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僕は兄に恋をする
高校の夏休み、僕は、僕の知らないお兄ちゃんを見た。
「はぁ……っ、あっ、あ……っ、そこっ、きもち、いいっ」
両親は明後日まで旅行で家にいない。同じく夏休みである大学生のお兄ちゃんの部屋から、どすんと鈍い物音がした。部屋には、さっきお兄ちゃんの友達だという筋肉質な男の人が入っていったはず。物音が気になり、夏休みの課題を進める手を止めた。そして、少しだけ扉を開き、隣の部屋を覗く。
すると、ベッドの上で脚を開かされ、筋肉質な男の人にお尻をぐちゅぐちゅと弄られているお兄ちゃんの姿が目に飛び込んできた。服は完全には脱いでいないが、あたりに2人分のズボンとパンツが乱雑に置かれており、余裕がないまま始まったことが、一目で分かってしまった。
「マサト気持ちいいか?」
「ん……っ、そこっ、好きッ」
男の人はわざとらしく低い声で囁き、ごつごつした指をお兄ちゃんの小さな穴に出し入れしている。指を動かすたびに、お兄ちゃんは甘ったるい嬌声をあげている。その行為をすることが好きなのか、お尻を弄ってくれている男の人のことが好きなのかは、わからない。行為が好きなだけならいいが、もしどっちもだったら、僕は頭がどうにかなってしまいそうだった。お兄ちゃんは僕だけのものなのに。
成績も優秀で、見た目も綺麗なお兄ちゃんは、昔から男女問わず好かれてきて、友達がそこまで多くない僕は、お兄ちゃんのことを誇らしく思っていた。お兄ちゃんに女の子の恋人ができたときも、素直に祝福した。デートにどんな服を着て行こうか、とひどく悩んでいるところを、一緒に買い物に行って選ぶのを、手伝ったことだってある。
そんなお兄ちゃんに、いつのまにか。まさか、男の恋人ができていただなんて。女の子が相手なら、こんな感情にはならない。自分が男性であるという時点で、その勝負のスタート地点にも立てないのだから。だけど、男なら話が違ってくる。僕がずっと押し殺して、見て見ぬ振りをしてきた感情が、胸の奥から音を立てずに湧き出てくるのを感じ、苦しくなる。
僕は、お兄ちゃんが兄弟としてだけではなく、純粋に好きなのだ。これは、ずっと押し殺してきた感情。持っていてはいけないと思い、葬りさろうとしてきた感情。それなのに今、男性との行為を目の当たりにしたことで、引き摺り出されてしまった。
お兄ちゃんの喘ぎ声が次第に大きくなってきたところで、ちゅぶ、と指を抜く音がした。男の人の指が流れるように、そばにあったゴムの袋を破り、充分に硬くなったちんこにかぶせ始めたのだ。その姿を見て、僕は扉から離れた。
自分の部屋に戻り、何も考えないようにしようと課題を開く。何も見ていない…何も聞いていない…何もしていなかった…と頭の中で繰り返す。そして、ノートにシャーペンを走らせようとした時、激しい水音と、肌と肌がぶつかる音が聞こえてきた。
「あっあっ、んぁっ、もっ、と……っ、ゆっ、くりしてッ」
「こんなエロい身体前にゆっくりできるかよ。」
「んあ……ッんむっ、ん……っ」
ぴちゃぴちゃと舌と舌が絡み合う音がしたかと思うと、また肌が激しくぶつかり合う音が聞こえてきた。その激しい音の合間合間に、お兄ちゃんのとろとろとした声も耳に入ってくる。
「あんっあ……っ、すきっ、すきぃッ」
どんな顔で快感を貪っているのか頭の中で考え始めてから、自分のちんこが反応するまでに、そう時間はかからなかった。チラリと見ると、そこは痛いくらいに張り詰めてしまっている。ズボンを下着ごとおろし、お兄ちゃんの喘ぎ声を聞きながら、硬くなったちんこに手を添え、上下に動かし刺激していく。
僕だけのものにしたい。あんな最近知り合ったばかりであろう男じゃなくて、もう何年もそばにいる僕の方が、お兄ちゃんのことを大切にできるのに。もっと気持ちのいい刺激を与えられるのに。僕が、僕だけがお兄ちゃんにふさわしいはずなのに…。僕の方が、僕の方が上だ。
「あぁっ、あっ、なんか、きちゃ……ッ!」
「出せよマサト、気持ちいいんだろ。」
「あぅ……っ、あっ、で、出ちゃうッ」
ぬちゅぬちゅとお兄ちゃんのちんこが擦られている音と一緒に、手を動かす。ひと回り大きくなったかと思うと、すぐにちんこを握る手に、ぶちゅ、と白濁がかかった。壁の向こうではまだ行為の音が聞こえてくる。ティッシュで手とちんこを拭いている僕は、頭がぽわぽわしてきた。そして、もう何も考えたくなくて、その音を遠くに聞きながら椅子から立ち上がり、ベッドにダイブした。
***
「別にないよ。」
その日の夜ご飯の時、お兄ちゃんに何気なく明日の予定を聞いた。お兄ちゃんは、僕が作ったカレーの最後の一口を口に運び、ごくっと喉を鳴らして飲み込んでから、そう返事をしてくれた。
「明日は家に篭ってゲームでもするかな。」
「今日、ゲームしてたんじゃなかったの?」
何も知らないふりをして聞くと、お兄ちゃんは全く表情を変えることなく言った。
「うん。」
「何してたの? 友達と。」
「特に変わったことは。」
何の感情も込められていない声。そういう声を出す時はいつも、何かを隠している時だって、僕だけが知っている。僕だけが。
