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高校生カップルが土手の河川敷の陰で
「やっぱ三奈ちゃんいいよな。」
「わかるわー。この顔でこの豊満さ。たまんねーよな。」
夏休み目前の放課後。
男子たちがグラビアを見て盛り上がっている。
それを、私たちはさめた目で周りから見ていた。
「大きけりゃいいってもんじゃないでしょうが…」
友だちの咲希(さき)が冷たい視線を向ける。
「いや、それだけじゃないけどさ…」
「やっぱ、どうせなら大きい方がいいじゃん?」
男子が、縋るような視線を私たちに向ける。
「いや、キモイわ。こっち見んな。」
そんな男子たちの視線に、他の女子たちも胸を手で押さえて引いてしまっている。
「いやいやいや、お前たちの彼氏だって、同じようなこと考えてるって。」
「うっわ。自分たちに彼女がいない理由、考えたことないの?」
「うちのダーリンはそんな露骨に下ネタ言わないもん。」
A組の姫と言われる美沙(みさ)の発言に、男子は言い返せなくなった。
そこにタイミングよく私の彼が登場したのだ。
「里桜(りお)!帰ろう!」
「さわやかすぎだろ!このやろう~!」
と突然うちのクラスの男子にキレられて、「え?なんで?』と不思議そうに問う彼。
「ふふ…。いこう翔真(しょうま)。」
そう言って私は鞄を持ち立ち上がる。
女友達に「またね」と別れを告げて手をふり、教室を後にした。
***
私は、紺野里桜(こんのりお)。
高校3年生だ。
彼は、遠山翔真(とおやましょうま)。
同じく高校3年生。
1、2年と同じクラスで、結構仲もよかった。
さわやかでちょっと大人びていて、勉強もできる彼に、私は憧れていた。
それはいつか“恋”に変わったけど、なかなか告白できずにいた。
どうせ友達としか思われてないだろうし、いつメンのこの距離が壊れるのも怖かった。
でも、その均衡を破ってきたのは翔真だった。
それは高2の3学期。
掃除の時間に二人きりになった。
そして翔真は私に聞いてきた。
「里桜ってカレシとか好きな人っている?」
「え?」
一瞬動きがとまってしまった。
「あ、えっと…やべ。」
ちょっと戸惑ってうろたえている翔真を、どうしようもなく愛おしく感じた。
「いないよ。」
そう言ってほほ笑むと、翔真は今まで見たことない笑顔を浮かべた。
「それってさ、俺じゃダメ?」
いつもはっきりとしている翔真には考えられないほど、歯切れの悪いセリフだった。
心の中で舞い上がってしまう自分を抑えて、私は答えた。
「翔真が彼氏になってくれたら、私すごくうれしい。」
放課後の教室で、私たちは静かに付き合い始めた。
***
いつメンであることには変わらないけど、手をつないだり、休みの日に二人きりで会ったりするのは“彼女だから特別”っていう気がして、半年たった今でも幸せをかみしめている。
さっきは男子のこと責めたけど、女の子だって。やっぱりそういう話をしないわけじゃない。
男子みたいに露骨にじゃないけど“手をつないだ?”とか“キスはした?”とか…。
人の恋愛事情はちょびっと気になる。
雑誌にはよく載っている。JKの何パーセントがキスを経験しているのか?
初キスはいつ?付き合ってどのくらいで彼の家に行くの?
ほんとはいろいろ考えちゃう。
キスの先ってどうすればいいの…?
