなった。
「あの痴漢に、どこ触られたの?」
「え?」
「ねぇ。直接触られたりしてない?」
私の隣に膝をついて、私に覆いかぶさる車掌さん。
「あ、あの。」
「ねぇ僕、結構電車乗るから、ずっと前から知ってるんだよ、あなたのこと…、わたぬきみゆちゃん」
耳元で言われてぞくぞくっとする。
「あいつ、まじで許せない。」
車掌さんの手のひらが、私の頬にそっと触れる。
「みゆちゃんにあんな汚らしいちんこ擦りつけやがって。」
怒っている言葉とは裏腹に、私に優しく触れる指。
「ど、どうして…」
「ずっと見てたからね、いつもご乗車ありがとうございます。」
「そ、そんな。」
「だから、痴漢されてるの見て、まじで腹立ったよ。」
話しながらも、ゆっくり私の頬から首に、鎖骨に…、どんどん手の感触が下がってくる。
「でもさ、痴漢されながら、唇噛んで、ほほ赤らめて、うつむいて耐えてる顔見たら、なんかたまんなくて。」
そういうと、私の前に立ち上がって、私の手をとってきた。
「ねぇ、こっち、立って。」
そう言って、ドアのそばに私を立たせる。
「あの顔、あんな男に見せるなんてヤダよ。僕に見せて、僕に感じてよ。」
最後は切なく、かすれた声だった。
ドアの横の手すりに私の手を握らせて、もう片方の手はドアの窓に押し付ける。
背後に彼の気配を感じる。
すーっと、お尻から腰までを指で撫で上げられる。
どうしよう、全然知らない人なのに、こんなことされて…。
ちゅ…。
首に柔らかい感触。
「あぁ。たまんない」
手のひらは、私のお尻を優しくなぞっている。
「ここも触られた?」
腰まで優しくなでていく。
暗くて見えない分、感覚が敏感になってしまう。
車掌さんは、私の首に鼻をうずめている。
息を吸って、私から出る香りを吸い込んでいるみたい…。
「はぁ…」
首にかかる吐息に、ぞくぞくとして、声が漏れてしまう。
「あれ?もしかして感じてる?」
しまった!と言わんばかりに口を勢いよく抑える。
「痴漢は犯罪だからね。でもみゆちゃんが感じてるなら、これは合法かな?」
手がどんどん上がってくる。
それに合わせて私は体をよじる。
その私の反応を見て、車掌さんは、
「…。もしかして、痴漢されたいの?」
そう聞いた後、くるっと私を彼のほうに向かせる。
がしっ!どんっ!
私の肩をつかんで、ドアに押し付ける。
「もしかして、あいつにも感じてたの!?」
急に変わった彼の様子に、体が震えた。
「ねぇ、あの顔は困ってたんじゃなくて、感じてたの!?」
そう問い詰められて、涙が出る。
「ち、違う…。感じて…感じてない…」
涙声で、そう答えた。
すると、また優しい声に戻る。
「ごめん、そうだよね…。怖がらせてごめん。」
そういうと、頬を伝った涙を、舌でなめあげてきた。
「…あぁ」
その感触にほっとしてしまう。
優しく抱きしめられる。
「みゆちゃんをもっと触りたい。」
そういうと、太もも、おなか、肩…ゆっくりと私の体を隅々まで触ってきたのだ。
「さっきまでたくさんの乗客がいた電車でこんなことされてるのに、そんな顔してみゆちゃんエッチだね。」
そう言われてガラスに映る自分を見る。
「いやらしい顔してる。痴漢にそんな顔見せちゃったら最後までされちゃうよ。」
にやっと笑って、そっと近づいてくる。
身体を弄(まさぐら)られて、どんどん火照ってしまう。
「はぁ…はぁ…」
「みゆちゃん、息荒いよ?」
これって痴漢と同じなのに、なんでこんなに感じてるの?
