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痴漢

触れあい場

 この平凡な街にも、とある噂がある。それは「朝六時台の電車には痴漢専用車両がある」というものだ。

 その噂を聞きつけた人たちが、六時台の電車に乗ろうとするものの、正確な日時がわからず断念した、なんてこともあるそうだ。

 ……正しくは「六時台ではなく始発電車、○○駅行の六両目」だ。

 私がこの始発の痴漢電車に巻き込まれたのは本当に偶然。これから話すのは、なにも知らないまま、始発電車の○○駅行の六両目に乗り込んだ時のことだ。

***

 車両内には始発だというのに人がたくさん乗っていて、独特の緊張感が流れていた。その中でも異彩を放っていたのは男性陣、目がぎらぎらと輝いていてちょっと怖かった。

 電車が発車したと同時に少数の女性たちは男性客に囲まれて、胸を揉まれたりパンティ越しに焦れったい指の動きで翻弄されたりと、様々なことをされていた。

 されていた、というのは表現としておかしい……正しくは「された」かもしれない。

 私はなにも知らないまま胸を揉まれて吸われ、パンティ越しにクリトリスを触られ、もどかしい思いをした。

 今思えば、もどかしかったんだ…と納得できるが、当時は突然のことと恐怖で身体がかたまり、抵抗することすらできなかった。

 しかし、気持ちとは裏腹に身体は快楽に正直だ。すぐに濡れて「新顔か」「口ではいやいや言うのに濡れやすい、いい身体だ」と口々に言われるのも、恥ずかしかったが、心地よかった。それでも恥ずかしさは消えず、何回か抵抗していたところ、ひとりの乗客に両手を拘束された。そして、つり革をぶら下げている鉄の棒のところに吊るされてしまったのだ。

「やだ、や、ぁあっ!!」

 そんな抵抗も虚しく、私の処女はそこで散った……その時はとてもショックだったけれど、今思えば悪くない。

「なんだ、初物か。」

 そう嬉しそうに呟く男性の声だけは、今でもよく覚えている、それくらいもみくちゃにされて、全身性感帯にされるんじゃないかってくらいの、めちゃくちゃな抱かれ方をしたからだ。

 かわるがわる入れられる男根と、左右同時に吸われる胸、男性はあっちにいったりこっちに来たりと忙しそうにしている。

 その時の私は無遠慮に中出しされていたので、妊娠するのでは…という恐怖と戦っていた。

 どうしよう…とぐるぐる考えていたものの、快楽の波に負けて思考がごちゃ混ぜになり、こっちもこっちで忙しい。

 そんなことをしていたらあっという間に終点の○○駅に着いてしまい、男性陣はさっと何事もなかったかのように、去っていってしまった。

 残されたのは全身をぐしょぐしょに汚した女性数名で、しばらく放心していると駅員さんがやってきて、後片付けと掃除を黙々と始める。そして、私の手を拘束しているロープを取ってくれたり、誰にも見られないように駅員室まで移動させてくれ、シャワーまで貸してくれた。

 シャワーを浴びながら、今日のことを振り返る……良い体験とはいえない。男性陣に物のように扱われるのは決して良いとは言えないが、その粗雑さが良かったのかもしれない。

 なんとも煮え切らない感情にもやもやしながらシャワー室を出ると、残りの女性数名もちょうど出てきていて、各々今日の反省会のようなものを駅員さんとしていた。

「あなたは初めて……ですよね?」
「は、はい……あの、これはいったい……」
「これは当駅のサービス向上の一環で用意させてもらったもので、女性の皆さんには働いてもらった分の報酬として給料を支払っているんです。」

 「一両まるまる触れ合い場」と言ったサービスは、近年増加傾向にある痴漢被害から女性を守るべく、選りすぐりの精鋭たちが痴漢撲滅を誓い、始発の電車で男性陣をもてなす。そんな、精を搾り取るスペシャリスト軍団が行っているサービスであり、私はその現場にたまたま居合わせた一般人……ということらしい。

「そうなんですね、その……お疲れ様です。」
「そこで相談なのですが。」

 嫌な予感がした。

「あなた様もチームの一員になりませんか?」

 ほらやっぱり! そんなことだろうと思っていた!

「……なんでですか?」
「今日こなされた様子を見て、あなた様ならイけるかもしれないと感じまして……」

 あと担当がひとり増えたらいい感じにローテーションできるから、と本音を口に出してきた。

 駅員さんの言っている言葉が心に響く。

 私も、痴漢を少しでも減らせるなら貢献したいと思っていたし。

 しかし、それでも……複数の男性を相手にするのは怖すぎる。

 ただ、断る理由としては弱すぎた。報酬の額を聞いて、少なからず良いなと思ってしまっていた。

 その日から、私は精鋭部隊のひとりとして、激しい始発電車の戦いに身を置くための訓練を始めた。膣圧を上げる訓練だの、男を悦ばせるポイントの講習だの、これは駅でやることか?という内容ばかりだったが、やりがいはあった。