「里桜?」
「へ?」
「どうしたの?なんか考え事?」
いけないいけない。せっかくの放課後デートなのに、余計なこと考えちゃってた。
「ううん。特には…」
「そっか、ジュースなんか飲む?」
気付けば、2人は自販機の前にいた。
「あ、あぁうん。サイダー飲もうかな。」
そう言ってお財布を出そうとすると、
「いいよ。おごってあげる。」
とスマートに翔真はサイダーを買ってくれたのだ。
「あ、ありがとう。」
「どういたしまして。」
翔真はコーラを買って、並んで河川敷を歩き始めた。
「あっついね。」
「うん、もう夏休みだもんね。」
「今年は受験で夏期講習ばっかだよね。」
ふと現実を思い出して、二人ともへこんでしまう。
「でもちょっとは会おうね。」
「うん。」
翔真が頭をポンポンしてくれる。
優しい翔真に、またテンションが上がる。
「わかんないとこあったらまた教えてくれる?」
翔真も受験勉強があるのに図々しいけど、会う口実は欲しい。
「いいよ。里桜に教えると俺も復習になるからね。」
「感謝してます。」
頭を下げると、なぜか翔真は私から視線をそらして咳払いをした。
「あ,暑いから土嚢(どのう)小屋の横で座って飲もう。」
そう提案されて、翔真についていった。
橋の下には土嚢をしまっておくコンクリートの小さな建物がある。
私たちはよくそこで、休憩している。
橋の下だし土嚢小屋の影にもなって日陰で川風も涼しい。
「今日またA組の男子は賑やかだったね。」
「うん。グラビア見て盛り上がってたみたい。女子からは引かれてたけどね(笑)」
「そっか。」
やっぱ、翔真もグラビアとか着よう見あるのかな?と思って聞こうとしたとき…
ぷしゅ!
私が開けたサイダーの炭酸がはじけた。
「あっ!」
ブラウスの胸元を、サイダーが派手に濡らしたのだ。
「大丈夫?」
「うん。」
私は、タオルを出して胸元を拭く。
「あぁ…べとべと。翔真にかかってない?」
そうして翔真を見て驚く。
翔真の顔は赤く染まっていた。
「翔真…?」
「あ、あごめん。」
…“ごめん”って何?
もう一度胸元に視線を戻して気付く。
派手に濡れたせいで、下着まで透けている。
「あ、ごめん。」
なぜか私も、謝ってしまう。
少しの沈黙の後、翔真が持っていたタオルを、私の肩にかけてくれた。
「ありがとう…」
こくんとうなずく翔真。
「あのさ…。やっぱ翔真も興味あるの?その…グラビアとか…」
何聞いてるんだろ…。
「あ、別に答えなくても…!」
「あるよ…」
私の言葉を翔真が遮った。
「え?」
「いや、グラビアっていうか、里桜のその…。」
真っ赤になっている翔真。
私自身も顔が熱くなるのがわかる。
「里桜に興味がある。」
今度ははっきり言う。
「みんなには“さわやか”とか“大人っぽい”とか言われるけど、俺だってそういうのに興味ないわけじゃない。」
まっすぐに見つめられて、なんだかドキドキが早くなる。
「里桜と手つなぎたいし、唇見たらキスを想像するし、今だって…。普通に里桜のそんな姿にいろいろ想像しちゃうよ。」
今までずっと、大人っぽくて素敵と思っていた翔真を、今はとっても、“可愛い”と思う。
その想いがどうしようもなく加速していく。
「いいよ。キス…」
「え?」
翔真を見つめる私に、翔真は目を泳がせている。
「キス…しよ」
私ってこんな大胆だったっけ…。
自分でも驚くほどだ。
そっと翔真に近づいて、翔真のほほに手を添えた。
「…里桜。」
そう呟いた翔真の唇に、そっと自分の唇を重ねる。
もちろん私だって初めてだ。
うまくできたかな?
そう思いながら唇を離そうとした瞬間。
ぐっと後頭部を抑えられ、もう一度翔真の唇に引き戻される。
「ん…!」
勢いのあまり、少し歯がぶつかってしまうけど、翔真は気にせず、私の唇に自分の唇を押し付けてくる。
「ん…ね…しょ、しょう…ま」
わずかな隙間から翔真を呼ぶ。
でもその隙間に、翔真の舌が入り込んできた。
「はぁ…ん…ん」
はじめは抵抗したけど、すぐに気持ちよくなってしまった。
漏れる声もだんだんと息のように甘くなる。
それに興奮したのか、翔大はどんどん激しくキスをしてくる。
「あ、…はぁ…あ」
ようやく、翔真のキスから解放されたころには、私はきっととけてしまったような表情だったんだろうな、と思う。
「里桜、その顔やばすぎ…。」
「あ、だ、だって…」
「気持ちよかった?」
こくこくと、夢中でうなずく。
それに満足したのか、翔真がニコッと笑う。
すぐに私は背中を地面につけられ、翔真しか見えなくなった。
「や、翔真。ここ外…」
「ごめん、でももう無理。」
初めてなのに…。
少し悲しくなる。
でも翔真の手が、私の胸を服の上から触った瞬間、もうどうでもよくなった。
「俺だって…、いや、あいつらより俺のほうが里桜のこと考えたら、エロくなってる。」
そういう翔真の顔は、確かに上気して興奮しているのがわかる。
「スカートの中とか、ブラウスになるとその胸のふくらみとか、全部が俺を悩ませてる。」
エッチなこと言ってるのに、翔真が言うと文学的でかっこよく聞こてくる。
ふふ…。おかしい。
「これにだってむちゃくちゃ興味あるよ。」
そう言ってブラウスの上から下着のラインをなぞる。
その手に『ああぁ、私今翔真にエッチなことされてる』と感じて、ぞくぞくしてしまう。
「見ていい?」
そう言いながら、私がうなずく前にブラウスのボタンを外し始めた。
恥ずかしいのに期待しちゃう。
翔真はボタンをはずして、前を開ける。
タンクトップの裾に手をかけて、そっと持ち上げてくる。
キスだって初めてなのに、こんなに許していいの?