「……お兄ちゃんさ、自分の部屋の壁の薄さ、わかってる?」
僕の言葉にお兄ちゃんが目を丸くし、その薄い身体がびくっ、と震えた。やっぱり、バレていないと思っていたんだ。
「あんな大きな声出してたら聞こえてるに決まってるじゃん。」
テーブルの正面に座り、そう続けると、お兄ちゃんの目はうようよとしていた。さっきまでの無表情さはなんだったのか。焦り出すとすぐこうなるから、可愛くて仕方ない。
「コーキ頼む……母さんたちには。」
「言わないよ。そんなことしない。でも、」
椅子から立ち上がり、お兄ちゃんの背後に回る。首の後ろからゆっくりと手を回して、優しく抱きつき、耳元でわざとらしいくらい、ねっとりした声を出す。
「その代わり、僕のお願い聞いてよ。」
お兄ちゃんが俯いたまま小さく頷いたのを確認し、僕はシャワーへと向かった。
ベッドにお兄ちゃんを押し倒し、唇を重ねる。マシュマロのように柔らかいそれを、何度もついばみ、舌で突くと簡単に口を開けてくれた。ぬるぬるした舌を絡ませ合うと、さっき聞こえてきたものよりももっといやらしい音がする。
「ん……ふ、ぅ……っ」
お兄ちゃんは舌も性感帯なのか、絡ませたり吸ったりするたびに甘ったるい声が漏れ、太ももを擦り合わせて快感に耐えている。膝で股間をぐりぐりすると、ちんこは既に大きくなっておりパンツを押し上げていた。唇を離すとねっとりした唾液が糸を引いたのが見えた。えっちだ。今起きていることが何もかもえっちで、どんどん先に進みたくなる気持ちが抑えられなくなった。
「なあ、コーキ……」
キスだけでとろけてしまったお兄ちゃんが、艶っぽい声で話しかけてきた。お兄ちゃんのパンツを脱がし、飛び出てきたちんこをぐちゅぐちゅと上下に擦りながら、耳を傾けることにする。
「ん……なん、で……いつから、俺のことっ、そういう、目で。」
「ずっと昔から。僕はお兄ちゃんのこと、ずっと性的な目で見てたんだと思う。」
「おも、う……?」
ちんこから手を離し、ゼリーを纏わせた中指をゆっくりと後ろの穴に入れていく。痛そうにしていないのを確認し、ぬちぬちと出し入れする。甘い息を漏らしたタイミングを頼りに、お兄ちゃんの気持ちいいところを探っていった。
「だって、家族だよ?」
「ぁ……っ、そう、だなッ、ん」
「家族のことそんな目で見るの、よくないことだってそれくらいわかってるよ。」
「ん……んぅっ……ッ」
「ねえ、さっき男の人としてた時よりも声甘くない?」
「ぁああッ!」
ごりゅ、とざらついている部分を2本の指で刺激すると、お兄ちゃんの腰が大きく揺れ、ナカがぎゅっと締まった。あ、ここが一番気持ちいいんだ…。
「あの人に触られるより気持ちいい?」
「ん……ひゃうっ……!」
意地悪い質問をすると、目をぎゅっと瞑り、こくこくと頷いて教えてくれる。なんという優越感。仕草も表情もたまらなくて、触ってもいないのに射精したくてたまらなくなった。
「ここがいい?」
「そ、こ……っ、コーキのほうがっ、いいっ」
「僕の方が?」
「あいつ、ただの……っん、セフレ、だからッ」
「ずっと僕にこうされたかった?」
「ん……うッ、ずっとお……っ、コーキの目つき、やらしいなあ……って」
ああ、全部お見通しだったらしい。あんなにやらしい目で見ないようにしていたのに、バレていただなんて。さすがお兄ちゃん、僕のずっと憧れの、いやらしいお兄ちゃん。これからはもう何にも、隠す必要などない。そろそろ入れるね、と耳元で囁き、お兄ちゃんがくれたゴムの袋を破り、ちんこに被せていく。脚の間に入り腰を掴むと、お兄ちゃんがじっと何かを訴えるような目を向けてきた。
「どしたの?」
「まだ、コーキから聞いてない。」
「なに、を。」
「告白して、俺に。」
そう言いながら上半身を起こしてきたお兄ちゃんを、力いっぱい抱きしめる。もう、これを言ったら、完全に僕だけのものにできる。
「……好きだよ、お兄ちゃん。」
「俺、も。」
返事を聞いてすぐ、お兄ちゃんの腰を掴み軽く浮かせ、僕のちんこを下からゆっくりと挿入していく。もう一度強く抱きしめ、下からちんこを突き上げた。
「あ……っ、コーキッ、ちんこっ、気持ちいいッ」
「この動き、気持ちいい?」
「んうっ、好きっ、もっ、とお……っ!」
何度か下から突き上げ、繋がったままの状態でベッドに押し倒す。腰を掴み直し、奥を何度も何度も抉るように腰を動かした。
「あっ、あっ、あっ……あっ、あぁあッ!」
ピストンに合わせて、お兄ちゃんのえっちな声が聞こえてくる。ぎゅうぎゅう締め付けてくるナカを刺激しながら、同時にお兄ちゃんのちんこも扱いていくと、ナカが小刻みに震え始めた。
「イっちゃ……っ、コーキ、イっちゃう、よおッ」
「いいよ、一緒に……!」
次の瞬間、お兄ちゃんは一際高い声を漏らし、ナカを締め付けながら、僕の手に数回に分けて精液をはきだした。その締め付けに耐えきれず、僕も薄いゴムの中に射精した。
ナカからちんこを抜き、ゴムを外す。そして、息を必死に整えようとしているお兄ちゃんに抱きついた。この触り心地のいい、えっちな身体も心も、これからずっと僕だけのものだ。
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