自分でも抑えられない快感に、必死で抗おうとする。
「あっ!」
それなのに、胸の膨らみに手をかけられた瞬間。
体がのけぞってしまった。
「素直でかわいい。」
そう言いながら、ブラウスのボタンが外されていく。
「あっ、だめぇ。」
口ではそう言うけど、体は全く抵抗してない。
ブラのホックが外されて、胸が外気に曝される。
「ここは、触られてないよね?」
そう聞かれて、コクコクとうなずく。
「柔らかい。」
嬉しそうに弾む駅員さんの声。
私の胸は、車掌さんの手に合わせて、形を変えていく。
「あっん…。」
時折先端をかすめる指先が、快感をあたえてくるのだ。
いつしか、それは下半身へと波のように伝わる。
「みゆちゃんこっち向いて。」
再び車掌さんと、向かい合わせになる。
「みゆちゃん、触って。」
車掌さんは、自分のズボンのチャックを下ろす。
待ち構えたようにトランクスの間から、彼のモノが飛び出す。
「あいつのなんか触らなくてよかったね。」
そういいながら、ニッコリ笑う。
この猟奇的な笑顔に、体が泡立つ。
それはどんな感情なのか、自分でもわからない。
「ほら、みゆちゃんのものだよ、触ってしっかり育てて。」
そう言われて、素直に手を伸ばしてしまう。
車掌さんの言葉に、
『あぁ、これからこれが、私の中にはいるんだ。』
と薄っすらと感じ取った。
そして、そっと触れる。
彼がピクッとなる。
「あぁ、いいよ。幸せ。」
恍惚とした表情を見せる車掌さんに、じわじわと独占欲が湧き上がるのを感じる。
痴漢男のは、ほんとに気持ち悪かったのに…。
私の手の中で大きくなっていくソレは、何だか愛おしく思えた。
切なくはかれる吐息に、体の芯から何かが、押し寄せてくる。
私どうしちゃったんだろう。
たまらなくなって、彼の前にひざまづいた。
「っ!みゆちゃん!」
彼のモノを、舌先でそっと舐める。
驚いた顔の彼に、いたずら心が、湧きあがった。
ジュルジュルと、音を立てて、彼の欲望の塊を、口でなぶる。
喉の奥までいっぱいのそれを、歯を立てないように、可愛がる。
「くっ!うっ!みゆちゃん、…!」
苦しそうに歪めた顔に、何だか満足。
「あっ、もう…」
そう言うと、車掌さんは焦ったように腰を引いた。
そして、私をドアの方に向かせ、突き出したお尻と腰を抱きかかえる。
ペチンと、軽くおしりを叩かれる。
「とんだ痴女だな。」
と言いながら、さっきまで私が咥えていたせいで、固く膨張したソレを、私の入り口にあてがう。
「自分もこんなに濡らしちゃって。」
爽やかな笑顔とは対称的に、一気に激しく打ち抜かれた。
「あぁぁぁん!」
突然与えられた刺激に、体が追いつかなくて、あっけなくイッてしまう。
「もしかして、イッちゃったの?」
あふれる雫に、車掌さんは、ハハハと、笑う。
「じゃ、僕がイクまで、たっぷり付き合ってね。」
可愛くて無邪気なその外見からは、想像できないほど淫靡に、私の中を勢いよくかき回してくる。
「ほら、想像して。満員電車の中で、僕に犯されながら、次の駅まで耐えられる?」
「あぁ、あぁ…」
言われて恥ずかしさが押し寄せてくる。
「あれ?今ちょっとしまった?こういうことされて、感じちゃうんだ。」
なんて言いながら、ニヤリと笑う。
「ち、違うの。」
否定するけど、快楽には逆らえない。
「ほら、大きい声出すと、周りに気づかれちゃうよ。」
誰もいない。
なのに錯覚しちゃう。なんでだろう…。
今は満員電車の中で、私は痴漢に…、車掌さんに犯されている、って。
「あぁ、乳首もこんな固くなっちゃって、あそこもスゴい熱くてびちゃびちゃ。」
口にしなくても、その卑猥な音は、静かな車内に響いて、私の耳に届いている。
「あ、あん、車掌さん、もっと…」
もう羞恥心なんて、どこかに飛んでしまった。
何回も絶頂に登らされて、欲望に忠実になってきている自分がいた。
「あぁ、もっとしてあげたいけど、僕ももう限界…」
その言葉と同時により一層激しく打ち付けられる。
パンッパンッと、弾けるようにぶつかる音。
「あぁぁっ!射(で)る!射(だ)すよ!」
「あっ、うん…!あっ!」
「うっ!」
彼が私の背中に白濁の液体を欲望と一緒に、全部吐き出す。
静寂が暗闇にひろがり、しばらくは2人の乱れた呼吸だけが、車内に響いた。
週末―。
仕事が終わったあと、時間を潰してわざわざ終電に乗る。
週末といえども、この辺の終電は、人も少ない。
それでも窓によりかかって、外を眺めている。
「お客様。」
車掌が声をかけてくる。
「これ落ちてますよ。」
さっきわざと落としたミニタオルを車掌が拾って手渡してくる。
「ありがとうございます。」
そう言ってタオルを受け取ると、車掌はあの笑顔で、ニッコリ笑ってきた。
そして一歩私に近づいて、耳元で
「今日も、終点までごゆっくりご乗車ください。」
とささやく。
その言葉に、私の体はまた快感に震えてしまった。
コメント