0
夫よりも、不倫相手よりもあなたがいい
「じゃあ、次の火曜にまた来るからね」
「ええ、楽しみにまってるわ」
照れくさそうに手を振ってくれるあの子が――年下の彼が愛しくてたまらない。
さきほどまでの情事を思い出し、思わず体が疼いてしまう。
まだまだ若くて体力のある彼との行為は、旦那とするよりも何倍も気持ち良かった。
エレベーターに乗り込む彼は、こちらに気付いて小さく手を振ってくれる。
そんな姿を見るだけで、つい頬が緩んでしまう。
その時、すぐそばから声が聞こえた。
「…あの。…こちらに判子をお願いしたいんですけど」
いつもの宅配の青年だ。近くにいるのにまったく気づかないなんて。
「え、ああ…。少々お待ち下さい」
逢瀬の余韻が抜けていないことを悟られぬよう、眉間に力を入れて顔を引き締める。
判子を見つけて戻ると、宅配の青年は勝手に玄関の中まで入ってきていた。
馴れ馴れしい気もするが、見知った顔だ。部屋の中まで荷物を持ってきてくれるのはむしろありがたいかもしれない。
「お待たせして、ごめんなさいね。はい、判子」
「…はい。…確かにお受けいたしました」
青年は、受け取った紙を乱暴にポケットにねじ込む。
そんなに雑に扱わなくても…。そう思いながらも荷物を受け取ろうと腰を屈めた私の頭上で、「ガチャリ」という音が聞こえた。
「…え?」
間違いない。玄関ドアの鍵が締まる音だ。
緊張感を覚える間もなかった。
たくましい腕に掴まれ、私の身体は強引に引き寄せられた。
腰を抱き寄せる男らしさの滲む骨ばった指。
仕事服の上からでも分かる胸板の厚さに、思わず息を飲んだ。
「ねぇ、奥さん…。さっきの若い男の人…浮気相手?」
抱き寄せる腕に力がこもる。
私の腰を包んでしまいそうな大きな手に、力が奪われていく。
「や…やめてください! 大声出しますよ…!」
何とか絞り出した言葉にも、青年は一切動じることはない。
「…俺、知ってるんですよ。あなたの旦那はかなりのおじさんですよね。なのにどうして、この部屋から若い男が出てきたんですか?」
「それは…」
私に反論の機会を与えることなく、青年は決定的な一言を畳みかけた。
「どうしてあなたはあんな大きな声で、いやらしく叫んでいたんですか…? 全部聞いてましたよ。俺、玄関ドアに耳を押し付けてたんで」
「違うの、あれは…!」
「違うかどうかは、旦那さんに確認してもらいましょうか。あなたの声は全部スマホに録音してありますし…」
顔面がサッと冷たくなるのを感じた。
青年のこの大胆な行動は、証拠を押さえた上でのものだったのだ。
「…言わないでください。お願いします…」
「どうしてですか? 旦那さんが可哀想じゃないですか」
「ッ、お願い言わないで…! もし、このことがバレたら…!」
もしこのことを旦那が知ったら、あの子に何をするか分からない。
短気で人の言うことも聞かないあの人のことだから。
きっと怒りに任せて、あの子に酷いことをするかもしれない。
それだけはさせたくない。
あの子だけは傷つけて欲しくない。
私だって離婚したい。
それなのに、世間体ばかりを気にするあの人は一切聞き入れてくれなかった。
だから、私はあの子に溺れたのだ。
優しくて誠実で、紳士的な彼の魅力に夢中になった。
ただ無闇に腰を振って、自分の欲を満たす時だけ、私の感情もお構い無しに抱いてくるあの人と違って、あの子との行為は幸せに満ちていた。
甘い言葉と優しい囁きを聞きながらのあの子との行為は、たまらなく愛おしい時間だった。
ただの性欲処理じゃなく、自分の心までも満たしてくれる彼との行為は本当に堪らなかった。
あの子のことを手放したくないのだ。
だが、私の悲願は届かない。
たくましい腕に抱きしめられたまま、私の身体は廊下に押し倒される。