でも気持ちはうらはらに、この先にあるであろう、めくるめく出来事に期待が膨らんでしまうのだった。
「はぁ…」
翔真の暖かい手が、ブラの上から胸を包み込んだ。
「やわらかい」
「いや…ん」
いやじゃないのに、快感のあまり、そう言ってしまう。
しばらく私の感触を確かめるように、翔真は胸のふくらみをなでている。
気持ちいい。
でもじれったい。
時折おなかに触れるその感触にさえ、敏感に反応してしまう。
小さくぴくっ!とする私に翔真が、
「気持ちいいの?」
と聞いてくる。
うん。と小さく頷いた。
「ほんとかわいい。ねぇ直接触っていい?」
どうしたらいいのかわからなくて、黙ってしまった。
「触るよ。」
そんな私に我慢できなくなったのか、翔真はブラの下から手を滑り込ませた。
あらわになったふくらみや先端は、外気に触れてより快感を与えてくる。
川から上がってくるそのわずかな風にさえ、敏感に感じてしまう。
「先っぽ立ってるよ。ピンクでかわいい。」
あぁ翔真に見られている。普段学校では見せない部分を、いま、翔真に見られている。
それだけで興奮が収まらない。
もう早く触ってほしいのに…。
そう思っていると、やっと翔真がその先端を指でつついた。
「あ…。あん…」
そうあえいでしまうと、翔真に口を押えたれた。
唇に人差し指をあてて『しー』のジェスチャーをしている。
そうだ。ここは外だ。
いくら物陰で人通りも少ないとはいえ、声を出しちゃいけない。
真昼間だし、外だし、制服のまま。
さらに、口を押さえられているこの状況に、なんだか欲情してしまった。
私、変態なのかな?
「やばい。なんか里桜のこと犯してるみたいで…。ごめん俺…、興奮してる。」
あれ…翔真も同じこと考えてたんだ。
確かに翔真の息は荒く、やさしく触れていただけの手のひらも、だんだんと激しく揉みしだき始めていた。
「あん…翔真…」
私はあまりの気持ちよさに耐えられず、翔真の服をつかんだ。
「里桜…」
切なく私を呼ぶ翔真。
その声に、下腹から何とも言えない感覚が襲ってきた。
「里桜…下も…」
一瞬、何を言っているのかわからなかった。
でもすぐにわかる。
翔真の手が私のスカートの中に入り込み、下着の上から割れ目をなぞった。
っ!