 そして挑んだ第二回戦目の一両まるまる触れ合い場、電車の発車と同時に動き出した乗客に負けじと食らいつくような勢いで、積極的に男根を握って両穴を使って奉仕していく。

 すべては痴漢撲滅と報酬のため、妥協は一切許されない。

「っん、んぁ、あぁ……」
「いい食いつきっぷりだな。」
「こりゃあたまらん、空っぽになりそうだ。」

 口々に絶賛の言葉を呟く男性陣に「やってやったぞ。」と思って、つい、にやついてしまう。

 にやついた顔を隠すためにわざと男根をほおばって、いやらしい女のフリをする。

 そうすれば、その気なんだと遠慮のなくなった男たちが、群がってくるからだ。

 その男たちをなぎ倒すように、もっと卑猥に、もっと触れ合えるように、と身体を広げて数時間の肉欲パーティーを盛り上げた。

 その間ずっと気合いを入れていたのもあってか、終わったあとの脱力感が半端ではないけど、社会貢献にはなっているはずだ。

 相変わらず本番含む痴漢目当ての乗客は多い。

 しかし、それだけの客を相手することで、少しでも痴漢にあう子が減ればいい。そう思ってやってきたものの、ここ最近はそれ以上の悩みが出てきてしまったのだ。

 ……身体の疼き、こればっかりはどうしようもなくて、シフトを増やしてもらうことで対応しようとしたのだけど、どうにもうまくいかなかった。

 欲情を抑えられない私は、この街に伝わるもうひとつの噂を検証しに行くことにした。

 それは「午後八時の○○駅行の八両目電車には女王様が乗っている」というものだ。

 女王様とはなんなのかわからないが、とりあえず行ってみよう。

 八時の○○駅行の電車の八両目に乗ってみると、ひとりの女性を隠すように、女装した男性たちが取り囲んでいる。

 なんだろうと思い近づいてみると、発車と同時に弾き飛ばされた。

「いたた……」

 尻もちをついて痛みから声を漏らすと、男性陣の腕の中からひとつの細っこい手が伸びてきて、私の腕を掴んで引っ張ってきた。

「ちょっ、えっ!?」

 その手に導かれるままに連れていかれると、人混みの中央には歪な形をしたペニスバンドを付けた女の人が立っていて、その脇を女装した男性たちが、そのペニスバンドを舐めている。

「新入り?」
「あ、あの……」
「まぁいいや、とにかく早く始めましょうか。」

 女性は鈴の音のようにしゃんしゃんと物事を進めて、私を中央のペニスバンドの前に立たせた。

「イキ狂う前にもっと顔をよく見たいな。」
「へ、ぁ……!?」

 ぐいと顔を近づけられて、視線がぶつかる。

 ペニスバンドを付けた半裸の女性という異常事態にも気を取られないくらい、彼女は美しく見えた。

「……ふぅん、カンザキより若いけど壊しがいのありそうな子だね。」
「女王様ぁ、早く私たちにも挿れてくださぁい……」
「この子が先だよ、ほら、押さえるの手伝って。」
「ひ、ぃっ!!」

 無理やり身体を押さえつけられたと思ったら、ぐいと引っ張られて服を脱がされた。

 男性たちが舐めて濡らしていたペニスバンドの男根部に、ぐちゃりとボトルのローションをドバドバとかけたものを、私の膣口に押し付けてきたのだ。

「や、やめっ……!!」
「期待してたんでしょ?こうやって犯されるの。」
「あ、ぎっ!……い、いたぁっ……!!?」

 痛い…はず。こんな複雑な形をしたものなんて、一度も受け入れたことはなかったから、痛いはずなのに。

「な、んでっ……!?」

 痛くない。

 痛くないどころか、むしろどんどん気持ちよくなっていっていて、じわじわと脳みそが快楽に浸っていく。

 その勢いは意外と早く、気がついたら頭の中が「気持ちいい」でいっぱいになっていた。

 歪な形のペニスバンドの歪さは、この快楽を引き出すためのものなのだと理解した。

 理解した途端にこのやみつきになる快楽に溺れてしまわないようにと抗ってみたものの、そんな抵抗は無意味だった。

「あ、ぁ〜……!!」
「いい顔……ほらみんな、次の子を相手するから新入りを可愛がってあげなさい。」

 あともう少しで大きな快楽がぶつかってくる!というところで、ずぽっとペニスバンドを引き抜かれて、女王様は他の男性を犯し始めた。

 女王様!と声をかけようとする口を囲いの男性に塞がれ、そのままむちむちと舌で唾液交換をしながら、他の男性陣に全身を舐められた。

 勃起したものを挿れてこないから、不思議に思っていたが、女王様の犯す男性は皆勃起しておらず、きゃんきゃんと泣き喘ぎながら空イキしているようだった。

(勃たないから挿れられないんだ)

 そう納得すると男性陣たちの必死の奉仕も嬉しく思う。

 女王様の指示だからだとしても、少しでも悦ばせようと必死なのが伝わってくる。

 最近朝痴漢がマンネリ気味だったのもあって、こういうのを混ぜてみるのもありかと考えていると、女王様から「集中!」とお叱りを受けた。

 こういう高圧的なものはウケが悪そうだけど、好きな人は好きだろうか?なんて考えながら女王様とその取り巻きたちの行う淫行に身を委ねた。

**

「もっと集中して。」
「は、はひ……!」

 この高圧的なキャラクターはわりと好評だった。

 これが苦手な人は他の女性のところに行くし、むしろそういう積極的で高圧的な女性がいいという人はこっちに来る。

 駅員さんからもバリエーションが増えていいと絶賛されたので、このキャラクターは悪くはないはずだ。

 女王様には感謝しないといけない。なぜなら、このキャラクターへのヒントと、それに合わせた男性陣を満足させる秘訣を、身体を使って教えてもらったのだから。

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Akari

皆さま、読んでくださり、ありがとうございます!順次新作をお届けしますので楽しみにお待ちください! 【おすすめ掲載】 ・打ち上げ花火に照らされて(純愛) ・僕たちの初恋(BL) ・夏の暑さに酔いしれる(不倫)

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