何が起きたか理解できなくて、困惑したままでいる私に、大きな影が覆い被さってきた。
「…なんてね、言わないですよ。ただあなたのことを俺にも味見させていただけたらなって。そうしたら黙っててあげますよ?」
腰に回していたはずの手が、いつの間にか下半身に回りこんでいる。
無骨な形状に似合わぬソフトな動きで、五本の指がゆっくりと私の太ももを撫でまわす。
スラックスの上から伝わる情熱的な愛撫に、つま先がヒクンと反応した。
先程まで彼と愛し合っていたせいか、敏感になっている体が、僅かな刺激にも過敏に反応を示してしまう。
「な、にをして…ッ、ん…」
「ずっと見てたんです。綺麗な目をしてるな、とか。大きい胸だなあ、とか。ぽってりと膨らんだ柔らかそうな唇だなとか…俺ずっとあなたを見ていたんですよ」
「や、やめて…ッ、私…あの子を裏切りたくないの…ッ…」
「今更何を言ってるんですか。旦那も裏切って、あの男に溺れるあなたが」
違う。
裏切りたくて裏切った訳じゃない。
旦那が早く離婚をしてくれないから。
ずっとあの子が欲しかったから、手を出したのだ。
仕事先で知り合って、一目惚れして、旦那がいようと彼の気を惹き付けたのだ。
頭の中は常にあの子のことで一杯だった。
「いっそのこと「ひ、ぐうぅ、ッ…」
「もしかして、さっきまで抱かれてたんですか?こんなにヌルヌルにして…もう今すぐにでも入りそうじゃないですか」
…俺にも溺れたらいいんですよ」
いつの間にかスラックスのボタンが外されていた。
なんて器用な指先…そう思う暇もない。
青年の指が中に滑り込んでくる。
「待って…あはぁっ!」
ショーツ越しに、まだほんのり熱を持つ膣を指で押し上げられた。
先程まであの子を受け入れていた膣からは、すぐに甘い蜜が溢れ出し、着替えたばかりのショーツをしっとりと濡らしていく。
二本の指で膣の入口をグリグリと押し上げられて、快感が迫り上がる。ビクンと身体が跳ねた。
粘着質な音が聞こえ始めた膣内に、男は嬉しそうに目を細めて笑みを浮かべる。
膣の入口だけじゃなく、秘豆ごとズリズリと指で上下に擦られて、いやらしい豆は主張し始める。
ぷっくりと勃起し、ショーツに擦れてヒクヒクと震え始める。
「や、ぁッ、それだけは…いやぁッ、」
口端を上げて楽しげに笑う彼に、抵抗の言葉を示す。
あの膣内の痛みは、旦那のせいで大いに分かっている。
すぐにでも入るから、と言って無理矢理に勃起した陰茎で膣内を押し広げ、挿入される痛み。
あの感覚は決して楽しいものでない。
だが、皮肉にもこれからされるであろう行為に、不思議と胸が高鳴っている自分がいた。
スラックスの上からなぞるように、指が速度を上げて往復し、その間に秘豆もゴリッと押し潰され、甘い悲鳴が思わず零れた。
ビクビクと痙攣する体と、ショーツに擦られて敏感になった秘豆のせいで、腰が震え続ける。
絶頂までもう少しという所で、彼の指が離れていくのが見えた。
「ショーツ越しにいじってるだけなのに…ほら見て。俺の指、糸引いてるよ」
羞恥と快感が入り混じり、焦点が合わない。
そんな私の視線に気付いた彼は、心底嬉しそうに笑みを零した。
「そんな目で見ないでよ。まだイったら楽しめないでしょ?」
「ふ、ぅ、は、ぁ…ッ…いじ、わるぅ…ッ」
「やっとその気になってきたみたいだね。だけど、まだ駄目。俺ともっと楽しもうよ。配達も終わったから時間に余裕があるんだ」
その時、快感の走る体とぼんやりとする頭の中で、彼の言葉が全て計算されていることに気づく。
前々から、あの子と浮気をしていることを彼は知っていたのだ。
知っていたからこそ、用意周到に証拠を掴んできたのだろう。