その瞬間全身に刺激が走ってきた。
背中がのけぞって、つい声が出そうになる。
両手で口を押さえて耐える。
「里桜ほんとに気持ちいいんだね。」
そう言いながら、下着からあふれた雫を指に絡めた翔真がほほ笑む。
「少し触ったらしみだしてくる。」
「いや、言わないで…」
「俺初めてだけど、なんか嬉しい。」
そう言いながら、何度も下着の上から割れ目を指でさする。
もうあそこから熱い何かが沸き上がってきて、腰が自然と動いてしまう。
翔真とこんなことするスリルと、幸福感にあらがえない。
翔真がズボンのファスナーを下ろし、ズボンからモノを出した。
それを見てドキッとしてしまった。
確かに保健の授業やファッション誌や動画の情報で、“ペニスは大きくなる”ということは知っていた。
雑誌の体験談でも“初めては痛くて…”なんて書いてあるから、ある程度は覚悟できてた…はずだった。
でも実際に見ると…、今までのふわふわした幸福感から、一気に現実に戻される感じがした。
がさがさ…。
翔真が横に置いてあった鞄の中の財布から、ゴムを取り出す。
びり…。
そして、片手と口でそれを開けた。
器用に自分のモノに装着する翔真を見て、この先を現実的に想像する。
こわい。でも…。私の好奇心と欲望と本能が、翔真とのセックスを期待していることは否めない。
そんなことを考えている間に、翔真はそれを私の割れ目にあてがって、恍惚の表情を浮かべている。
「…いい?」
翔真にそう聞かれてちょっと戸惑う。
その間も、彼の欲望は私の入り口を行ったり来たりしている。
「里桜…。もう我慢できない…」
苦しそうな翔真の声。
不安なのに、あふれ出てしまう私の身体…。
わかってる。
好きな人にこんなふうに聞かれて、断れるわけがない。
だって身体はこんなに正直に反応しているのに、いまさら断れない。
それは翔真のことが好きだから…。
その気持ちは、何よりも強かった。
私は静かに頷いた。
翔真は私の様子を見ながら、先端で私の割れ目を何度も何度も往復して、出し入れしてくれた。
翔真だって初めてで余裕がないはずなのに…。
そうしているうちに、下腹部がじんじんとうずきだす。
私は翔真のお尻に、ゆっくり手を添えた。
ぬぷ!
「…んっあっ!」
「う”っ!」
その拍子に翔真のが挿入(はい)ってきた。
「ご、ごめん里桜。」
半端ない圧迫感に、耐えることはできない。
翔真の背中に強くしがみついた。
翔真は慌てて抜こうとしたけど、私はそのまま翔真の腰を手でホールドする。
このまま…、このままじっとしててほしい。
翔真のが私の中でドクンドクンと波打つのがわかる。
どのくらいたっただろう。
翔真の整わない息遣いが耳に響く。
「里桜、ごめん、ちょっと動いていい?」
そうささやかれて、小さく頷いた。
ほんとに、ゆっくりと…、ゆっくりと私の中を、翔真が行ったり来たりする。
痛みと後ろめたい行為への背徳感が、押し寄せてきた。
「里桜、あぁ。里桜…すげぇ…いい。」
だんだんと興奮してくる翔真の声と、それに比例して質量を増す彼自身。
何度も何度も繰り返される律動に、いつの間にか私も気持ちよさを覚えていた。
少しずつ早くなる彼の腰の動きに突き動かされるように、2人の身体はどんどん密着していく。
「あん…、あ…、翔真…、翔真…!」
私の喘ぎ声を、川の音がかき消してくれる。
何度も突き立てられるそれに、私はされるがままになる。
下腹部から、溢れ出しそうな感覚が沸き上がってきたとき、
「…っ里桜!イクっ!」
翔真がそう言い放って、奥を激しく打ち付けられた。
パンパン!と大きな音が響く。
「ハンっ!あん!」
外だということも忘れて翔真ときつく抱き合い、翔真がゴムの中に熱を放った。
ことが終わってもつながったまま、抱き合っていた。
翔真が優しく私の頭を撫でてくれる。
「里桜、大好きだよ。」
少し汗ばんだその肩口に、そっとキスをする。
ガタンガタンッ
その瞬間橋の上を通る車の音に二人して、ドキッとした。
「やべ。」
そう言って私のブラウスの前を合わせて、私の下着を探して渡してくる翔真。
渡された下着をつけると、翔真もズボンをあげてベルトを付けた。
身なりを整えて目が合う。
「「ぷっ!ははははは…」」
どちらともなく笑う。
「お財布にゴム入ってるとか、翔真も意外とちゃんとした男の子だね。」
そういいつつ、私はイジワルに笑った。
「あわよくば、里桜とつながれるかもって、日頃から考えてるんで。」
と照れたように笑う翔真。
そのあと真剣な顔して、
「こういうのも悪くないけど、今度はちゃんとしたとこで里桜の事愛させて。」
そう言って、私のおでこにキスする翔真。
「もう!えっち。」
そう言って立ち上がって、スカートをはらう。
そしてバックとペットボトルを持って、
「いくよ!」
と土手をあがる。
慌てて追いかけてくる翔真に、また期待してるのがばれないように、私はかけあがっていった。
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