やっと理解し始めた頭の中で、どうして自分なのかという疑問が湧き上がる。
「な、んで…わたし、なの…ッ…」
「なんでって…そりゃあ、魅力的に見えたからだよ。君が綺麗だなって思ったから。可愛いなって思ったからさ。なんていうのかな、恋って言うのかな?そうだね、俺は君を好きになったんだ」
彼の言葉を理解するのに数秒かかった。
照れ屋なあの子からも、旦那からも愛の告白なんてされた試しはなかった。
それなのに真っ直ぐに私を見つめて笑みを零す彼に感じた、胸が締め付けられるような疼き。
ここまで熱烈な言葉を受けたのは初めてで、顔に熱が集中したような気がした。
そんな私の反応に、彼は嬉しそうに笑みを浮かべて髪を撫でる。
キュンッと感じる甘い下腹部の疼き。もう我慢の限界だった。
私の手は勝手に動き、彼の手を下腹部に導いていた。
「すき、になった…なら…早く…私と…気持ち良い、こと…しよ… ?」
唇から漏れ出る熱い吐息。私の視界にはもはや彼しかいない。
気づくと私は彼の首筋に吸い付いていた。
私の挑発に耐えられなくなったのか。
大きなため息と共に聞こえた「もう無理」と言う言葉に、ふと笑みが零れた。
「まさかここまで淫乱だったとはね。可愛いと思うよ。だけど、その可愛い挑発は俺だけに見せて欲しいかな」
「…言わないで、お願い」
「もう認めなよ。俺が欲しいってことをさ」
「欲しくなんか…」
「ふふっ…じゃあ、お望み通りにあなたをその気にさせてあげますよ」
ゆっくりと乾いた唇を舌なめずりして、ジッと私を見つめた彼が、ショーツを乱暴に剥ぎ取り、スラックスを足首まで下ろしてきた。
「ああ…」
力の入らない私の足は、いとも簡単に左右に広げられる。
「すごい…濡れすぎだよ…」
私のいやらしい部分を見つめる彼の喉が上下に動く。
次の瞬間、私の下腹部に熱い滾りがねじ込まれるのを感じた。
「ひぎ、ッいぃ!?あ、あ、ッ…!もっと、おくぅ、ぅんッ!」
「ああ、可愛い…可愛いね…ッ、こんなに乱れてさ、こんなに中をトロトロにしてくれるなんて、嬉しいな」
遠慮なしに膣内を犯され、腰がビクビクと跳ね上がる。
とめどない快感が押し寄せて、自分が何を言ってるのか分からなかった。
先ほどまで行為をしていたお陰で、ヌルヌルとした膣内はしっかり陰茎を締め付ける。
ビクンッと震えた腰と、張り詰めた呼吸を吐き出す彼。
私の腰も勝手に動き、緩急をつけて快感をむさぼっていく。
やがて突き上げが速度を増し、ビクンと脈打ち陰茎の質量が増したように感じた。
「はひ、いぃッ…や、あッ、あぁッ!気持ち良い、のぉ、ぉッ!きて、ぇ、なかに、な、かだし、てぇッ!」
「は、ぁッ…だして、あげるから…ッ、ほら、キスして…その可愛い顔でさ…ッ」
ふ、と穏やかに笑った顔がたまらなくセクシーに見えて腹部に甘い疼きが走る。
お互いの視線が交わるように何度も軽いキスを繰り返し、低い呻き声が聞こえた瞬間。
ドプンッと膣奥に叩き付けるように吐き出された精液の感触に、快感が体を駆け抜ける。
私の身体は弓のようにのけ反った。
「ああ…はぁぁ…すごい…こんなのって…」
流石に二人の男性に抱かれたことで、体力ももう限界だった。
頭の中がぼんやりとして、疲労感が湧き上がる。
しかし、その程度で彼が止まることはなかった。
中で精液を吐き出したはずの陰茎がまたムクムクと膨らんでいく。
「そ…そんな…もうこんなに大きく…あっはぁああぁっ…!」
再び激しく膣内を突き上げられてあられもない声が上がる。
「ひ、いぅッ!?やだやだッ、!きゅう、けいさせてぇッ!」
「だぁめ、まだ一回しかイってないんだから、もっと楽しもう?」
疲労困憊のはずなのに、私の腕は彼を強く抱きしめる。私はもう、彼からは逃れられないようだ。
コメント